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【2020年2月定期演奏会】カルメン役マリーナ・コンパラート インタビュー(2)


翻訳:本谷麻子/インタビュアー:シモーネ・トメイ(2019年10月11日公開)
出典:「E dove ti porterà prossimamente questo ruolo?」

憧れのオペラの舞台へ

――ロジーナ役でロンドン・デビュー、クラウディオ・アッバードが指揮した『エレクトラ』でフィレンツェ五月音楽祭デビューを果たしましたが、当時はどんな気持ちでしたか?

オペラの世界に足を踏み入れた当初の私の、一か八かという気分が混じったある種の無自覚は、今思い返すと自分でも信じられないほどです。
五月音楽祭で初めて受けたオーディションのあと、自宅に電話があって「シニョーラ・コンパラート」と話がしたいと言われた時は、てっきり母あての電話だと思い、母を呼んでしまいました。
受話器を受け取った母から、新制作の『エレクトラ』で侍女役の契約を結びたいという申し出があったことを知ったのです。
『エレクトラ』では、それまで何度も観客として眺めていた大きな舞台に自分が立っていることが信じられませんでしたし、何よりも、あの細身で機敏な男性が、全てを暗譜して指揮棒をとり、視線ひとつで舞台をリードしてしまうことに驚いたのを覚えています。

ロンドンでのデビューは、その数ヶ月後だったのですが、これも何の気なしに偶然受けたオーディションに合格したのがきっかけでした。
イギリスに向けて出発はしたのですが、本当に自分に起こっている出来事なのか信じがたい気持ちが募っていくばかりで……。

ところが蓋を開けてみると、ロジーナは私の当たり役の一つになって、イタリア国内はおろか、パリから北京、セビリアからブエノスアイレスにいたる各地で歌うことになりました。



自身を真摯に見詰め直す役作り

――メゾ・ソプラノは「ズボン役*」を演じる機会も多いですよね。女性の心と体で、男性役に対してどのようなアプローチをするのでしょうか?
ズボン役:男装する女性歌手の役柄のこと。『フィガロの結婚』ケルビーノ、『ばらの騎士』オクタヴィアンなどが有名。

〈ズボン役〉の数々は、若い頃のキャリアの一つの基盤になりました。体も細身で小柄でしたし、声もどちらかというとハイブリッド(ソプラノとメゾの中間)だったので、小姓や若者、若い恋人役をオファーされる機会が多かったのです。

長いこと私の十八番はケルビーノで、年月と共に役として成熟させていくことになりました。ケルビーノという役をより深め、彼の隠された側面をもことごとく生かしていくことができたのは、特にグラハム・ヴィック、ジョナサン・ミラー、マリオ・マルトーネといった素晴らしい演出家たちのおかげだと思っています。

女性として男性役を演じるにあたっては、まずは個人的に自分の思春期の体験を掘り起こすことから始めました。
同年代の男の子たちのことを思い出し、彼らの感情や、男女を問わず思春期の若者特有の情緒不安定な様を思い出していったのです。
あとは演出家との稽古で、歩き方、視線の送り方、レチタティーヴォのリズム、歌の陰影、声の機微などを作り上げていきました。



――オペラだけではなく、室内楽も歌っていますよね。

フランスの室内楽が、20世紀のものも含めてとても好きです。
私の声の特質や、歌い手としての感性にとてもあっていると感じています。ラヴェルは頻繁に歌っていて、2017年にはサン・カルロ劇場でラヴェルに捧げるリサイタルも開いています。
それから、特にマーラーやブラームスなど、ドイツの室内楽を歌う機会も多いです。もちろん我が敬愛するロッシーニの室内歌曲は、コンサートで何度も歌っています。

実はその他にも大好きなのがスペイン語の室内楽なんですよ。
デ・ファリャからグラナドス、グアスタヴィーノからモンサルバーチェも歌いますし、詩人フェデリコ・ガルシア・ロルカの民謡の数々も歌っています。
ギタリストのマルコ・ミナの伴奏で、ロルカに捧げた「プレルディオス・イ・カンシオネス」というCDを出したばかりです。


(Part 3 へ続く)



(翻訳者プロフィール)
本谷麻子(ほんや・あさこ)/ 東京外国語大学大学院博士課程前期修了。イタリア政府奨学生としてヴェネツィア大学に留学。言語学修士。2000年よりフリーランスのイタリア語通訳・翻訳業。オペラ・演劇・映画関係の通訳多数。オペラの舞台字幕も多く手がける。

【2月定期演奏会】

オペラ演奏会形式
ビゼー/歌劇『カルメン』


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2月19日[水]19:00開演
東京オペラシティ コンサートホール


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2月21日[金]19:00開演
サントリーホール


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2月23日[日・祝]15:00開演
Bunkamura オーチャードホール


指揮:チョン・ミョンフン
カルメン(メゾ・ソプラノ):マリーナ・コンパラート
ドン・ホセ(テノール):キム・アルフレード
エスカミーリョ(バリトン):チェ・ビョンヒョク
ミカエラ(ソプラノ):アンドレア・キャロル
スニガ(バス):伊藤貴之
モラレス(バリトン):青山貴
ダンカイロ(バリトン):上江隼人
レメンダード(テノール):清水徹太郎
フラスキータ(ソプラノ):伊藤晴
メルセデス(メゾ・ソプラノ):山下牧子
合唱:新国立劇場合唱団
児童合唱:杉並児童合唱団
管弦楽:東京フィルハーモニー交響楽団



助成:文化庁文化芸術振興費補助金(舞台芸術創造活動活性化事業)、独立行政法人 日本芸術文化振興会
   公益財団法人 花王芸術・科学財団、公益財団法人 三菱UFJ信託芸術文化財団、公益財団法人 ローム ミュージック ファンデーション(2/21)
後援:駐日韓国大使館 韓国文化院、在日フランス大使館/アンスティチュ・フランセ日本
協力:Bunkamura(2/23)

主催:公益財団法人 東京フィルハーモニー交響楽団

公演カレンダー

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