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2014年5月30日(金)
楽団員インタビュー | 6月東京オペラシティ定期シリーズ
杉山 伸(クラリネット首席奏者)
──『英雄の生涯』の聞きどころといえばどの部分でしょうか?
(演奏)最初の部分にこういうのが出てくるんですけれど、昔は何も考えていなくて普通に吹いていましたけれど、今だと、英雄が若いときのエネルギーに「ああ、ああいうときもあったなあ、やっぱりエネルギーを感じるなあ」という憧れをもってこういう部分を吹きますね。
──『英雄の生涯』の魅力について教えていただけますか?
『英雄の生涯』は時間的な流れがありますよね。英雄が登場して、最後にリタイヤしていく。どちらかというと私はもう最後の方に近いのですが(笑)。昔は最後の美しい場面に憧れをもって吹いていましたけれど、今はどちらかというと、最初の英雄が出てきて、本当に活力に満ちた英雄のエネルギー、そういう一吹き一フレーズに、逆に魅力を感じるような立場になりました。そういうメロディに魅力を感じることもありますね。
──マエストロ・ド・ビリーの印象について。
一番感じるのは、とってもチャーミングな人です。本当にチャーミング。それはただ、見た目がチャーミングというだけではなくて、いろんな人間的な要素があって、それが味になってチャーミングな雰囲気になっていると思うんですね。
たとえば、指揮をしていても非常にやわらかい部分を要求していても、すべて聞こえるようにされている。繊細な響きを出してもらいたいところでも、すごく深く。
相反する2つのことがいつも彼の中にある気がするんですね。そういうことで、彼の人間性というものがすごく多面的であって、いろんな部分がチャーミングです。自然の中で空気を吸っているような、緑の中で散歩をしているような、そういう雰囲気を感じましたね。
──たとえば「愛のデュエット」の部分などの指示はどのようなものでしょうか?
たとえばヴァイオリンで非常に美しい場面で「ヴィブラートをいっぱいにかけて弾いてください」って普通は要求されるんですけれど、その中にシンコペーションの動きがあるんですね。そういうところで、ただ美しいだけの場面じゃない、そういうものが中に存在しているから、ヴィブラートをかけすぎないでと。相二つの非常に緊張感がある2つの要素が一緒になって初めて「愛のデュエット」だと、そういうことをおっしゃる方なので、それがすごくチャーミングです。