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2017年4月19日(水)
その名が世界的なコンクールに
冠された大作曲家、
チャイコフスキー(1840-1893)
小山実稚恵さんがチャイコフスキー国際音楽コンクールに入賞し、世界から注目を集めたのは1982年、今から35年前のこと。その思い出について以前小山さんは、初めてモスクワ音楽院大ホールの舞台に立った感覚、それが日中の時間帯で、飾られた作曲家たちの肖像に並ぶ天窓からサッと光が差し込む情景、ピアノを弾くことにとらわれすぎず音楽を大切にすることに気づいた心境の変化を、まるで昨日のことのように語っていらっしゃいました。大切な思い出の一つだそうです。
2年前にデビュー30周年を迎えた小山さんは、「最近、音楽への愛情がますます強くなっている。もちろん昔からピアノも音楽も大好きだったけれど、これまでとは違う強い気持ちを持つようになった」と話していました。長い演奏活動の中で温め続けてきた音楽への愛が、今また花開いて別の姿を見せているのかもしれません。
そんな小山さんが12月の定期演奏会で演奏するのは、彼女がチャイコフスキーコンクールの本選でも演奏し、その後も何度も弾き続けている、チャイコフスキーのピアノ協奏曲第1番。この協奏曲は、チャイコフスキーが、友人でモスクワ音楽院院長だったニコライ・ルビンシテインのために書き始めるも、草稿の段階で、ルビンシテインから貧弱で演奏不可能だと非難をうけたという逸話が知られています。作品は結局別のピアニストに献呈され、その後世界で高く評価されて、ルビンシテインも演奏するようになりました。
小山実稚恵 ©ND CHOW
小山さんは、普段やさしくふんわりした空気をまとい、柔らかい語り口の中にも強い意志や音楽への愛情が感じられる方。ひとたびピアノに向かうと表情がキリリとし、パワフルな音楽を紡ぎ出します。壮大であたたかいロシアの大地を思わせるこの不朽の名作がもつ精神を、より深まった音楽への愛情とともに届けてくれるでしょう。
そして指揮の伊藤翔さんは、なんとちょうど小山さんがコンクールに入賞した1982年生まれ。小山さんと気鋭の伊藤さん、そして東京フィルは、どんな新鮮なチャイコフスキーを聴かせてくれるのでしょうか。
◆ Soloist's Profile
小山実稚恵 Michie Koyama(ピアノ)
小山実稚恵 ©Wataru Nishida
人気・実力ともに日本を代表するピアニスト。チャイコフスキー国際コンクール、ショパン国際ピアノコンクールの二大コンクールに入賞以来、今日に至るまで、コンチェルト、リサイタル、室内楽と、常に第一線で活躍し続けている。
全国6都市にて行われている"12年間・24回リサイタル・シリーズ"が、本年いよいよ12年目を迎える。
これまでに国内の主要オーケストラはもとより、チャイコフスキー・シンフォニー・オーケストラ、ロイヤル・フィル、BBC響、シンフォニア・ヴァルソヴィア、モントリオール響などと共演しており、フェドセーエフ、小澤征爾といった国際的指揮者との共演も数多い。
2011年の東日本大震災以降、被災地で演奏を行っており、2015年より自ら企画立案したプロジェクトが、仙台においてスタートした。
CDは、ソニーと専属契約を結んでおり、2017年5月に30枚目の
『バッハ: ゴルトベルク変奏曲』をリリース。
また、はじめての著作となる『点と魂と』~スイートスポットを探して~ が、KADOKAWAより2017年5月に出版される。
これまで、2005年度 文化庁芸術祭大賞、2013年度 東燃ゼネラル音楽賞本賞ならびにレコード・アカデミー賞、2015年度 文化庁芸術祭優秀賞ならびに第28回ミュージック・ペンクラブ音楽賞、2016年度芸術選奨文部科学大臣賞を受賞している。
関連リンク
・小山実稚恵 オフィシャルサイト ソニーミュージック
◆ NEXT ≫ Vol.4 牛田智大(ミハイル・プレトニョフ指揮 2018年2月定期演奏会
◆ 過去の連載記事
Vol.1 阪田知樹(渡邊一正指揮 6月定期演奏会)
Vol.2 イム・ジュヒ(チョン・ミョンフン指揮 9月定期演奏会)
<ご案内> 高坂はる香(こうさか・はるか/音楽ライター) |
イラスト:沙良志乃 |
2017年12月定期演奏会 小山実稚恵と伊藤翔が紡ぐチャイコフスキーの夕べ2017年12月5日(火)19:00開演(開場18:30)
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