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2024年3月8日(金)
―― マエストロ バッティストーニとの共演について
2021年5月定期演奏会終演後のバックステージにて
©上野隆文
「私自身はマエストロと定期演奏会でご一緒するのは少し久々となりますが、変わらず安定感があり明るい雰囲気で、お互いに今回も最初から構えることなくポジティブな空気でリハーサルすることができています。今回のプログラムはマエストロにピッタリというか、マエストロらしさが出せる選曲ですね。スケールも大きいですし、繊細な仕掛けが随所に見られます」。
―― 今回のプログラムについてお聞かせください
「前半と後半で雰囲気が大きく違うのがまず印象的です。前半のレスピーギがD-dur(ニ長調)で終わり、後半のカルミナ・ブラーナがD moll(ニ短調)で始まる。明・暗が浮かび上がってくる仕立てになっています。長調から短調に切り替わるので、聴いているお客様にとっても印象的だと思います。なかなかこういったプログラミングには出会わないですね。リハーサルの合間にマエストロともお話したのですが、そういった調性感を意識しているところはあるのかなと思います。
今回はどちらも中世の音楽を取り込んで書かれた作品ではありますが、例えば前半のレスピーギは今回は様式にこだわる感じではなく、響きや音色、楽曲に登場するさまざまな舞曲などのスタイルを『バッティストーニの音』で作り上げているといった印象です。マエストロが持っている音色を存分に楽しめる仕上がりになっているのではないかと思います」。
―― 『カルミナ・ブラーナ』はいかがでしょう。
カール・オルフ(1895-1982)
©Anne Kirchbach
「もちろんマエストロならではの音楽作りが随所に見られて、それも素晴らしいのですが、今回『カルミナ・ブラーナ』を取り上げた理由として、この作品が生まれた時代と今の時代に似通ったものがあると感じておられるように思います。
この曲は昔から冒頭部分がテレビなどでもよく扱われていて、派手な印象や『かっこいい』といったイメージでよく知られていると思うのですが、カール・オルフが生きた時代や、作曲家がどういう経緯でこの作品を書いたのか、楽曲に込めた思いや、オルフ自身の戦争体験、また1936年という、ヒトラーが台頭してきた頃のドイツで書かれたという背景を思うと、マエストロはオルフが作曲家ならではのやり方で時代に対抗しようとした思いも含めて取り上げたいと考えたのではないかと感じます」。
オットリーノ・レスピーギ
(1879-1936)
―― レスピーギもオルフと同じくファシズムとの関係を指摘され戦後、不遇の時代を過ごしました。
「そうですね。そのような共通点も意識して取り上げていると思います。
ですから、シンプルに楽曲を楽しく味わっていただきたいという思いはもちろんありますが、少し、そういった、時代や作曲家の込めた思いについて、今の時代に通じる部分を感じながら聴いていただけると嬉しいですね」。
―― コンサート全体を通じて聴くときは前半と後半の雰囲気の切り替わりも面白いところです
「前半、レスピーギの幸せな雰囲気のニ長調で終わって、後半オルフのニ短調で一度“突き落とされる”、そんな切り替わりも、現実を突きつけられるというか。人間はもちろん幸せな時代や景色を求めますけれど、幸せを求める部分と、現実とのはざまがありますよね。『カルミナ・ブラーナ』は冒頭(おお 運命の女神よ)の短調の響きで見せつけられ聴かされたものに対して、楽曲が進むにつれ、歌詞を見ても、楽曲の作りを見ても、いろいろなところでカール・オルフ自身が作品に込めた『人間とは何か、どういうふうに生きてほしい、どういう時代になってほしい』といった考えが浮かび上がります。その部分に共感しながら聴いていただけると良いかなと思います」。
―― 冒頭が有名な、短調の大迫力で始まる作品なので深刻な作品というイメージがありつつ、楽曲を知るにつけ楽しい部分とのギャップに驚かされる作品です。一つ一つのエピソードがどのように描かれるのかも興味深いです。
「今日のリハーサルでも、マエストロは例えば、女性が恋をして心が高揚しているシーンでヴィブラートをどのようにかけるか、クレッシェンド・デクレッシェンドとの組み合わせでどのように起伏をつけるか、そういった表現一つ一つに繊細なイメージを提示してくださるので、私たちもそれを表現するためにどうしたらいいかな、と考えるのも楽しいです。そういったところはオペラのマエストロの音楽作りだなと感じるところです。
作品にはオペラ的な作りの部分もある一方で、管弦楽的な考え方をしなければならないシーンもあります。ただ、合唱とソリストがいて、言葉があり、場面があり、といったところはオペラに通じる部分があるので、そういったところを大切にしながらリハーサルに臨んでいます。
先ほどお話した、作曲家がこの作品を書いた経緯や、その人生なども浮かべて聴いていただきたい思いも一つにはありますが、それはそれとして、せっかくの機会ですから大規模な編成でお届けするこの作品を率直に楽しんでいただけたらと思います」。
―― 作品の背景に明と暗があることで、より深みを感じることができると感じます。
「『カルミナ・ブラーナ』という作品の中にも明と暗がありますし、レスピーギと対比しても明と暗が浮かび上がる構成になっています。そのような対比がいろいろなところで出てくるのも面白いなと思います。
難しい時代になってきている今だからこそ聴ける響きを、お届けできるのではないかと思います」。
―― ありがとうございました。
3月定期演奏会
3月10日[日]15:00開演
Bunkamura オーチャードホール
3月13日[水]19:00開演
東京オペラシティ コンサートホール
3月15日[金]19:00開演
サントリーホール
指揮:アンドレア・バッティストーニ レスピーギ/リュートのための古風な舞曲とアリア 第2組曲 ¥15,000 ¥10,000 ¥8,500 ¥7,000 ¥5,500 ※( )…東京フィルフレンズ、WEB優先発売価格(SS席は対象外) 主催:公益財団法人 東京フィルハーモニー交響楽団
(東京フィル 首席指揮者)
ソプラノ:ヴィットリアーナ・デ・アミーチス*
カウンターテナー:彌勒忠史*
バリトン:ミケーレ・パッティ*
合唱:新国立劇場合唱団*
児童合唱:世田谷ジュニア合唱団*
オルフ/世俗カンタータ『カルミナ・ブラーナ』*
1回券料金
SS席
S席
A席
B席
C席
チケット料金
(\9,000)
(\7,650)
(\6,300)
(\4,950)
助成:文化庁文化芸術振興費補助金(舞台芸術等総合支援事業(創造団体支援))| 独立行政法人日本芸術文化振興会(3/15公演)
協力:Bunkamura(3/10公演)