2026-27シーズン定期演奏会は豪華出演者陣がそろった。名誉音楽監督チョン・ミョンフン、首席指揮者アンドレア・バッティストーニ、特別客演指揮者ミハイル・プレトニョフの盤石の指揮者陣に加えて、ピンカス・ズーカーマン、小林研一郎、ソフィー・デルヴォーが客演する。ズーカーマンとデルヴォーはソリストも兼ね、「弾き振り」「吹き振り」を披露する。チョン・ミョンフンのビゼー『カルメン』演奏会形式や、バッティストーニによるマーラーの交響曲、プレトニョフの自作自演とチャイコフスキーなど、オーケストラを聴く醍醐味を味わえる名曲がずらりと並んだ。シーズンを通して聴くことで、東京フィルとともに音楽の歓びにあふれた一年を歩みたい。
文=飯尾洋一
1月

新シーズンの幕開けを飾るのは、首席指揮者のアンドレア・バッティストーニ。母国イタリアの作曲家レスピーギの珍しい作品と、マーラーの人気曲を組み合わせたプログラムを披露する。レスピーギの「ピアノと管弦楽のためのトッカータ」では、2022年に第76回ジュネーヴ国際音楽コンクールで第3位を獲得した五十嵐薫子が独奏を務める。一種のピアノ協奏曲ではあるが、トッカータと題されていることからも察せられるように、着想源はバロック音楽にある。擬古的な作風をとりつつ、そこに20世紀の感性を盛り込むのはレスピーギの得意技。あたかもパラレルワールドの古楽のような新鮮味がある。マーラーの交響曲第1番『巨人』は、バッティストーニが首席指揮者に就任する前の2014年にもとりあげたレパートリー。オーケストラとの絆を深めた今、さらなる高みを目指す。熱演は必至。
2月

2月は名誉音楽監督のチョン・ミョンフンが登場する。ロマン派のドイツ音楽の精華というべき名曲が集められた。ウェーバーの歌劇『魔弾の射手』序曲は作曲者没後200年を記念した選曲。ブルッフのヴァイオリン協奏曲第1番では、岡本誠司が独奏を務める。岡本は2021年に難関で知られるARDミュンヘン国際音楽コンクールのヴァイオリン部門で第1位を獲得。高度な技巧に加えて作品に対する旺盛な探求心の持ち主だ。古今のヴァイオリン協奏曲のなかでも、とりわけ豊麗なロマンに満たされた傑作の魅力をあますところなく伝える。メンデルスゾーンの交響曲第3番『スコットランド』は、スコットランドへの旅が契機となって誕生した作品。旅先の朽ち果てた礼拝堂が作曲者にインスピレーションをもたらした。マエストロが東京フィルから幻想味あふれる響きを導き出してくれることだろう。
5月
5月はふたたび首席指揮者アンドレア・バッティストーニが指揮台に上る。前半で演奏されるのは、バッティストーニ自身のオーケストラ編曲によるシューマンの『子供の情景』。今回が世界初演となる。原曲のピアノ曲は有名だが、これをオーケストラで演奏するという発想は新鮮だ。「トロイメライ」や「詩人は語る」など、オーケストラならではの表現によって違った魅力が生まれてくるのではないだろうか。作曲家としての顔も持つバッティストーニがどんなオーケストレーションを施すのか、実に興味深い。今年、第一子をもうけたことが編曲のきっかけになっているのだろうか。後半はマーラーの交響曲第4番。1月の交響曲第1番『巨人』に続いて、マーラーへの意欲を燃やす。終楽章ではソプラノの高橋維が天上の歌をうたう。このうえもなく清澄な音楽に身を委ねたい。
6月

6月は名匠ピンカス・ズーカーマンが招かれる。長年にわたりヴァイオリニスト、ヴィオリストとして、さらに指揮者として世界最高峰のステージで活躍してきた大家が、オール・モーツァルト・プログラムで東京フィルと共演する。2025年に続いて今回も「弾き振り」が含まれるのがうれしい。豊潤な美音を堪能できることだろう。モーツァルトがウィーンで絶頂期を迎えていた頃に書かれた歌劇『フィガロの結婚』序曲、故郷ザルツブルクで宮廷楽団のヴァイオリニストを務めていた時期のヴァイオリン協奏曲第3番、後期三大交響曲で異彩を放つ短調作品の交響曲第40番。この3曲でさまざまな角度からモーツァルトの核心に迫る。とりわけ弦楽セクションにとってズーカーマンとの共演から得られるものは大きいはず。東京フィルがズーカーマンの色に染まる。
7月

7月はチョン・ミョンフンがふたたび登場し、ビゼーの歌劇『カルメン』演奏会形式を指揮する。マエストロと東京フィルのコンビはこれまでにも『ファルスタッフ』『オテロ』『マクベス』など、数々の名作オペラをとりあげてきたが、今回は2020年以来となる『カルメン』。オペラの中のオペラというべき傑作だ。ひりひりするような熱いドラマが会場を沸かせてくれることだろう。チョン・ミョンフンは2027年からはオペラの殿堂、ミラノ・スカラ座の音楽監督をアジア人として初めて務めることが発表されている。そのスカラ座でも『カルメン』の指揮が予定されており、まさに十八番といえる。演奏会形式ならではの雄弁なオーケストラと、充実の歌手陣が一体となって、晩年のビゼーが残した奇跡の名作に向き合う。
8月

