ホーム > インフォメーション > 【特別記事】11月定期演奏会の聴きどころ アンドレア・バッティストーニ、マーラー「交響曲第7番『夜の歌』」 を語る②

インフォメーション

2024年4月28日(日)

――第4楽章の「距離のある冷静さを持った愛」とは具体的にどのようなものなのでしょう?



ジョヴァンニ・ドメニコ・ティエポロ
「プルチネッラの勝利」
(1760/1770、コペンハーゲン国立美術館蔵)

 「第4楽章を聴くと、私はイタリアのコメディア・デラルテの世界、とりわけジョヴァンニ・ドメニコ・ティエポロの描いたアルレッキーノやプルチネッラを思い起こします。それはときに不気味なものにも映るので、みなが期待するロマン派的な愛の音楽とは異なるのですが、その本質にはやはり感動的な愛があるのです」




――第4楽章のギターやマンドリンだけでなく、第1楽章で活躍するテノールホルンも、普段オーケストラでは用いられない楽器です。マーラーはなぜこうした楽器を交響曲第7番に取り入れたのでしょう?


 「マーラーは音に対する感受性が研ぎ澄まされた人だったので、オーケストラで普段使われる楽器でなくても、自らの表現に必要であれば用いたのでしょう。第1楽章の冒頭は、太古の巨大な生き物が森のなかの洞穴で、重たい身体を横たわらせて苦しんでいるかのようです。マーラーはいつも、交響曲の冒頭でその音楽のイメージをはっきりと示して、聴き手を作品の世界に引き込みます。第7番の不気味でありながら厳粛な冒頭も、実に見事です」



――たしかに第3番のホルン8本のユニゾンや、第5番のトランペットのファンファーレなど、マーラーの交響曲の冒頭は印象的なものばかりですね。


 「マーラーの交響曲には、冒頭部分に限らず、非常に身体的で立体的な音楽表現が見られます。こうした作曲家はマーラーのほかにはプッチーニしか思いつきません。プッチーニはシンプルなアイディアを巧みなオーケストレーションによって具体化し、聴衆をオペラの異世界へと誘いました。このようにマーラーとプッチーニには似通った部分があるのですが、ふたりは互いのことを嫌っていたようです(笑)」



――バッティストーニさんと東京フィルのマーラーは、第7番で4曲目となります。演奏を重ねるなかで、互いのマーラーに対するイメージは近づいていったのでしょうか?



 「私にとって、東京フィルとマーラーを演奏することは多くの学びがあります。オーケストラは作品をよく知っており、とりわけ第5番を演奏したときには、東京フィルの作品理解の深さに驚かされました。私はオーケストラのマーラー観を受け入れながら、それを発展させようと努めています。東京フィルのマーラーに対するアプローチや解釈は、楽団員一人ひとりの経験に基づくものであると同時に、これまで東京フィルの指揮台に立ってきたマエストロたちが遺してくれたものでもあります。マエストロ チョン・ミョンフンの音楽は東京フィルのマーラー演奏に確実に息づいていると思います。私はそれを変えるつもりはありません。東京フィルが培ってきたマーラー演奏の伝統に新しいアイディアを積み上げていくのが私の仕事だと思っています。第7番に限って言えば、東京フィルが最後にこの交響曲を取り上げてからかなりの年月が経っていますし、私自身も初めて指揮をする作品なので、お互いに新鮮な気持ちで演奏に取り組むことになるはずです。
 東京フィルは 20世紀のレパートリーを得意とするオーケストラです。第7番はロマンティックな音楽であると同時に、20世紀の音楽へと繋がっていく前衛的な作品でもありますので、東京フィルの持ち味が存分に発揮されると確信しています」



――第7番のあとにもバッティストーニさんと東京フィルのマーラー・シリーズが続いていくことを日本の音楽ファンは期待しています。


 「イタリアにはカルロ・マリア・ジュリーニ、クラウディオ・アバド、ジュゼッペ・シノーポリ、リッカルド・シャイーなど、優れたマーラー指揮者の系譜があります。私もマーラーのスコアの研究を重ねて、いずれは東京フィルと全てのマーラーの交響曲を演奏できたら良いなと思っています」



――最後に、この演奏会に行こうか迷っている人へ向けて、バッティストーニさんからメッセージをお願いします。


 「マーラーの交響曲第7番はあまり演奏されない作品なので、聴きに行くのをやめようかと考えてしまうこともあるかもしれませんが、感動的な旋律、常軌を逸した色彩、エキサイティングなサウンドなど、この交響曲には多彩な魅力が詰まっています。私は第7番のカウベルの響きが大好きなのですが、その美しさは録音では伝わりきらないことも多く、ホールで聴いてこそ味わえるものです。ぜひホールに来て、マーラーの魔法を東京フィルの生演奏で楽しんでください」


2022年9月定期演奏会 バッティストーニ指揮マーラー「交響曲第5番」より ⓒ上野隆文




八木宏之(やぎ・ひろゆき)/1990年東京生まれ。青山学院大学文学部史学科芸術史コース卒業。愛知県立芸術大学大学院音楽研究科博士前期課程(修士:音楽学)およびソルボンヌ大学音楽専門職修士課程修了。2021年春にWebメディア『FREUDE』を立ち上げ、その運営を行う株式会社メディアシオンを設立。クラシック音楽を中心にプログラムノートやライナーノーツを多数執筆するほか、コンサートのプレトークなども積極的に行なっている。



11月定期演奏会 

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11月13日[水]19:00開演
東京オペラシティ コンサートホール
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11月17日[日]15:00開演
Bunkamura オーチャードホール
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11月19日[火]19:00開演
サントリーホール

指揮:アンドレア・バッティストーニ(首席指揮者)


マーラー/交響曲第7番『夜の歌』
公演時間:約80分(休憩なし)


特設ページはこちら




1回券料金

  SS席 S席 A席 B席 C席
チケット料金

¥15,000

¥10,000
(\9,000)

¥8,500
(\7,650)

¥7,000
(\6,300)

¥5,500
(\4,950)

※( )…東京フィルフレンズ、WEB優先発売価格(SS席は対象外)


1回券発売日

最優先(賛助会員・定期会員)

4月13日(土)10時~

優先(東京フィルフレンズ)

4月20日(土)10時~

一般発売

5月7日(火)10時~

WEB優先発売期間 / 期間中はどなたさまも定価の1割引き!

4月20日(土)10:00 ~ 5月6日(月)23:59

※東京フィルチケットサービスはチケット発売初日の土日祝のみ10時~16時営業


主催:公益財団法人 東京フィルハーモニー交響楽団
助成:文化庁文化芸術振興費補助金(舞台芸術等総合支援事業(公演創造活動))| 独立行政法人日本芸術文化振興会
協力:Bunkamura(11/17公演)

公演カレンダー

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