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2019年1月17日(木)
北海道・北東北地域での5年の歩み ~ 文化庁「文化芸術による子供の育成事業」巡回公演より
「文化芸術による子供の育成事業」とは、『子供たちの豊かな創造力・想像力や、思考力、コミュニケーション能力などを養うこと』『将来の芸術家や観客層を育成し、優れた文化芸術の創造につなげること』を目的として行われる、文化庁の主催による文化芸術事業です。
そのうち巡回公演事業は、北海道から沖縄まで10ブロックに分かれた各地域の小中学校を、オーケストラ・合唱・バレエ・演劇・ミュージカル・歌舞伎・邦楽・現代舞踊などの芸術団体が訪問。学校の体育館などで本物の芸術体験を子供たちに届けています。今年度は115団体によりおよそ1800公演が開催されており、東京フィルは2014年度から5年間、東日本大震災被災地を含む北海道・北東北(青森・秋田・岩手・宮城)地域を担当しました。
訪問校の中には、東日本大震災で被災した学校も。
オーケストラにできることは何か、東京フィルにとってこの5年は音楽の力を問い直す時間でもありました。
プログラム
①ワークショップ(少人数メンバーによる事前指導)
楽器紹介、ボディパーカッション、最終ワークショップ(児童生徒が作ったオリジナルの歌詞をオーケストラと一緒に奏でられるよう、歌の指導を交えて最終確認)
②オーケストラ本公演 (*)は児童生徒とオーケストラの共演
ロッシーニ:歌劇『ウィリアム・テル』より“スイス軍の行進”
《楽器紹介》弦楽器~木管楽器~金管楽器~打楽器
《指揮体験》ブラームス:ハンガリー舞曲第5番(*)
《ボディパーカッション》「小さな世界」、ベートーヴェン:交響曲第5番『運命』第1楽章冒頭(*)
シベリウス:交響詩『フィンランディア』(オリジナル合唱付)(*)
各学校校歌(*)
《アンコール》外山雄三:管弦楽の為のラプソディーより八木節
2014年度~2018年度 訪問学校数、本公演参加者のべ人数
年度 |
参加校 |
参加者数 |
---|---|---|
2014年度 | 22校 | 9,330名 |
2015年度 | 23校 | 8,477名 |
2016年度 | 20校 | 7,598名 |
2017年度 | 17校 | 10,513名 |
2018年度 | 17校 | 7,443名 |
合計 | 99校 | 43,361名 |
訪問先 都道府県一覧
年度 |
参加校 |
---|---|
北海道 | 27校 |
秋田県 | 18校 |
青森県 | 10校 |
岩手県 | 14校 |
宮城県 | 30校 |
合計 | 99校 |
駆け抜けた5年の月日を振り返って――
「東京フィルのプログラムは単なる音楽鑑賞ではなく、オーケストラの伴奏と児童生徒の作詞した歌詞でシベリウス『フィンランディア』の合唱、ベートーヴェン『運命』のボディパーカッションでの共演という2つを柱に、ワークショップ(少人数による事前指導)からオーケストラ本公演までをひとつの公演ととらえています。 2014年からの訪問校の中には、東日本大震災で特に被害の大きかった宮城県石巻市、南三陸町、気仙沼市などの学校も含まれていました。『フィンランディア』は“学校や地域の良いところ、自慢できるところ”をテーマに子どもたちがキーワードを出し合い、歌詞にします。復興というにはまだ程遠かった地域の子どもたちが歌う“ぼくらの大好きな場所”“わたしのふるさと”といった歌詞には胸を打たれました。また、北海道では東京フィル楽団員の母校を訪問する機会もあり、学校の卒業生がプロの演奏家として活躍している姿に、夢をもって頑張ることの大切さを感じてもらえたのではないかと思います。
各地、各学校に、あふれるほどの思い出がありますが、担当された先生方からは子どもたちがどんなに公演を楽しんでいたか、90分のプログラムがどんなに短く感じられたか等を、たくさんの子どもたちの感想文と共に教えていただきました。
毎回、『オーケストラを楽しんでくれたかな。将来オーケストラのことを思い出して聴きに来てくれたらいいな』と思いながら学校を後にします。純粋な瞳で音楽を聴き、全身で楽しみ、いっぱいの笑顔で見送ってくれる子どもたちには感動させられることばかり。創意工夫いっぱいの歓迎メッセージや工作、完璧に練習したボディパーカッションや合唱、楽団員が乗ったバスにいつまでも手を振って見送ってくれたり、地域の皆さまからのあたたかい心遣い。巡回公演事業を通じて私たちが演奏を届けているつもりが、訪問先の皆さまから得るものがとても多い事業です。これからの日常生活のどこかで、オーケストラをより身近に感じていただき、当団も引き続き本事業に継続的に取り組んでいきたいと思います」。
東京フィル 企画制作部 公演担当・大谷