東京フィルハーモニー交響楽団・2024シーズン定期演奏会(全8回)は、大きな話題になりそうな注目公演が連続する。東京フィルの誇る3人の指揮者、名誉音楽監督チョン・ミョンフン(2月・6月・9月)首席指揮者アンドレア・バッティストーニ(3月・11月)特別客演指揮者ミハイル・プレトニョフ(1月)に加えて、前常任指揮者で現在は桂冠指揮者のダン・エッティンガー(7月)の10年ぶりの定期登場も加わった。そこに食い込む新鋭指揮者は、2022年の定期初登場の成功が大きな話題になった出口大地。ポスト指揮者陣が各々の持ち味を発揮する名曲を並べる盤石の体制に、東京フィルと良好な関係を築く出口が新風を吹き込む。

(文=林 昌英)


1月


1月のシーズン開幕はミハイル・プレトニョフ(特別客演指揮者)が登場。彼が継続して取り上げている北欧の2大作曲家の名作が並ぶ。シベリウスは親しみやすい「組曲『カレリア』」と人気の「交響曲第2番」。オーケストラから楽曲がもつエネルギーを最大限に引き出し、かつ抒情的な表現にも優れたプレトニョフが、シベリウスの代表作をいまどのように奏でるのか。 グリーグ「ピアノ協奏曲」のソリストは、2021年ショパン国際コンクール第3位のマルティン・ガルシア・ガルシア。耳にも目にも音楽の喜びが伝わるパフォーマンスで世界的人気奏者となった彼と、ピアノの巨匠でもあるマエストロの共演。彼らの化学反応がどんな演奏を生み出すのか、楽しみでならない。






2月


今シーズンのチョン・ミョンフン(名誉音楽監督)の3回は、いずれも東京フィルとの充実した関係を物語るような重要作が並ぶ。2月はまずベートーヴェン「交響曲第6番『田園』」。長く共演を重ねてきたマエストロと東京フィルの思いがこもる、特別な『田園』となるはず。メインは20世紀音楽の金字塔のひとつ、ストラヴィンスキー「バレエ音楽『春の祭典』」。東京フィルとの『春の祭典』は20年ぶりとなるが、その間に飛躍的な進化を見せているオーケストラと、マエストロの緻密にして燃え上がるようなタクトであれば、屈指の名演が約束されているようなもの。美しい自然の感動と、原始的な儀式の爆発的なパワーを、一気に堪能する。



3月


©上野隆文

3月はアンドレア・バッティストーニ(首席指揮者)が登場。過去の音楽や古いテキストを研究し、20世紀の作曲技法で再構築した2人の作曲家の作品を取り上げる。まずレスピーギ「リュートのための古風な舞曲とアリア第2組曲」。弦楽合奏のための第3組曲がよく知られるが、少し大きめの編成による第2組曲も、ルネサンスやバロック時代の楽想が現代的な響きで楽しく処理された快作。そしてオルフ『カルミナ・ブラーナ』は、大オーケストラと合唱、3人のソリストによる大作で、冒頭と最後を飾る楽曲は現代のヒットナンバーとなっている。合唱付きの作品で名演を重ねてきたバッティストーニと東京フィルで、この上なく劇的な『カルミナ』体験ができるに違いない。





6月


チョン・ミョンフンメシアン『トゥランガリーラ交響曲』が実現する。このシーズンの東京フィル定期演奏会を代表する、屈指の注目公演になるのが、「第1000回」を迎える6月の定期演奏会。本作も20世紀を代表する大作のひとつだが、マエストロが1990年にパリ・オペラ座バスティーユ管と本作を録音した際、メシアン自身が立ち会って大絶賛し、「今後の基準になる」とまで言わしめた。その後もマエストロはメシアンの晩年まで交流を続け、本作はフランスでも度々取り上げている。東京フィルとは2007年以来となる本作で、このコンビの総決算的な名演が実現し、究極的なメシアン体験ができるという期待に興奮が隠せない。ピアノの俊英・務川慧悟、オンド・マルトノの世界的名手・原田節が加わる布陣もさらに期待を高める。



7月


ダン・エッティンガーが東京フィル定期に帰ってくる。2010年4月から5シーズン常任指揮者を務め、現在は桂冠指揮者のエッティンガーが、2014年以来10年ぶりの定期演奏会登場ということで注目を集めるだろう。当時は若々しく鮮烈な演奏を聴かせていたが、その後も世界各地で活躍を続け、いまやすっかり巨匠の風格を備えて、濃密かつ個性的な演奏を作り上げるマエストロとなっている。久しぶりの定期で聴かせるのは、人気の名手・阪田知樹とのモーツァルト「ピアノ協奏曲第20番」ブルックナー「交響曲第4番『ロマンティック』」。2024年に生誕200年を迎えるブルックナーを、無二の名演で祝う公演にもなるだろう。



9月


©上野隆文

ここ数年、連続して実現している、チョン・ミョンフンによるオペラ演奏会形式の公演。2024年はヴェルディの歌劇『マクベス』。2022年からの『ファルスタッフ』『オテロ』の大名演に続き、ヴェルディがオペラ化したシェイクスピア作品を取り上げることになる。シェイクスピアの中でも殊に深い衝撃と重みをもつ悲劇に、30代の作曲者が余すところなく劇的な音楽を書き込んだ『マクベス』(その後50代で改訂。現在は改訂版の上演が多い)。演奏会形式だからこそ、作品本来の音楽とドラマの姿が明らかになり、そのエネルギーをダイレクトに体験できる。ヴェルディを知悉するマエストロと名歌手陣が集結し、その真髄が明らかになるはずだ。



10月


出口大地が定期再登場を果たす。2021年にハチャトゥリアン国際指揮者コンクールで優勝、翌年に東京フィル定期の客演に抜擢されて日本デビュー。オール・ハチャトゥリアン・プロを大成功に導き、いまや各地に客演を重ねる人気指揮者となりつつある。10月の定期には名刺代わりのアルメニアのハチャトゥリアンから、トルコのファジル・サイ、ハンガリーのコダーイに辿り着くプログラムを用意。コダーイの代表作「ガランタ舞曲」「『孔雀は飛んだ』による変奏曲」で、民俗的な情趣と舞曲のリズムを出口がどう聴かせるのか楽しみだ。ファジル・サイヴァイオリン協奏曲は、名ピアニストでもあるサイとの共演など、その世界観を熟知する服部百音がソリストを務めるのも注目となる。






11月


11月はバッティストーニが登壇し、マーラー「交響曲第7番『夜の歌』」に取り組む。マエストロと東京フィルのマーラーは、これまで第1番、第5番、そして第8番が取り上げられてきたが、オーケストラをフルに鳴らしきる統率力と、どんなに複雑な場面でも歌心を失わない構築力で、新鮮なマーラー演奏を実現してきた。第7番は特殊な存在で、スコアの複雑さは精緻を極め、冒頭の暗い夜の情感から終楽章の底抜けの明るさまでの変化など一筋縄ではいかない難曲だ。だからこそ、この曲を選んだことは、指揮者とオーケストラお互いの信頼の厚さと自信の表れでもあろう。新しいマーラー体験への期待が高まる。


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2024シーズン定期会員券発売日

最優先発売日

2023年11月10日(金)

優先発売日

2023年11月11日(土)

一般発売日

2023年12月5日(火)

WEB優先発売期間 / 期間中はどなたさまも定価の1割引き!

11月11日(土)10:00 ~ 12月4日(月)23:59


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