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インフォメーション

2017年4月27日(木)



牛田智大
牛田智大 ©Ariga Terasawa
<衣装> 企画:(株)オンワード樫山 / 縫製:グッドヒル(株)

 

 あるピアニストがある曲を弾くという情報を見て、演奏を聴く前から“それは合うでしょう!”と思うことがあります。2018年2月定期公演の「牛田智大さん×グリーグのピアノ協奏曲」も、私にとってはそんな印象の組み合わせ。牛田さんの爽やかな音楽性、優しさがにじむ豊かな感情表現、そしてあの澄んだピアノの音。ノルウェーの作曲家、グリーグの協奏曲が持つ、透明感のあるロマンティックさのようなものを、絶妙に表現してくれそうです。とくに17歳になった最近の牛田さんの演奏は、音にパワーが加わり、表現もより堂々としたものになっているので、北欧の大自然を思わせるダイナミックな音楽に期待してしまいます。


 しかも指揮は、マエストロ・プレトニョフ。牛田さんがこの曲を披露するのは今度の公演が初めてだそうで、“取り組むのはもう少し先にしようかという考えもあったけれど、敬愛するマエストロ・プレトニョフと共演できる機会なので、挑戦することに決めた”とのこと。これまでの共演でも、牛田さんはマエストロからさまざまなことを学んだといいます。


 ところでグリーグとプレトニョフさんというと、私は2016年4月の東京フィル定期での『ペール・ギュント』全曲演奏を思い出します。『ペール・ギュント』は、ノルウェーの劇作家イプセンの戯曲に基づく劇付随音楽で、自由奔放な冒険家ペール・ギュントが放浪の旅に出かけ、若い恋や母の死、金銭的な成功や没落などを経験したのち、年老いて故郷に戻る、その人生を描く作品。もともと2015年に取り上げる予定でしたが、直前にプレトニョフさんのお母様が他界されたこともあり、公演は1年後に持ち越されたのでした。


グリーグ 
故郷ノルウェーの自然をこよなく愛した
エドヴァルド・グリーグ(1843-1907)
 

 人生のあらゆる出来事の意味を見つめなおすような音楽が展開する中、曲が、故郷に一度戻ったペールが母を看取る「オーセの死」に入ったとき、プレトニョフさんがおもむろに眼鏡をはずし、指揮棒を置いて指揮をしていたことが印象に残っています。それにどんな意味があったのかはわかりませんが、音楽からは、息子の冒険を遠くから応援し、戻ればあたたかく迎えてくれる母という存在への想いがあふれるようでした。


 プレトニョフさんにとって、グリーグは大好きな作曲家のひとりだそうです。ピアニストとして、音楽家として、マエストロから若い牛田さんにグリーグの音楽の真髄が受け継がれる瞬間を目にする、そんなコンサートになるかもしれません。






◆ Soloist's Profile

牛田智大 Tomoharu Ushida(ピアノ)

牛田智大
牛田智大 ©Ariga Terasawa

 1999 年 10 月いわき市生まれ。 父親の転勤に伴い、生後すぐ上海に移り6歳まで滞在。
 幼少の頃より音楽に非凡な才能をみせ、3歳よりピアノを始める。5歳で第 2 回上海市琴童幼儿鋼琴電視大賽年中の部第 1 位受賞。8歳の時から5年連続でショパン国際ピアノコンクール in ASIA で1位受賞。2012年(12 歳)、第16回浜松国際ピアノアカデミー・コンクールにて最年少1位受賞。
 同年3 月に日本人ピアニストとして最年少(12 歳)でユニバーサルより CD デビュー。その後、2013年「想い出」、「献呈~リスト&ショパン名曲集」、2014 年「トロイメライ~ロマンティック・ピアノ名曲集」が発売され、2015 年「愛の喜び」に続き、2016 年「展覧会の絵」はレコード芸術で特選盤に選ばれている。
 各地でのリサイタルに加え、2014 年にはウィーン・カンマー・オーケストラ、2015 年にはミハイル・プレトニョフ指揮ロシア・ナショナル管、2016年10 月には小林研一郎指揮ハンガリー国立フィル日本公演のソリストを務める。2014年9月5日に初の海外公演で高雄市交響楽団と共演、2017年3月にはバンコクにてタイ・フィルハーモニー管弦楽団と共演した。
 上海にて陳融楽(現在バンクーバー在住)、鄭曙星(上海音楽学院教授・ピアノ学科長)、日本にて金子勝子(昭和音楽大学・大学院教授)の各氏に師事。現在、モスクワ音楽院ジュニア・カレッジに在籍。ユーリ・スレサレフ(モスクワ音楽院教授)、ウラディミル・オフチニコフ(モスクワ音楽院教授)他の各氏に師事。


関連リンク
牛田智大 ユニバーサル ミュージック ジャパン公式サイト



◆ NEXT ≫ Vol.5 小曽根真(アンドレア・バッティストーニ指揮 2018年3月定期演奏会)


◆ 過去の連載記事

Vol.1 阪田知樹(渡邊一正指揮 6月定期演奏会 <オーチャード、オペラシティ>)
Vol.2 イム・ジュヒ(チョン・ミョンフン指揮 9月定期演奏会 <オーチャード、オペラシティ>)
Vol.3 小山実稚恵(伊藤翔指揮 12月サントリー定期演奏会)


<ご案内>

高坂はる香(こうさか・はるか/音楽ライター)
大学院にてインドの大道芸人のスラム支援プロジェクトを研究。その後ピアノ専門誌の編集者となり、世界の国際コンクールの取材を重ねる。2011年より、フリーライター・編集者として活動。
http://www.piano-planet.com/

イラスト:沙良志乃



2018年2月定期演奏会 ミハイル・プレトニョフ&牛田智大 北欧への旅

2018年2月定期演奏会
©上野隆文
2018年2月23日(金)19:00開演(開場18:30)
サントリーホール

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2018年2月25日(日)15:00開演(開場14:30)
Bunkamura オーチャードホール

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2018年2月26日(月) 19:00開演(開場18:30)
東京オペラシティ コンサートホール

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【出演】指揮:ミハイル・プレトニョフ(東京フィル 特別客演指揮者)
    ピアノ:牛田智大*

シベリウス/交響詩『フィンランディア』
グリーグ/ピアノ協奏曲*
シベリウス/組曲『ペレアスとメリザンド』
シベリウス/交響曲第7番


主催:公益財団法人 東京フィルハーモニー交響楽団
助成:文化庁文化芸術振興費補助金(舞台芸術創造活動活性化事業)
協力:Bunkamura(2/25)


公演カレンダー

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