ホーム > インフォメーション > ホルン首席奏者高橋臣宜が語る ダン・エッティンガー指揮7月定期演奏会の聴きどころ

インフォメーション

2024年7月23日(火)

――マエストロダン・エッティンガーは今年日本でデビューして20年だそうです(2004年新国立劇場『ファルスタッフ』以来)


 「私は、マエストロの日本デビューの時よりは少し後からご一緒しましたが、ほとんど同じくらいの時期に初共演しています。私が東京フィルに入団した頃(2007年)、マエストロ エッティンガーは世界的な若手指揮者として注目されていた1人でした。東京フィルの常任指揮者に就任した頃は既にヨーロッパの歌劇場やオーケストラに呼ばれていて、既に忙しくされていた記憶があります。
 そんな中でも印象的だった共演の記憶は、ある年の『フェスタ・サマーミューザ』でのチャイコフスキー『交響曲第5番』。10年以上も前のことですが、その時の演奏がものすごく印象に残っています。当時を思い返してみるとマエストロは良い意味で大らかで、音楽の風景全体を描くような音楽でした。それを経て今回、ブルックナー『ロマンティック』のリハーサル初日を終えたところでの感触は、マエストロが円熟の域へと進んでいるということ。サウンドはもちろんですし、音の一つ一つの扱い方、休符の間の取り方、そのディティールに対して以前にも増して非常にこだわりを感じさせる音楽です。マエストロが常任指揮者で東京フィルに頻繁に登場していた頃は、自然な音楽であることは変わらないのですがどちらかというと全体的な、音楽的な風景を意識して作る指揮者と感じていたのですが、今回は細部へのこだわりにマエストロの円熟を感じています。
 そのことと関係があるのかはわかりませんが、かつてマエストロはオーケストラに対抗配置での演奏をリクエストされることが多かったですが、今回は通常配置での演奏です。そういったことにおいても、何かマエストロの中で変化や転換点があったのかもしれないと感じています。『円熟』という表現はありきたりかもしれませんが、それは雰囲気ではなくて、指揮者と演奏者の関係性の中でそのようなマエストロの進化を感じられるのだと思います。
 指揮者と演奏者の音楽作りというのは、考え方や互いに何が実現できるかといった細かいところまで踏み込んでいくものです。マエストロからの要求もありますが、演奏者から提案することもあり、リハーサルは音による対話の場とも言えます。マエストロ エッティンガーは演奏を通してそのような対話をしてくださる指揮者です。対話を通じて私たち演奏者にマエストロの考えがわかるのです。
 今回のブルックナーでの金管セクションの配置は、マエストロのリクエストです。この配置で音を出してみて、演奏のアプローチも聴いて、なるほどこういう音を出したいのか、とわかります。そういったことも含め、マエストロの進化、円熟を感じることができています」。




――マエストロ エッティンガーのブルックナーへのアプローチはどのようなものでしょうか。


 「それが“正しい“かどうかということはわかりませんが、よくイメージされるような“ザ・ブルックナー”というような演奏ではないと思います。そうではなく、非常に『歌わせる』ブルックナーですね。そういうところからもマエストロはオペラ指揮者だなと感じます。
 ブルックナーはオルガン奏者でもありました。ブルックナーの交響曲はオルガンの響きをオーケストラで出そうとしているわけです。それはそうなのですが、その中で、マエストロ エッティンガーはオーケストラを“歌わせ”ます。先ほどマエストロがディティールにこだわるとお話しましたが、そのディティールは、要約してみれば全て“歌“ですね。歌わせるためにこういう細部までの繊細なこだわりを要求するのだと気づかせてくれます。奇抜ではないと思いますが、あまり聴けない『ロマンティック』が聴けると思います」。



