ホーム > インフォメーション > 【特別記事】10月定期演奏会の聴きどころ「みずみずしい息吹にあふれた作品で音楽を分かち合う」

インフォメーション

2023年7月24日(月)

10月の定期演奏会は東京フィル初登場、日本デビューとなるフランスのクロエ・デュフレーヌが登場。ヴァイオリニスト中野りなとの共演で、19~20世紀フランス作曲家の魅力的なプログラムをお届けします。生誕130年を迎える夭折の作曲家リリ・ブーランジェの作品も注目。6月初旬にパリで取材したデュフレーヌの談話とともにその経歴を紹介します。

取材・文=岡田ヴィクトリア朋子(音楽ジャーナリスト)




2020年東京オリンピック(2021年開催)の閉会式でのフランス大会のプレゼンテーションで、フランス国立管弦楽団を指揮してフランス国歌ラ・マルセイエーズを演奏するビデオが映し出され、一挙に日本の人々に知られるようになったクロエ・デュフレーヌ。同年のブザンソン国際指揮者コンクールでは3人のファイナリストの中に残り、聴衆賞、オーケストラ賞、審査員特別賞を受賞。2022/23シーズンはロサンゼルス・フィルでグスターボ・ドゥダメルのフェローを務め、2023/24シーズンは引き続きドゥダメルの招きでパリ・オペラ座アカデミーのフェローに選出されるなど、注目度が急激に高まっている。一体どんなバックグラウンドを持った人なのだろうか。6月初め、パリのフィルハーモニーでアマチュアオーケストラ(といっても実力はプロ級)を指揮するというので、コンサートの前に実際に彼女に会いに行った。その内容も交えて、彼女の魅力を紹介したい。



音楽にあふれた子供時代



ロサンゼルスとフランスを
両拠点に活動するデュフレーヌ。
幼少期からオペラに親しんできたという
©Yves Petit

 最初に音楽に触れたのはピアノで、5歳ぐらいの時に、あるピアノ演奏を聴いて母親に自分もピアノを習いたいと言ったのが始まりだという。その後8歳で地元モンペリエの音楽院に入学。半日は普通の小学校、半日は音楽院という特別カリキュラムでヴィオラと歌を始めた。同時にモンペリエ・オペラの少年少女合唱団員として舞台に立ち始め、時には子役ソリストも務めた。当時の合唱指揮者が女性で、素晴らしい指導をしてくれたこともあり、すでに、彼女のように人々に音楽の楽しみを伝えられる人になりたいと思っていたそうだ。オペラでは子供の合唱団の出番は少ないので待ち時間が多く、「その間舞台裏で画面に映る指揮者の姿に魅了されていた」と語る。このように、彼女の原点となっているのは、合唱団員、ソリストとして歌い、音楽院オケでヴィオラを演奏するという、音楽にあふれた子供時代の経験なのだ。




指揮者として



アカデミーでの指揮姿も
©Theresa Pewal

 合唱団の指揮者に魅せられた彼女は、音楽院で友達を集めて合唱や器楽アンサンブルなどを指揮するようになった。それは、自分が皆を「指揮」して統率したいというよりは、友達とお互いに助け合って皆で音楽をしたい、という望みからのものだった。そんな中でアマチュアオーケストラを頻繁に指揮するようになり、本格的な勉強をするためにパリのエコール・ノルマル音楽院に入学。ディプロマを得た後、2015年から、最前線で活躍する多くの指揮者を輩出しているヘルシンキの名門シベリウス・アカデミーでみっちりと学んだ。ここでの5年半で、プロとしての基本を叩き込んだのだ。その間、2018〜19年には、交換留学制度を利用してパリ国立高等音楽院に入学しアラン・アルティノグリュ(ブリュッセル・モネ劇場芸術監督)のもとでも研鑽を重ねた。2021年にはマルコとブザンソンの国際指揮者コンクールにたった3ヶ月のインターバルで参加。マルコでは3位に入賞。そして今、ドゥダメルのアシスタントを務めるに至っている。



