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2014年5月16日(金)



ロッシーニの世界的権威ゼッダが語るマリピエロとシューベルト

「プログラム全体に、ひとつのイタリア的なるものという繋がりを見出せるように、ジャンヌ・ダルクも含めてロッシーニ、シューベルトと、シューベルトの中でも最もイタリア的な匂いのする趣のあるものを選んだ」そう語る指揮者アルベルト・ゼッダ氏は今年86歳を迎える。
トスカニーニ、フルトヴェングラー、カラヤンの練習を見学していたという話をさらりと聴くと、CDやレコードでしか知らない巨匠たちの世界がゼッダさんの口を通して現実に広がり、とても豊かな気持ちになった。



──昨年は定期公演への出演が叶わず、日本の聴衆の方々が残念がっていました。今年はこうしてマエストロとお会いでき今回の公演をみなさま楽しみにしております。


こちらのほうがお礼をいいたいくらいです。昨年は出演をキャンセルしなければならず、非常に遺憾なことで、過去にこんなことはなかったんですが。非常に申し訳なかったと思っております。


──今日は是非、マエストロ・ゼッダの魅力を引き出し、公演プログラムについてお話を伺いたいと思います。


まず、アルベルト・ゼッダというのは見たとおり結構な年齢の人間だと思ってもらうほかありません。ただ私としては、いわゆる古きよき世代を踏襲することのできる人間のひとりとして生きている、またそういった人間の一人ではないかなと思っております。やはり古くからのイタリアの素晴らしい、様々な分野の素晴らしい文化・芸術を伝えることのできる世代、それをいくらかなりとも知っている一人であると認識しています。


──今回のプログラムにはマリピエロの交響曲第2番が入っていますね。


交響曲第二番は傑作中の傑作です。若い頃、音楽院にいた時、彼の音楽を聴き、オヤッッと思いました。これは傑作だ!と。本質的に極めてイタリア的な音楽。流れるような歌の線、空間的な広がり、輝くような音楽つくり、素晴らしさが詰まっているんです。この大きな歌の中にポリフォニーの要素が非常によく仕込まれていて、伝統的なイタリアのマドリガル形式を見事に組み込んだ鮮やかな音楽です。


彼の偉大さというのは、イタリアの音楽界に対するイメージが単純にオペラしかないだろう考えられていたところに、純粋に器楽的、交響的な音楽の能力がある国であると思わせたことにあります。イタリアの音楽を救いだし、光をあてることが出来た作曲家だといえます。約2世紀にわたるオペラ漬けのイタリアから、器楽的な世界の音楽を再び復興させたのです。マリピエロはイタリアにとっての救世主であり、きわめて大事なポジションということです。


今回、この交響曲を日本で紹介出来る事が嬉しいです。日本の皆様にとってサプライズだと思う。彼の音楽は、ある意味ですごく計算されて綿密に創られているので一見難しい。でもそれを乗り越えると、流麗さと、なんとも感覚的に音の様々な色が飛んでくる、音楽が全体を包み込み、お客様は「こんな曲があったのか!?」と興奮して帰ってゆくんです。


この曲は古典の復興的なものがある。調性を崩してゆく現代的なものではなく、あくまでも輝かしい音色であるとか、古典的なバランスの良い現代の中にある古典。とても美しい曲で、私にとって特殊な曲です。


──そのマリピエロの曲とロッシーニ、シューベルトを組み合わせていますね。


今回のプログラム全体に「イタリア的なるもの」という繋がりが見いだせます。ロッシーニのジャンヌ・ダルクはもちろんですが、シューベルトに関しても彼の曲のなかで最もイタリア的な匂いのする趣きが感じられる交響曲を入れています。
というのも、シューベルトは非常にロッシーニの音楽を愛し、評価し称賛していたんです。晩年の交響曲の中に、ロッシーニはイタリアの舞踊的なリズムの曲を組み込んでいて、そのような要素がシューベルトの交響曲の中に感じられる部分が多くある。そこにシューベルトがイタリア的なるものを愛していたことが感じられます。その辺りにシューベルトとがイタリアとつながりがある部分ですね。彼はロッシーニをすごく愛していたんです。


──ロッシーニのジャンヌ・ダルクですが、この曲はこれまで日本ではほとんど演奏されていないんです。こちらの曲についてお聞かせいただけますか。


これはもともとピアノ用の曲です。なぜピアノ用なのかという理由については私も疑問がありますが、ロッシーニ自身が作り上げた芳醇で広がるような音楽を、オーケストラでやることで本当の響きと表現をすることができる凝縮された密度の高い作品です。そう考えると、彼はなぜこれをピアノでやろうとしたのでしょうか。
オーケストラ版への編曲はシャリーノにお願いしたのですが、このオーケストラ版が出来上がってからは、演奏会でピアノ版が披露される機会は少なくなっています。みなさんオーケストラでの演奏の方が好んでいるのかなと思いますし、私自身もオーケストラの演奏の方が好きですね。
歌い手に関しても、素晴らしい作品ですから本当に能力の高い有名な方がやるか、もしくは若い方が挑戦するかのどちらかでしょうね。今回のわれわれの若手歌手がどれくらいうまくやってくれるか楽しみです。


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古典から現代へ、新旧イタリア音楽の邂逅。

第847回サントリー定期シリーズ
5月16日[金]19:00開演(18:30開場)
サントリーホール 大ホール
第848回オーチャード定期演奏会
5月18日[日]15:00開演(14:30開場)
Bunkamura オーチャードホール

指揮: アルベルト・ゼッダ
メゾ・ソプラノ: テレーザ・イエルヴォリーノ

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