――演奏者としての面白さ、やりがいはどのようなところでしょうか。


 「ホルンにはソロも、和声もあり、マエストロの場合、そこにしっかりと“歌“があるところでしょうか。マエストロはリハーサルで、和声の運びに対しても『単に鳴らすのではなく、音色の変化も意識してほしい』と何度も仰っていました。逆に、こちら側が“歌いすぎ“ると、ここはそうじゃない、ということも言われる場面がありました。
 ホルン・セクションにはここ数年で若いメンバーも入って、マエストロとは初共演というメンバーもいますので、リハーサルを通じてさらに馴染んでいくと思いますが、ただ、ブルックナーというのは譜面の“裏側“を見なければならない作曲家です。
 たとえば4人のホルン奏者それぞれの楽譜に書いてある音符、旋律、その“裏側“を見なければならないのです。冒頭で1番ホルンのソロが終わって、もう1回メロディが登場する時はセクションの他の音が入って1番ホルンと掛け合いになります。そこで、途中まで長調で進んでいたのに突然短調の和声になったりする。そういったことすべて、その音符ひとつひとつの“裏側“をしっかりと頭に入れておかないと、楽譜上では同じ音が書いてあっても次の小節では同じ音でも音の役割が変わる。小節ごとにいきなり転調したりするんです。そこで音一個一個の色彩感が変わってゆくのです。そういったことを念頭において演奏しなければならないので、ある程度は経験も必要なのですが、ホルン・セクションも他の皆さんも、しっかり準備して臨んでいて、本当に心強いという感覚が強いです。
 和声の中で役割が変わることによってその音のピッチもカラーも変わってゆく、それがブルックナーの楽しさなのですが、マエストロ エッティンガーの場合はそこに歌が入る。あまりよそでは聴けないブルックナーかもしれません。

 『ブルックナーは神の領域へ踏み込む音楽』というような見方もありますが、リハーサル初日を終えた時点では、マエストロのブルックナーは割と人間味のある演奏ではないかと感じています。マエストロ自身が人間的なものを表現しようとしているのか、もしくは賛美歌のようなものを意識しておられるのかはちょっとまだわかりませんでしたが……いずれにしても、随所に歌があり、とても美しいです。
 美しい音というのは演奏者にとって“怖い“側面でもありますね。とても美しい、精神性の領域に入っていきますから、奏者としてはアタック(音の出だし)等にも非常に気を遣います。そこを、マエストロは『こちらがサポートするから』とおっしゃってくださいます。関係の長さもあって互いの考えていることがわかることもありますし、マエストロが明確な指揮でオーケストラを導いてくれるので、安心して演奏することができるんです。マエストロと久々にご一緒して、本当にすばらしい音楽家だと思います。音楽家として素晴らしいのはもちろんですが、その人となりも素晴らしい方。演奏者の感じていることも汲んでサポートしてくださる指揮者です」。



――お客様へのメッセージをお願いします。


 「ブルックナーを聴くお客様は細部への想いが強く、演奏への賛否もさまざまに分かれる作曲家だと思います。ありがたいことではありますが、今回のコンサートはぜひ、先入観なしで楽しんで聴いていただけたらと思います。東京フィルとの初共演から20年を迎えたマエストロとの、2024年7月の一期一会の演奏です。そこにはメロディ、歌があります。今この時この時間に、このダン・エッティンガーという指揮者が、今この東京フィルで20年の関係の中で演奏するブルックナーを堪能していただきたいと思います」。




7月定期演奏会 

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7月24日[水]19:00開演
東京オペラシティ コンサートホール
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7月28日[日]15:00開演
Bunkamura オーチャードホール
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7月29日[月]19:00開演
サントリーホール

指揮:ダン・エッティンガー(桂冠指揮者)
ピアノ:阪田知樹


モーツァルト/ピアノ協奏曲第20番*
ブルックナー/交響曲第4番『ロマンティック』(ノヴァーク版)
〈ブルックナー生誕200年〉


特設ページはこちら


1回券料金

  SS席 S席 A席 B席 C席
チケット料金

¥15,000

¥10,000
(\9,000)

¥8,500
(\7,650)

¥7,000
(\6,300)

¥5,500
(\4,950)

※( )…東京フィルフレンズ、WEB優先発売価格(SS席は対象外)



主催:公益財団法人 東京フィルハーモニー交響楽団
助成:文化庁文化芸術振興費補助金(舞台芸術等総合支援事業(公演創造活動))| 独立行政法人日本芸術文化振興会
協力:Bunkamura(7/29公演)

公演カレンダー

       

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お電話でのチケットお申し込みは「03-5353-9522」営業時間:10:00~18:00 定休日:土・日・祝


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