東京フィル指揮で日本に初登場



今年生誕130年を迎えた
夭折の作曲家リリ・ブーランジェ
(1893-1918)


俊英・中野りなとはサン=サーンス
「ヴァイオリン協奏曲第3番」で共演 
©kisekimichiko

 東京フィルハーモニー交響楽団の10月の定期演奏会で日本デビューを飾る彼女。フランス音楽プログラムで注目なのはリリ・ブーランジェ『春の朝に』だろう。室内楽版とオーケストラ版があり、最近活発に取り上げられている女性作曲家の作品の中でも演奏頻度が高い。5分ほどの小曲だが「みずみずしい息吹にあふれた秀作でオーケストレーションも素晴らしく、自然を扱ったテーマは日本文化にある自然への慈しみと通ずるものがあるので、日本の方々にも好んでいただけるのでは」と語る。日本人には、感情をあからさまにはしないが内面的な強さを持っているというイメージがあり、それはラテン気質で物事を本能的に感じ取るという彼女自身の性格とは反対なので、それがどのように音楽に映し出されていくのかが楽しみだ、と語った。ベルリオーズ『幻想交響曲』は外に向かった曲だが、「舞踏会」や「野の風景」には繊細さがあり、「観点を押し付けるのではなく、自分の感性を通じて、自分の見方、感じ方を分かち合いたい」と抱負を語る。それは、中野りなとの初顔合わせとなるサン=サーンスの「ヴァイオリン協奏曲第3番」でも同じ。「フランス音楽は自分のアイデンティティーをつくっている重要な要素なので、これを存分に日本の皆様に聴いていただけたら」と、今から日本公演を大いに心待ちにしている様子が印象的だった。







岡田ヴィクトリア朋子(おかだ・ヴィクトリア・ともこ)/パリ・ソルボンヌ大学で音楽学博士号を取得。2005年よりフランス、ベルギー等で執筆活動を開始、その傍ら、音楽・美術分野で翻訳家として活動。白水社クセジュ文庫から訳書『西洋音楽史年表』『オペレッタ』『100語でわかるクラシック音楽』を出版。国際音楽評論家協会理事、フランス演劇・音楽・ダンス職業評論家協会理事、フランス文芸翻訳家協会会員。日仏クラシック音楽マガジンvivace-cantabile.com主催。
note :https://note.com/victoriaparis_75


10月定期演奏会 

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10月18日[水]19:00開演
東京オペラシティ コンサートホール
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10月19日[木]19:00開演
サントリーホール
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10月22日[日]15:00開演
Bunkamura オーチャードホール

指揮:クロエ・デュフレーヌ(2021年ブザンソン国際指揮者コンクール聴衆賞、オーケストラ賞)
ヴァイオリン:中野りな*
(2022年仙台国際音楽コンクール優勝)


リリ・ブーランジェ/春の朝に
(リリ・ブーランジェ生誕130年)
サン=サーンス/ヴァイオリン協奏曲第3番*
ベルリオーズ/幻想交響曲


特設ページはこちら


1回券料金

  SS席 S席 A席 B席 C席
チケット料金

¥15,000

¥10,000
(\9,000)

¥8,500
(\7,650)

¥7,000
(\6,300)

¥5,500
(\4,950)

※( )…東京フィルフレンズ、WEB優先発売価格(SS席は対象外)


主催:公益財団法人 東京フィルハーモニー交響楽団
助成:文化庁文化芸術振興費補助金(舞台芸術等総合支援事業(創造団体支援))| 独立行政法人日本芸術文化振興会(10/19公演)
協力:Bunkamura(10/22公演)

公演カレンダー

東京フィルWEBチケットサービス

お電話でのチケットお申し込みは「03-5353-9522」営業時間:10:00~18:00 定休日:土・日・祝