8月は小林研一郎が客演する。86歳を迎える「炎のマエストロ」が巨匠の至芸を味わわせてくれることだろう。メンデルスゾーンのヴァイオリン協奏曲では2006年ボストン生まれの俊英、若尾圭良がソリストに抜擢される。若尾は2021年ユーディ・メニューイン国際ヴァイオリン・コンクール・ジュニア部門および同年のスタルバーグ国際弦楽器コンクールの優勝者。2024年にはアンドリス・ネルソンス指揮ボストン交響楽団と新シーズンのオープニング・ガラコンサートで共演を果たした逸材である。リムスキー=コルサコフの交響組曲『シェエラザード』は、小林研一郎の得意のレパートリー。めくるめくアラビアン・ナイトの世界が色彩感豊かなオーケストレーションによって描かれる。コンサートマスターを筆頭に、東京フィルの名手たちの華麗なソロをたっぷりと楽しめるはずだ。
10月

10月はチョン・ミョンフンが協奏曲と交響曲の屈指の人気作を並べたプログラムを指揮する。シベリウスのヴァイオリン協奏曲では、2025年秋のヨーロッパ・ツアーでも共演した稀代の名手マキシム・ヴェンゲーロフがソリストを務める。華やかな技巧に北欧音楽ならではの抒情性と雄大さが一体となった名演を期待できそうだ。シベリウスのヴァイオリン協奏曲は民族的な舞曲を思わせる力強くリズミカルなフィナーレで曲を閉じるが、ベートーヴェンの交響曲第7番ではさらなるリズムの饗宴が待っている。エネルギッシュなダンスとほとばしる情熱が強烈な推進力を生み出し、陶酔的なクライマックスを築く。ベートーヴェンの交響曲はチョン・ミョンフンにとって、くりかえしとりあげてきた大切なレパートリー。一段と深化を遂げた巨匠の今がここに。
11月

11月は特別客演指揮者ミハイル・プレトニョフが自作自演を披露する。プレトニョフは指揮者、ピアニストであるのみならず、作曲家でもある。今回演奏されるのは、2024年に書かれた「14の音楽的記憶」という小品集。この曲で題材となっているのは、マエストロ自身の幼少期から青年期にかけての音楽的な記憶。2012年に東京フィルの定期公演のために来日した際、リハーサルを見学した森村学園中高等部管弦楽部との交流に触発されて、マエストロが少年期に書き溜めた素材を用いて書きあげられた。大人が聴いても子供が聴いても共感できる作品である。チャイコフスキーの交響曲第4番はプレトニョフにとって重要なレパートリーだ。チャイコフスキーの音楽を感情的ロマン的な面だけではなく、知的で哲学的な面からもとらえるのがプレトニョフ。忘れがたい名演になるのでは。
2027年1月

2027年1月は「ファゴットの女神」の異名を持つソフィー・デルヴォーが東京フィル定期にデビューを果たす。ウィーン・フィルの首席ファゴット奏者として、またソロや室内楽でも際立った活躍を見せるデルヴォーだが、近年は急速に指揮者としてのキャリアを積み重ねている。そんなデルヴォーが組んだプログラムは、やはりウィーンの伝統との結びつきを感じさせるもの。モーツァルトの歌劇『魔笛』序曲で幕を開け、没後200年を迎えるウェーバーのファゴット協奏曲では、ソリストと指揮を兼ねた「吹き振り」を披露する。ファゴット奏者の「吹き振り」はかなり珍しい。室内楽の延長のような親密なアンサンブルを聴かせてくれるのでは。メイン・プログラムはブラームスの交響曲第1番。ウィーン・フィル流のブラームスなのか、それとも独自の個性が発揮されるのか?興味津々。
2027年2月

シーズンの掉尾を飾るのは、名誉音楽監督チョン・ミョンフン。締めくくりは華やかだ。サン=サーンスの代表作であるばかりでなく、フランスの交響曲の歴史に燦然と輝く傑作、交響曲第3番『オルガン付き』が演奏される。巨大な建造物とでもいうべきパイプオルガンが、オーケストラと一体となって作り出す響きは、コンサートホールでしか体感できないスペクタクルだ。ともにすぐれたパイプオルガンを有するサントリーホールと東京オペラシティコンサートホールの2会場で開催される。チョン・ミョンフンによるサン=サーンスの『オルガン付き』といえば、パリ・オペラ座バスティーユ音楽監督に就任してまもない頃、ドイツグラモフォンに同オーケストラと残した録音が名高い。自家薬籠中のレパートリーといってもよいだろう。東京フィルの輝かしいサウンドにぴったりの選曲だ。ベートーヴェンのピアノ協奏曲第4番では、2025年ロン=ティボー国際コンクール優勝者のキム・セヒョンが独奏を務める。清新な演奏を期待したい。
最優先発売日
2025年11月21日(金)
優先発売日
2025年11月22日(土)
一般発売日
2025年12月9日(火)
WEB優先発売期間 / 期間中はどなたさまも定価の1割引き!
11月22日(土)10:00 ~ 12月8日(月)23:59
【1月・2月・5月・6月定期の1回券発売日】
最優先発売(賛助会員・定期会員)=12月13日(土)
優先発売(東京フィルフレンズ会員・Web優先発売)=12月20日(土)
一般発売=2026年1月6日(火)
【7月・8月・10月・11月・2027年1月・2月定期の1回券発売日】
最優先発売(賛助会員・定期会員)=2026年4月4日(土)
優先発売(東京フィルフレンズ会員・Web優先発売)=2026年4月11日(土)
一般発売=2026年5月8日(金)
| 最優先 | | 賛助会員、定期会員の皆様を対象とした発売日です。お電話にて承ります。 |
|---|---|
| 優先 | | 東京フィルフレンズ会員の皆様を対象とした発売日です。お電話にて承ります。 |
| WEB優先 | | 東京フィルWEBチケットサービスにて期間中どなたさまも定価の1割引きでご購入いただけます。 |
| 一般 | | 一般の皆様を対象とした発売日です。 |
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