ホーム > インフォメーション > [特別記事]2018-19シーズン 7月定期聴きどころ ピアニスト小山実稚恵の5つの魅力

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2018年5月1日(火)


小山実稚恵が弾くラヴェル「ピアノ協奏曲」への期待


小山実稚恵
©Wataru Nishida

 小山はラフマニノフ、ショパン、チャイコフスキーのピアノ協奏曲を得意としているが、ラヴェルも実に素晴らしい。筆者はこれまで二度聴いたが、いずれも鮮烈な印象がある。2012年3月の演奏についてこう書いた。


 『小山のラヴェルはリズム感が良く、瑞々しい音と色彩感が見事。第2楽章冒頭の長いピアノ・ソロは抒情と気品に満ち、その美しい響きは筆舌に尽くしがたいものがあった。』


 このあと2015年にCDデビュー30周年のコンサートを行い、昨年2017年には12年間24回に及ぶリサイタル・シリーズ(全国6都市)も成功裡に完結、秋の褒章では「紫綬褒章」を受章した。最近の演奏はスケールが一段と大きくなり、表現も深まり磨きがかかっている。



ロレンツォ・ヴィオッティ
©Gulbenkian Música_Márcia Lessa

 今乗りに乗っている小山実稚恵と共演するのは28歳の気鋭、ロレンツォ・ヴィオッティ。オペラ指揮者の父とフランス人の母との間に生まれ、来季は新国立劇場への登壇が予定されている。今回の公演は、ラヴェルとドビュッシーのプログラムが組まれていることから、ヴィオッティが母の国フランスの音楽も得意としていることは間違いない。


 コンチェルトで指揮者やオーケストラと共に音楽をつくることに集中していると、思わぬ相乗効果が表れると小山は語る。注目の新星ヴィオッティとの共演からどのような名演が生まれるのか。このコンサートは聞き逃せない。



演奏をより楽しむために。小山実稚恵の魅力とは。人気の秘密に迫る。


©Wataru Nishida

 その人気は今やとどまるところがない。『音楽の友』2018年4月号の特集「クラシック音楽ベストテン~あなたが好きなピアニストは?」では、アルゲリッチ、ポリーニに次ぐ第3位を獲得、日本人ピアニストの中では群を抜く。一体何が聴く人を捉えて離さないのか、人気の秘密は何か。五つの魅力に絞って紹介したい。

 一つ目は、ダイナミックかつ繊細な演奏。チャイコフスキー、ショパンの二大国際コンクール入賞の実力と、30年以上にわたる第一線での活躍に裏付けられた演奏は、躍動感と繊細さを併せ持ち、聴衆を魅了する。この特長は今回のラヴェルの曲想にもぴったり合う。

 二つ目は、演奏に込めた熱い思い。『伝えたいものの100倍1000倍の強さの気持ちを演奏に込めなければと、つねに自分に言い聞かせています。』と、自著「点と魂と スイートスポットを探して」(KADOKAWA刊・梶山寿子編・著)で語る。ラヴェルでも、作曲家が思い描いた世界を熱く伝えてくれるのではないだろうか。

 三つ目は、探求心。楽譜を深く読むだけではなく、音楽学者と対談するなど作品研究を怠らない。また、上記自著では、スポーツ、芸能、宇宙飛行、将棋、医学に至る幅広い分野のトップの人々と対談。達人たちの極意を知り、演奏に生かすというユニークな試みも行った。こうした活動も表現力に幅と奥行きを与えている。

 四つ目は、CD録音。ソニー・ミュージックジャパンインターナショナルからは、最新作「バッハ:ゴルトベルク変奏曲」まで30枚ものCDをリリース。その多くが音楽専門誌で特選盤となっている。CD制作はレパートリー拡大と演奏の深化につながる。その中の1枚「ラヴェル作品集」は、『粒の揃った軽くきらびやかな音色と大胆で躍動的なリズムがしっかりとしたタッチで弾き分けられている。』(CDジャーナル評)と絶賛された。

 五つ目は、人間性。小山の演奏を聴くと、癒され幸せな気持ちになる。それは、優しく思いやりのある人柄が演奏に反映されているからではないだろうか。最初に紹介したラヴェル「ピアノ協奏曲」第2楽章の心の琴線に触れる演奏はその良い例だ。
 また、東日本大震災の被災地での演奏活動や、仙台で『こどもの夢ひろば』を始めるなど、社会活動にも積極的に取り組む。


 こうした小山実稚恵の人間性が演奏と一体となり、聴き手を魅了することが人気の秘密と言えそうだ。コンサート・ホールでぜひその魅力に触れていただきたいと思う。



長谷川京介(はせがわ・きょうすけ)

同志社大学卒。CBS・ソニーに入社。クラシックのマーケティング担当を経て、ソニー・ミュージックダイレクトでクラシックCDの編成・制作を担当。退職後は音楽評論家として、雑誌「音楽の友」に毎月コンサート・レヴューや特集記事を寄稿するほか、コンサート・プログラム解説を執筆。



7月定期演奏会

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7月18日[水]19:00開演
東京オペラシティコンサートホール
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7月19日[木]19:00開演
サントリーホール

指揮:ロレンツォ・ヴィオッティ
ピアノ:小山実稚恵

ラヴェル/道化師の朝の歌
ラヴェル/ピアノ協奏曲*
ドビュッシー/牧神の午後への前奏曲
ドビュッシー/交響曲『海』
(管弦楽のための3つの交響的素描)




◇定期会員券で購入すると1公演あたりのチケット料金が 約37% お得に。
 詳しくは 2018-19シーズン定期演奏会ラインナップページ

公演カレンダー

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