2022年の東京フィルハーモニー交響楽団定期演奏会は、ベテランから新星まで個性豊かな指揮者陣とバラエティに富んだ曲目が魅力だ。
定期会員はシーズンを通して同じ席で鑑賞できるのが何よりの特徴だが、このラインナップを通して聴けば、まさにそこは「かけがえのないあなたの指定席」となるだろう。
(文・室田尚子)
1月
1月シーズン開幕公演は、名誉音楽監督のマエストロ チョン・ミョンフンが登場。大曲マーラーの交響曲第3番で開幕を祝う。この「第3番」、当初は2020年10月定期演奏会にプログラミングされていたが、コロナ禍によりマエストロの来日かなわず演目変更となった経緯がある。1年2か月越しの実現とあって、マエストロの楽曲にかける強い信念が伝わってくるようだ。 近年、マエストロは東京フィルとマーラー第6番(2015年)、第5番(2016年)、第2番『復活』(2017年)、第9番(2019年)と時をおかず取り組み、そのたびごとに進化、そして深化した音楽で新たな感動を聴かせてきた。ここ数年の両者の関係の深まりは特筆すべきものがあり、今回の演目にもいやがうえにも期待が高まる。第4楽章から登場するアルト独唱にはオペラだけでなくコンサートや宗教曲のジャンルでも高い評価を受けている旬のメゾ・ソプラノ中島郁子を迎え、女声合唱には日本最高峰の新国立劇場合唱団、そして児童合唱には東京少年少女合唱隊を配した。新しいシーズンの船出にふさわしい演奏会となるにちがいない。
2月
本年はヤニス・クセナキスの生誕100年。2月はそれを祝い井上道義が、1986年に書かれた『ケクロプス』を日本初演する。これはクセナキスの3番目のピアノ協奏曲にあたり、ピアノ・パートは6声部になっているという超難曲。ピアノ・ソロは、仏TINPANIレーベルの「クセナキス管弦楽全集」に参加、『シナファイ』と『エリフソン』2曲のピアノ協奏曲を録音している現代音楽のスペシャリスト大井浩明というこの上ない布陣だ。そして、井上が得意とするショスタコーヴィチの交響曲第1番では、世代交代の進む東京フィルによる若々しい音楽表現に期待がかかる。
3月
3月は、特別客演指揮者ミハイル・プレトニョフがスメタナの『わが祖国』全曲演奏を披露。もともとは2020年3月に予定されていたが、コロナ禍により同年8月に延期、さらに2021年3月に再度プログラムされたがこれもマエストロの来日が叶わず中止となった企画。満を持しての開催となる“音の魔術師”プレトニョフがどんな景色をみせてくれるのか、楽しみだ。
5月
5月には再びマエストロ チョン・ミョンフンが登場。若き日よりフランス国立管弦楽団(東京2020オリンピック閉会式への登場が記憶に新しい)に客演を重ね、パリ・オペラ座バスティーユ音楽監督(1989-1994)、フランス国立放送フィル音楽監督(現在は名誉音楽監督)を歴任、また作曲家メシアンとも交流のあったマエストロ チョンは、フランス音楽のスペシャリストだ。そのマエストロによる待望のフレンチ・プログラムは、フォーレの組曲『ペレアスとメリザンド』、ラヴェル『ダフニスとクロエ』第2組曲、ドビュッシーの交響詩『海』、そして最後にラヴェル『ラ・ヴァルス』という王道のラインナップ。オペラ指揮者としても高い評価を誇るマエストロの色彩豊かな響きの世界に耽溺したい。
6月
6月は、プレトニョフが2020年に企画して叶わなかったプログラムをもう1作。生誕90年にあたるシチェドリンの『カルメン組曲』だ。これはビゼーのオペラ『カルメン』をシチェドリンの妻である不世出のバレリーナ、マイヤ・プリセツカヤのために編曲した作品。さらに後半にはチャイコフスキーのバレエ音楽『白鳥の湖』をプレトニョフ自身が抜粋構成した特別編集版を予定。バレエ好きの方にもぜひ聴いていただきたい。
7月
7月に登場する出口大地は、2021年6月にハチャトゥリアン国際コンクール指揮部門優勝、同10月にはクーセヴィツキー国際指揮者コンクールで最高位を獲得した新星だ。ハチャトゥリアン・コンクールの優勝コンサートで第4楽章を演奏したという交響曲第2番『鐘』をメインに、木嶋真優をソリストに迎えたヴァイオリン協奏曲など。若い才能をいち早く体験できるこの機会をお聴き逃しなきよう。
9月
9月は、いよいよ首席指揮者アンドレア・バッティストーニがやってくる。
リストの「巡礼の年第2年『イタリア』」から「ダンテを読んで」をバッティストーニ自身によるオーケストラ編曲で聴かせてくれるという、これまた興味深い企画。メインは東京フィルで初めての披露となるマーラーの交響曲第5番。
ロマンティシズムあふれるプログラムに期待したい。なお、マエストロ バッティストーニと東京フィルは、2021年10月、ドイツで最も権威ある録音賞「OPUS KLASSIK賞」の20/21世紀部門を、ドヴォルザークと伊福部昭を収録したアルバムで見事受賞している(レーベルはDenon/MDG)。世界が認めたコンビネーションにあらためてご注目いただきたい。
10月
シーズンを締めくくる10月は、マエストロ チョン・ミョンフンによるヴェルディの歌劇『ファルスタッフ』(オペラ演奏会形式)。『ファルスタッフ』はなんと、マエストロにとって初めて取り組む演目だという。巨匠ヴェルディ最後の作品にして現代も上演される唯一の喜劇である『ファルスタッフ』をマエストロがどのように表現してくれるのか。今から胸の高まりを抑えることができない。『ファルスタッフ』は他のヴェルディ作品と比べれば有名なアリアはほとんどないが、マエストロはそれ故の難しさを指摘し、喜劇と言っても侮ってはならない、とても高尚な作品だと話していたという。東京フィルにとっても、2020年2月の定期演奏会で『カルメン』を上演して以来のオペラ演奏会形式の再開となる。オペラ・ファン、オーケストラ・ファンならずとも必聴の公演となることだろう。
2020年2月定期演奏会『カルメン』演奏会形式©上野隆文
アルト:中島郁子
ピアノ:大井浩明
最優先発売日
2022年4月9日(土)10:00
優先発売日
2022年4月16日(土)10:00
一般発売日
2022年4月26日(火)10:00
WEB優先発売期間 / 期間中はどなたさまも定価の1割引き!
4月16日(土)10:00 ~ 4月25日(月)23:59
※東京フィルチケットサービスはチケット発売初日の土日祝のみ10時~16時営業
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WEB優先 | | 東京フィルWEBチケットサービスにて期間中どなたさまも定価の1割引きでご購入いただけます。 |
一般 | | 一般の皆様を対象とした発売日です。 |
※チケット発売初日の土日祝のみ10時~16時営業
※止むを得ない事情により、出演者・曲目などが変更になる場合がございます。※公演中止の場合を除き、お求めいただいたチケットの払戻・変更等はいたしかねます(但し定期会員特典として会場振替サービスがございます)。