ホーム > インフォメーション > 2021年6月定期演奏会 聴きどころ 名匠・尾高忠明と贈る「復活を遂げた作曲家」ラフマニノフの濃厚なロシアン・ロマン

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2021年5月24日(月)



桂冠指揮者・尾高忠明とのロシアン・ロマン


上原彩子Ⓒ武藤章

 6月定期は東京フィル桂冠指揮者の尾高忠明が登場する。ピアニスト上原彩子を招き、ラフマニノフ・プログラムが組まれた。曲は「パガニーニの主題による狂詩曲」と交響曲第2番。ラフマニノフならではの濃厚なロマンをたっぷりと味わえることだろう。
 公演に添えられたキャッチコピーは「復活を遂げた作曲家」。ロシア出身の作曲家ラフマニノフには有名な逸話がある。若くして将来を嘱望されたラフマニノフだが、22歳で書きあげた交響曲第1番が大失敗に終わってしまったのだ。交響曲第1番の初演の際、ロシア五人組のひとりであるキュイは「地獄の住民を喜ばせる交響曲」と作品を酷評した。この挫折により、ラフマニノフの創作活動は深刻な危機を迎え、約3年間にわたりほとんど作品を発表できなくなってしまう。しかし、音楽に造詣の深い精神科医ニコライ・ダーリの助けを借りてラフマニノフは自信と創作意欲を取り戻し、ピアノ協奏曲第2番の成功によって華麗なる復活を果たした。新型コロナウイルスの感染拡大が続く昨今、なにより待たれるのは音楽界の復活。「復活を遂げた作曲家」というキャッチコピーにはラフマニノフの復活のストーリーにコロナ禍の克服を重ねようという意図もうかがえる。

華麗なピアノ独奏とオーケストラが紡ぐ雄大なドラマ


セルゲイ・ラフマニノフ(1873-1943)

 「パガニーニの主題による狂詩曲」は、ラフマニノフが祖国ロシアを離れ、新天地アメリカに渡って書いた傑作。アメリカではピアニストとして名声を築いたラフマニノフだけに、華麗なピアノ独奏が聴きものとなる。とりわけ第18変奏は甘美なメロディで広く親しまれており、フィギュアスケートなどでもしばしば利用される。2022年のデビュー20周年に向けてリサイタルシリーズも展開する上原彩子が、作品の魅力を存分に伝えてくれることだろう。
 交響曲第1番が辛辣な酷評にさらされたのとは対照的に、続く交響曲第2番は初演時より大成功を収め、ラフマニノフの管弦楽曲の代表作として広く人気を獲得している。全4楽章で約60分程度を要する大作であるが、その大きさこそが作品の魅力のひとつといってもいいだろう。むせかえるような濃密なロシア的詩情とメランコリーが雄大なドラマを紡ぎ出す。憧憬に満ちた第3楽章のアダージョは、ほとんど神々しいと言ってもよいほど。第4楽章のフィナーレはこの上もない高揚感にあふれている。
 そして、このラフマニノフの交響曲第2番はマエストロ尾高がさまざまなオーケストラで取り上げてきた得意のレパートリーでもある。国内のオーケストラはもちろんのこと、メルボルン交響楽団とBBCウェールズ・ナショナル管弦楽団とは録音も残している。長年の信頼関係を築く東京フィルとの共演となれば、いっそう期待が高まろうというもの。オーケストラに新たな名演の歴史が刻まれるのではないだろうか。




飯尾 洋一(いいお・よういち / 音楽ジャーナリスト)

著書に『クラシック音楽のトリセツ』(SB新書)、『R40のクラシック』(廣済堂新書)、『マンガで教養 やさしいクラシック』監修(朝日新聞出版)他。雑誌やウェブ、コンサート・プログラム等に幅広く執筆する。テレビ朝日「題名のない音楽会」他、放送でも活動。



尾高忠明指揮 ラフマニノフ:交響曲第2番 ホ短調 Op.27 より第3楽章
(2014年7月21日 オーチャード定期演奏会)



メッセージ動画 尾高忠明(東京フィル桂冠指揮者)



メッセージ動画 上原彩子さん(ピアニスト)



6月定期演奏会

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6月17日[木]19:00開演(18:15開場)
東京オペラシティ コンサートホール
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6月18日[金]19:00開演(18:15開場)
サントリーホール
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6月20日[日]15:00開演(14:15開場)
Bunkamura オーチャードホール

指揮:尾高忠明(東京フィル 桂冠指揮者)
ピアノ:上原彩子*


― 復活を遂げた作曲家 ―

ラフマニノフ/パガニーニの主題による狂詩曲*
ラフマニノフ/交響曲第2番


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