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【10月定期演奏会】ファジル・サイのインタビューを掲載しました



ピアニストとして、作曲家として、ジャンルを越えたその才で聴く者を魅了するファジル・サイ。イスラエル、トルコ、フランス、そして日本が響き合う10月の“コラボレーション”を、その自由な感性はどのように見ているのか。来日を間近に控えた胸中をうかがった。
取材・文: 茂呂 さおり


──初めにお祝いを申し上げます。サイさんの作曲された「イスタンブール交響曲」が、今年度のドイツ・エコー賞クラシック・カテゴリーの審査員特別賞を受賞されましたね。おめでとうございます。
 ありがとうございます。今回このようなタイミングでエコー賞を受賞することができ、大変嬉しく思います。これを機に、さらに多くの方々に聴いていただく機会が増えるだろうと、期待と喜びで胸が一杯です。特に、イスタンブールは観光地としても日本の皆様に根強い人気があると伺っておりますので、この異国情緒たっぷりの「イスタンブール交響曲」を一刻も早く日本の皆様の前で演奏できる日を心待ちにしております。

──この交響曲に込められたサイさんの想いをお聞かせください。
 イスタンブールという街は、とてもロマンチックで情緒あふれる魅力的な古都です。
 この地には、数世紀にわたり育まれてきた独特の音楽文化が存在します。「イスタンブール交響曲」も、トカーヌーン(弦楽器)やネイ(笛)、打楽器など、トルコの楽器が多く使用されている点が特徴的と言えます。この交響曲は7楽章で構成されておりますが、イスタンブールを象徴するさまざまな風景が、各楽章に、独特の音楽文化が醸し出す音楽で表現されています。

──今回共演するエッティンガーさんとは、これまでにも共演の経験がおありですね。
 ダン・エッティンガーさんはドイツにいる時分からよく知っています。
 彼はすばらしい才能に恵まれた若き指揮者であり、私の敬愛する指揮者の一人です。私が作曲したネイ協奏曲「ヘザルフェン」──先の「イスタンブール交響曲」と同じCDに収録されていますが──の初演も指揮していただきました。彼との共演はどれも満足いくものでしたが、これもまた申し分のない演奏となり、皆様からもご高評をいただいています。

──今回ラヴェルを共演するにあたり、エッティンガーさんは今夏のインタビューに答えて、音楽界のグローバル化に言及しつつ「トルコ人ピアニストとイスラエル人指揮者によるラヴェルの共演は、多文化的・多層的なコンサートになるだろう」と話しています。サイさんご自身はどういったラヴェルの世界が描かれると期待されていますか?
  私も全く同感です。クラシック音楽は、もはやヨーロッパの少数の上層階級に限られた芸術ではありません。さまざまな垣根を越えて世界中に広がったクラシック音楽は、全ての人々に愛され、親しまれる芸術となりました。モーツァルト、ベートーヴェン、そしてラヴェル、彼らは皆、この“地球”が輩出した偉大なる作曲家たちなのです。イスラエル人指揮者とトルコ人ピアニストが、フランス人作曲家ラヴェルの作品を、日本で演奏する……なんとすばらしいことでしょう!

──作曲家としてのサイさんから見て、ラヴェルのピアノ協奏曲の楽譜から、どういったおもしろさ、魅力を感じますか?
 ラヴェルの協奏曲は、非常に完成度の高いピアノ協奏曲であり、オーケストレーション的にもすばらしいセンスが光る作品であると思います。この作品で特徴的なのは、バスク地方の旋律、スペイン風の旋律、さらには北アフリカ(モロッコ)を彷彿とさせる旋律表現さえ見受けられるという点でしょう。そして作品中、最も甘美で崇高さを漂わせているのが第2楽章だと言えます。その音楽は、まるで幻想的な世界へと聴く者を誘っているかのようです。ラヴェルという作曲家は非常に味わい深い作曲家──聴衆の皆様にも、必ずやラヴェルの奥深い味わいを堪能していただける演奏になると確信しています。

──最後に、日本の聴衆へのメッセージをお願いいたします。
 これまでにも何度か訪れていますが、日本でこうして演奏の機会を得ることは私にとっては格別のことであり、演奏のたびに深い感動を覚えます。皆様のような素敵な聴衆をお迎えし、すばらしいコンサートホールで演奏できることは大変光栄なことだと感謝しています。

──日本のファンもマエストロに対して同じ気持ちでお待ちしていると思います。ありがとうございました。


(インタビュア・プロフィール)
もろ・さおり/イスタンブール大学卒業。トルコ語通訳・翻訳業を経て、現在は外資系金融機関にてEAとして勤務。


トルコの鬼才とイスラエルの俊才が奏でる
魅惑のオリエンタリズム


第839回サントリー定期シリーズ

2013年10月25日[金曜日] 19:00開演(18:30開場)
サントリーホール

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第840回オーチャード定期演奏会

2013年10月27日[日曜日] 15:00開演(14:30開場)
Bunkamura オーチャードホール

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指揮:ダン・エッティンガー
ピアノ:ファジル・サイ *
管弦楽:東京フィルハーモニー交響楽団


曲目

ラヴェル / ピアノ協奏曲 ト長調 *

リムスキー=コルサコフ / 交響組曲「シェエラザード」 作品35


助成:文化芸術振興費補助金(トップレベルの舞台芸術創造事業)

主催:公益財団法人 東京フィルハーモニー交響楽団

後援:イスラエル大使館

公演カレンダー

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