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――それでは、東京フィルの2021シーズンに取り上げる演目について教えてください。
1月定期演奏会
「シーズンは1月に“バレエ・リュスの宵”でスタートします。私の好きな二つのバレエ作品『ダフニスとクロエ』と『火の鳥』に焦点を当てます。どちらも再生、新しい夜明け、新しい太陽が生命を吹き込み、祝福をもたらす音楽です。
ラヴェルのスコアに描かれた“夜明け”のシーンは、これまで作曲された最も美しい音楽的な日の出の一つですが、それによって啓示された太古の世界を描きます。
ストラヴィンキーの英雄と怪物のおとぎ話は、善と悪の永遠の戦いを描いて、最後のクライマックスでは悪が破壊され、自由と希望に満ちた新たな世界が始まるのです。」
5月定期演奏会
アストル・ピアソラ(1921年-1992年)
「5月には、ブエノスアイレスとヴェローナという2つの都市に、音楽の旅をします。
実を言うと、私はそこまでピアソラのタンゴ音楽のファンではないので、最初は「シンフォニア・ブエノスアイレス」がこんなにも刺激的で面白いのか!と、とても驚きました。ピアソラ100歳の誕生日を記念して、彼の唯一のフル・オーケストラのためのオリジナル曲であるこの作品を日本で演奏したいと思いました。彼のブエノスアイレスの描写はとてもダイナミックでエネルギッシュ、そして彼が愛するタンゴのおかげで、熱くセクシーです!
その後、プロコフィエフの『ロメオとジュリエット』で私の故郷ヴェローナに移動します。第一組曲と第二組曲から私が好きな曲を選んで、二人の不幸な恋人の悲劇の物語をお贈りします。」
11月定期演奏会
ヒエロニムス・ボス『快楽の園』(1503年-1504年)
プラド美術館
「11月には私が作曲したフルート協奏曲、ヒエロニムス・ボスの絵画にインスパイアされた『快楽の園』を演奏できることを大変光栄に思っています。この協奏曲は、私の長年の音楽パートナーであるトンマーゾ・ベンチョリーニから、彼のためにコンチェルタンテ作品を書いてほしいと頼まれ書いたもので、今年ロックダウンが始まる数日前、3月8日にベルリン・フィルハーモニーで初演されました。
トンマーゾ・ベンチョリーニ
トンマーゾはイタリアで最も優れた若手フルート奏者の一人で、フルートのレパートリーを広げるために新しい作品を初演することに非常に興味を持っていました。彼は私の室内楽曲をこれまで何度も演奏してくれているので、私の方も彼の能力がわかっており、彼に合わせてこの協奏曲を書いたのです。
この作品は、ボスの想像力豊かな芸術へのオマージュであり、彼の奇妙でドラマチックでグロテスクなビジョンを、非常に親しみやすい書法で音楽に呼び起こそうとしています。私の好きな交響曲の一つ、チャイコフスキーの第5番と組み合わせました。
ロマンティシズム、興奮、そして音楽を通じて語られる物語。これが、2021シーズンのプログラムの共通のテーマになると思います」
――皆マエストロとの再会を心待ちにしています。東京フィルのお客様へのメッセージを、あらためてお願いいたします。
「皆さんがとても恋しいです。この奇妙な一年を後にし、新たな希望と自信を持って未来を見据えることができるよう、また演奏できることを楽しみにしています」
11月定期演奏会
11月1日[月]19:00開演(18:15開場)
サントリーホール
11月3日[水・祝]15:00開演(14:15開場)
Bunkamura オーチャードホール
11月4日[木]19:00開演(18:15開場)
東京オペラシティ コンサートホール
指揮:アンドレア・バッティストーニ
(東京フィル 首席指揮者)
フルート:トンマーゾ・ベンチョリーニ*
― バッティストーニの作品 ―
バッティストーニ/フルート協奏曲『快楽の園』~ボスの絵画作品によせて(2019)(日本初演)*I. 天地創造 II. エデンの園 III. 地獄ーカデンツァ IV. 庭
チャイコフスキー/交響曲第5番
令和3年度(第76回)文化庁芸術祭参加公演(11/1公演)
主催:公益財団法人 東京フィルハーモニー交響楽団
助成:文化庁文化芸術振興費補助金(舞台芸術創造活動活性化事業)| 独立行政法人日本芸術文化振興会
協力:Bunkamura(11/3公演)