ホーム > インフォメーション >  【サントリー定期シリーズ会員】久夛良木 健 さんインタビュー

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1990年代にその高い技術力と徹底した豊かなエンターテインメント精神でコンピュータ・ゲームの世界を一新し、今なおこの世界を席巻するハードウェアPlayStation。久夛良木健さんは、日本が誇るこのPlayStationの生みの親であり、こよなく音楽を愛するクラシック・ファンでもある。「楽しみ、楽しませることが大好き」とおっしゃり、2013年4月からは東京フィルハーモニー交響楽団のサントリー定期シリーズ会員として楽団を見守り続けてくださっている久夛良木さんに、定期演奏会の愉しみについてうかがった。

できるだけ多くの音楽家と曲を聴きたい。それを実現してくれるのが「定期演奏会」。

クラシック音楽を聴くようになったのは小学生の頃。ちょうど東京文化会館ができるかできないかの時期で、ホールの数もオーケストラの数も今のように多くはなく、生演奏を聴ける機会はめったにありませんでしたが、POPS、ジャズ、クラシック……音楽は何でも大好きでした。といっても、私はあくまで「普通のファン」。自分たちでバンドを組んでいた時期もありましたが、自分としてはシリアスに音楽を突き詰めていくというよりも、純粋に「音楽が好きな一ファン」で、それは今も変わりません。

今はホールの数も、オーケストラの数も当時とは比較にならないほどあって、いい時代だと思います。しかも、こうして「定期演奏会」も気軽に聴ける。ソニー時代もできるだけ時間を作って、これはと思うコンサートには極力足を運ぶようにしていましたが、街のジャズ・クラブのようにスタート時間が遅ければ足繁く通えるものの、クラシック・コンサートは19時ちょうどの開演が多く、当時の私にはなかなか難しいものがありました。でも今は19時開演でも全く問題ありません。何が楽しいって、最高ですよね。

定期演奏会の魅力は、まず、プログラムの多彩さ。好みの定番曲をじっくり聴きたい気持ちももちろんありますが、自分の好きなジャンルの曲だけでなく、今まであまり聴いたことのない曲や知らない曲も聴けることがおもしろい。2013-14シーズンは、5月の「ローマ三部作」がまさにそうで、こんなにいい曲があったのかと思いましたね。これはオーチャードホールですが、11月の「トリスタンとイゾルデ全曲」も実にキレがよくてすばらしかった。4時間半があっという間で、「え、もう終わり?」という感じでした。

東京フィルは奏者一人ひとりのレベルが高いと思います。安心して聴いていられる。これだけの奏者の演奏で、知らなかった作品を初体験できる機会がもてるのは本当に嬉しいことです。また、指揮者によって驚くほど音楽がガラリと変わるでしょう? そういった懐の深さも東京フィルの魅力だと思いますね。こんなに劇的な変化を聴かせてくれるオーケストラはなかなかないのではないでしょうか。

東京フィルで好きな指揮者といえば、なんといってもチョン・ミョンフン氏。他の方では三ツ橋敬子さんの溌剌さも好きですね。でも、今まで聴いたことのない指揮者の演奏で、新たなセンスに触れられるのもおもしろいと思う。だから、「誰の指揮か」とか「どの曲か」ではなく、「できるだけ多くの音楽家」と「できるだけ多くの曲」を聴いてみたい。それを実現してくれるのが定期演奏会です。この楽しみを一度覚えてしまうと、止まらなくなりますよ(笑)。

ジャズもクラシックも同じ。楽器を知って、弾き手を知って、愛が深まっていく。

1年を通じて「同じ席」で聴けるというのも、定期演奏会ならではのよさだと思います。定期会員になるまでは、演奏会ごとに座る席が変わり、それはそれで「座席の位置による音や景色の違い」がわかるおもしろさがあったのですが、毎回同じ席で聴く方がはるかにおもしろい。楽器の編成の違いや配置の違いが一目でわかりますし、何よりも「自分の席」があるという楽しさ……小学校や中学校の教室には必ず「自分の席」があったでしょう? 毎朝、それぞれの家からばらばらに登校して、「おはよう」とあいさつを交わしながら一つの教室に入り、それぞれの席に座る。それと同じように、毎回「自分の席に帰ってくる」感覚があって、それがおもしろさの根底にあるような気がします。

毎日学校に通っているとだんだんクラスになじんでくるように、毎回同じ席で聴いているとだんだんいろいろなことが見えてくるようになります。たとえば、私はヴァイオリンやチェロなどの弦楽器が以前から好きでしたが、いつからか金管楽器もいいなと思うようになり、最近では木管楽器にはまっています。そんなふうに「楽器」が見えてくると、次に一人ひとりの「弾き手」が見えてくる。すると、最初は「ベートーヴェンの交響曲」として聴いていた曲が、「東京フィルのライブ演奏」として聴こえてくる。ジャズを好きになったときもそうでした。楽器を知って、弾き手を知って、どんどん愛が深まっていく。そこは同じなのです、ジャズも、クラシックも。指揮者の解釈、弾き手のスキル、客席とのインタラクション……そういったことが毎回違う。そして、それらがぴったり合ったとき「すごい瞬間に居合わせた!」という大きな喜びを味わうことができる。演奏が終わって拍手を送りながら、一緒に聴いていた家族と「今日のオーボエ、よかったね」というような会話をしているときに、指揮者がまっさきにそのオーボエ奏者を立たせたりすると、「やっぱりね」とさらに嬉しくなったりもします。

今は便利な時代になって、インターネットやBS放送などでもさまざまな形でクラシック音楽を楽しめるようになりました。私もそれらを自宅のシアターでも楽しんでいますが、それでも、やはりホールで、生で、聴きたい。

必ずしもS席でなくても、それぞれの席にはその席ならではの楽しみがあります。

ステージ上手の2階席からは、コントラバスは見えないけれども、入場扉が開くたびに舞台袖の様子を垣間見ることができるし、個々の楽器が手に取るような広がりをもって迫ってきます。

1階前方の席では、ティンパニやテューバ、オーボエなど奥の楽器は隠れて見えなくなるけれども、弦楽器にぐっと近づけるから弾き手の指使いやボーイングまでわかる。息遣いまで含めて、奏者の一生懸命な様子も間近に伝わってきますし、ソリストがいるときには最高の席です。最初の音が出てきたときには、それだけで嬉しくなります。

指揮者を正面からずっと見ていられるステージサイド2階席などは、ほぼオーケストラの中にいるような気分になれますよね。

定期会員券ならS席でも1公演あたり5,500円*ぐらいだから、これは絶対にお得(笑)。ぜひもっとシーズン中の演奏回数を増やしてほしいですね。




*2013-14シーズンでの価格となります。 現在の価格とは異なりますのでご注意ください。


くたらぎ・けん/1950年東京都江東区深川生まれ。コンピュータ・ゲーム機PlayStation の生みの親。1993年株式会社ソニー・コンピュータエンタテインメントを設立、代表取締役社長、代表取締役会長兼グループCEO、名誉会長を歴任。2005年までソニー株式会社取締役副社長兼COO。現在サイバーアイ・エンタテインメント株式会社代表取締役社長CEO。ジャズやクラシックをはじめ熱心な音楽ファンとしても知られる。子どもの頃からの夢は、「タイムマシンを創って時空間を自由に旅すること」。


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