インフォメーション
2016年7月8日(金)


東京フィル桂冠名誉指揮者チョン・ミョンフン
©上野隆文
7月に続き、9月の定期演奏会も桂冠名誉指揮者チョン・ミョンフンが登場。いま世界で最も注目される若きピアニスト、チョ・ソンジンをソリストに迎えてベートーヴェンのピアノ協奏曲第5番『皇帝』と交響曲第6番の組合せ(21日・23日)、そして「交響曲第6番&第7番」(25日)を取り上げます。生気に満ち、深いヒューマニズムを感じさせるチョン・ミョンフンのベートーヴェンと若い才能の融合をお楽しみいただきます。
文=池田卓夫(音楽ジャーナリスト)
2015年12月「日韓第九」を実現したチョン・ミョンフンの求心力

日韓友情「歓喜の第九」合同演奏会 ソウル公演より
東京フィルハーモニー交響楽団の桂冠名誉指揮者チョン・ミョンフンによるベートーヴェンの交響曲演奏で最も記憶に新しいのは昨年12月、日韓国交正常化50周年の大詰めにソウル・フィルハーモニー管弦楽団と合同でソウル、東京を巡演した「第9番『合唱付』」である。政治や経済の分野では必ずしも息の合わない両国関係が嘘のようにふたつのオーケストラの楽員がひとつになり、「すべての人間は兄弟になる」の歌詞そのものの感動を客席と分かち合った。もちろん、求心力の中心にはマエストロ・チョンがいた。「音楽は競い合う『競争』ではなく、ともに創り上げていく『協奏』です。日韓の音楽家が力を合わせて、アジア諸国間の協調を推進するひとつの音を生み出し、アジアから世界に向けて友好と平和を発信したい」としたマエストロの思いは、日韓文化交流に大きな足跡を記した。
2001年に旧東京フィルが新星日本交響楽団と合併した時、故・大賀典雄前理事長(現・永久楽友、名誉指揮者=ソニー元会長)たっての頼みでスペシャル・アーティスティック・アドバイザーに就いたマエストロ・チョンは翌2002年か
ら2004年にかけ、ベートーヴェンの交響曲全曲を指揮、ライヴ録音盤も制作した。初回の第2番、第3番『英雄』は2002年6月。期待通り気合の入った演奏だった。『英雄』の後の歓声、拍手はすさまじく、なかなか途絶えない。マエストロは折から開催中だったサッカーのワールドカップ日韓共同大会にちなむ一計を案じ、指揮台でボールを蹴るポーズをして帰宅を促したほどだった。
チョン・ミョンフンと東京フィルが築いた信頼関係の円熟境
ルートヴィヒ・ファン・ベートーヴェンとチョン・ミョンフン。2人に共通するのは何よりcon brio(コン・ブリオ=生気に満ちた)の音楽性を基盤に、音楽を聴いた人々の感動が個人、家族、社会、国家、世界……へ広がり、安息や友情、平和を育むに違いないと確信するヒューマニズムではないだろうか。「ベルリンの壁」崩壊などの歴史的できごと、東日本大震災をはじめとする大惨事のあと、チャリティーコンサートでは必ずといってよいほど、ベートーヴェンが奏でられる。人々に生きる力を与える音楽だ。

2016年2月定期演奏会(マーラー「交響曲第5番」リハーサル)
©上野隆文

チョ・ソンジン
©Ramistudio.com
池田卓夫(いけだ・たくお)
早稲田大学政治経済学部政治学科を1981年に卒業し、新聞記者となった。東京や広島、フランクフルトで経済分野を取材。「ベルリンの壁」崩壊から旧東西ドイツの統一を現地から報道。帰国後に音楽担当の編集委員を長く務めた。音楽についての執筆は高校生時代に始め、専門雑誌への寄稿歴は30年を超える。演奏会やオペラ、CDなどの企画、MC(司会)、翻訳、音楽コンクールの審査なども手がける。
9月定期演奏会
9月21日[水]19:00開演(18:30開場)
東京オペラシティ コンサートホール
7/9(土)10時~優先発売
9月23日[金]19:00開演(18:30開場)
サントリーホール大ホール
7/9(土)10時~優先発売
指揮: チョン・ミョンフン
ピアノ: チョ・ソンジン*(2015年ショパン国際ピアノコンクール第1位)
ベートーヴェン/ピアノ協奏曲第5番『皇帝』*
ベートーヴェン/交響曲第6番『田園』
9月25日[日]15:00開演(14:30開場)
Bunkamura オーチャードホール
7/9(土)10時~優先発売
指揮: チョン・ミョンフン
ベートーヴェン/交響曲第6番『田園』
ベートーヴェン/交響曲第7番
出演者情報
2015年ショパン国際ピアノコンクールファイナルラウンドの様子