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2014年6月11日(水)
楽団員インタビュー | 6月サントリー定期シリーズ
黒川正三(チェロ首席奏者)
こういう、Cis(チス)からC(ツェー)なんですね、増8度。というように、すごく上がって下がって、なんか、すごく息が苦しくなるようなところがありますよね。
本当はもっとすごく難しくて、たくさんワーッと弾く場面がたくさんあるんですね。でも、僕はこういうなんでもない音の中にすごく色を感じるというか、そこらへんがシュトラウスの素晴らしいところじゃないかなと思います。
──『サロメ』や『ローゼンカヴァリエ』では、ラブシーンがあったり非常に官能的なシーンがありますね。
チェロってやっぱりいろんな表現ができる楽器だし、だから官能的なっていう音楽では、とてもそういう音を出しうると思いますね。どこがって本当に言いづらいんだけど…。たとえばシュトラウスって7度の跳躍とか9度の跳躍ってよく使うんですよね。そういうのはとても艶かしいというか、美しいという気がしますね。
──初日のリハーサルを終えて感触はいかがですか。
飯守先生の素晴らしいところは和声というか、調性感ですかね、調性を性格づけというか、調性の持っている性格をはっきりとおっしゃるので、それを今回も期待していて。はじめしばらくの間、その話が出ないなと思っていたら、途中から出始めました。エス・ドゥア(Es-Dur)はどうだとか、エー・ドゥア(E-Dur)は愛のテーマの調性だとか、すごくおっしゃっていて。
僕たちはなかなか調性の持つ色っていうか、キャラクターはいまいちわかっていないところがあるので、飯守先生がいらした時はそういうところが楽しいです。
僕の習ったウィーンのミラベッツ先生というのは若い頃にシュトラウスの指揮で、まあ彼はウィーン・フィルの首席だった人なので、若いころシュトラウスがウィーンの国立歌劇場に指揮者として来たときに居たわけですよ。それで、やっぱりシュトラウスのオペラは難しいので、彼が一生懸命になって練習していると、シュトラウスがそこへ来て「そんなところはさらわなくていいんだよ」って(笑)。でも難しい音をたくさん書いているんだけど、それ以上にシュトラウスが言いたいことは単純な音の中に、ちょっとした響きの中に、和声の中に、書き込まれているような気がする。
──シュトラウスの曲や人生観について共感するところなどありますか。
詳しく彼の人生を知っているわけではありませんが、彼はわりと早い年齢から死を考えていといわれていますね。病弱だったのかな、そんなに自分は長く生きないだろうと思っていたらしいです。死というものについて、おそらく非常に美しいものをみていたんじゃないかという気がする。長年連れ添った奥さんと人生を長く歩んできて、静かなところで生きるというイメージを持ってるわけですよね。あのアイヒェンドルフの詩の通りのことを思っていたと思います。ヒバリがないて、それを聴ききながら静けさのなかで、これが死というものかもしれないという詩ですよね。そういったところに、彼のたくさんの作品のなかでたとえば『死と変容』のテーマなんかで出てくるところがやっぱり素晴らしいなと思います。
第849回サントリー定期シリーズ
【学生当日券 ¥1,000】
2014年6月17日(火) 19:00 開演(18:30 開場)
指揮:飯守 泰次郎
ソプラノ:浜田 理恵*
オール・リヒャルト・シュトラウス・プログラム
交響詩『ドン・ファン』作品20、
4つの最後の歌 *
楽劇『サロメ』作品54より「7つのヴェールの踊り」
歌劇『カプリッチョ』作品85より
『ばらの騎士』組曲