ホーム > インフォメーション > 9月定期演奏会 聴きどころ | その圧倒的な演奏に異例の大抜擢

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2015年7月15日(水)



 9月、東京フィルハーモニー交響楽団の定期演奏会には、ふたりのマエストロが登場。ひとりは話題沸騰の首席客演指揮者アンドレア・バッティストーニ、そしてもうひとりは、オーケストラとともに世界を巡った大植英次です。


アンドレア・バッティストーニ
©上野隆文

 まずはアンドレア・バッティストーニ(10日サントリーホール、11日東京オペラシ ティ)。5月の定期演奏会『トゥーランドット』とイタリア管弦楽プログラムで熱狂のステージを繰り広げた彼の再登場です。 バッティストーニはこの夏27歳の若さで、故郷ヴェローナの野外オペラの祭典「アレーナ・ディ・ヴェローナ・オペラ・フェスティバル」でも大活躍中。8月25日には、目玉公演のひとつ『カルミナ・ブラーナ』を指揮し、興奮冷めやらぬままの来日となることでしょう!

 そんな9月定期の舞台は北国ロシア。しかし最初に演奏されるのは、ヴェルディのオペラのなかでもコンサートピースとして愛されている『運命の力』序曲です。ロシアのテーマのなかにイタリア・オペラが登場する理由は、マリインスキー劇場の依頼で書かれ、1862年サンクトペテルブルクで初演された作品だから。なるほど、バッティストーニらしい着眼点です。つづく「5つの絵画的練習曲」(10日のみ)は、ロシア人ラフマニノフのピアノ曲をイタリア人レスピーギがオーケストラ編曲した作品。原曲には『音の絵』という副題がついています。そしてムソルグスキー作曲ラヴェル編曲の『展覧会の絵』。「音楽で絵画を描く」のが第二のテーマでしょうか。それぞれの音楽の来歴や関連性を紐解きたくなるプログラミングもまた、バッティストーニの魅力のひとつに違いありません。


7月22日発売『リスト』(COGQ-78)

 さらに11日の公演では、モスクワ音楽院で学ぶ若きピアニスト反田恭平がソリストとして定期演奏会初登場。バッティストーニとはもちろん初共演です。反田は弱冠20歳ながら、その圧倒的な演奏に定期公演へ異例の大抜擢が決定。7月にはリスト作品を揃えたアルバム『リスト』でのCDデビューも控えた新星です。CDデビューに先駆けて4月に開催された記者会見でも、年齢を超越した演奏で記者たちを釘付けにしました。今回の演目はラフマニノフの「パガニーニの主題による狂詩曲」。パガニーニといえば、超絶技巧で知られるイタリアのヴァイオリニストであり作曲家。ピアノの魔術師リストにも絶大な影響を与えた鬼才です。万感の思いが込められた演奏になるでしょう。ふたりの若き才能がどんなドラマを生み出すのか、どうぞご期待ください。



2014年ワールド・ツアー バンコク公演より
©KiiTT Wongsjakra

 そして、22日のオーチャード定期に登場するのは大植英次。2014年3月、東京フィルの「創立100周年記念ワールドツアー2014」でともに世界を巡り、ニューヨーク、マドリード、パリ、ロンドン、シンガポール、バンコクの6都市で熱狂的なステージを盛り上げた「戦友」です。同行取材をした私が忘れられないのは、各地で演奏された黛敏郎「BUGAKU」の冒頭、彼のタクトとともに笙のような弦楽器の音色が鳴り響き、現地の観客が息を飲む瞬間。観客の熱狂に応えて熱を帯びていく音楽、そしてアンコールのロックのような高揚も劇的で、数々のメディアで世界中に伝えられました。

 ドラマティックな印象がある大植ですが、その音楽は非常に計算されたリハー サルの賜物です。たとえばロンドンのカドガンホールでは、元は教会だった美しい建物でリハーサルを重ねながら、途中何度もアシスタントに指揮を交代し、観客の立場で音響を確認する姿が印象的でした。観客に最上の音を届ける――その姿勢は、今回のブラームスの「交響曲第3番」、そして同「第4番」でも発揮されることでしょう。



ヨハネス・ブラームス

 ドイツ音楽の真髄とも言われるこれらの交響曲ですが、ブラームスがここに到達するまでには長い年月が必要でした。 20代で評価されながらも、交響曲の構想は自分のうちに温めつづけたブラームス。「第1番」を完成させたのは43歳の時。 今回演奏される「第3番」は50歳、「第4番」では52歳になっていました。そんなブラームスの思いのたけを、大植はきっと丁寧に紡ぎだしてくれるはずです。新時代の幕開けを告げるようなロシアの風。そして堂々完結するドイツの憂愁。


 3日それぞれが異なる魅力を持った9月の定期演奏会。秋の午後にぴったりの音楽を、ぜひともコンサートホールでご一緒しましょう!




高野麻衣(たかの・まい)


コラムニスト。上智大学文学部卒(西洋文化史)。2014年の東京フィル100周年記念ワールドツアーに同行取材するなど、幅広く執筆・講演活動をおこなっている。著書に『フランス的クラシック生活』(PHP新書)など。ネットラジオ『OTTAVA Domenica』(毎週日曜午後1時~ http://www.ottava.jp/)レギュラー出演中。


ホームページ「Salonette」www.salonette.net



9月定期演奏会

9月10日[木]19:00開演(18:30開場)
サントリーホール

指揮: アンドレア・バッティストーニ


ヴェルディ/歌劇『運命の力』序曲
ラフマニノフ(レスピーギ編)/5つの絵画的練習曲
ムソルグスキー(ラヴェル編)/展覧会の絵



9月11日[金]19:00開演(18:30開場)
東京オペラシティコンサートホール

指揮: アンドレア・バッティストーニ
ピアノ:反田 恭平*

ヴェルディ/歌劇『運命の力』序曲
ラフマニノフ/パガニーニの主題による狂詩曲 *
ムソルグスキー(ラヴェル編)/展覧会の絵





9月22日[火・休]15:00開演(14:30開場)
Bunkamura オーチャードホール


指揮: 大植 英次

ブラームス/交響曲第3番
ブラームス/交響曲第4番


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