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【2020年2月定期演奏会】カルメン役マリーナ・コンパラート インタビュー(3)


翻訳:本谷麻子/インタビュアー:シモーネ・トメイ(2019年10月11日公開)
出典:「E dove ti porterà prossimamente questo ruolo?」

歌手人生のターニングポイント―カルメン役デビューへ

――2017年ヴェネツィアでカルメン役のデビューを果たしました。
この役を演じるにあたって、どういう難しさがあり、どんな準備をしたのでしょうか?


カルメン役のデビューは、私の歌手人生の中でも非常に重要な出来事の一つでした。
出演が決まったと知って、以降、全ての時間をこの役の準備に費やしました。
フランスに行って、コーチのピアニストとフランス語の発音を学び直し、この役の歌唱技術を掘り下げることに多くの時間を割きました。
4ヶ月間ずっとカルメンを学ぶこと以外はしなかったと言えるほどでしたね。

この試みは、私にとってはやはり怖いものだったのです。
実際ほんの数ヶ月前までモーツァルトを歌っていた私のレパートリーとは全く異なる役柄ですし、ロマの体の奥底から込み上げる情念と、私が受けてきたあくまでも「クラッシック」な人格形成はまったくかけ離れたものだったから、というのもあります。

ですが、音響の観点からも芸術的な方向性からも「適切な」劇場で、しかもマエストロ・チョン・ミョンフンのような指揮者のもとで、この役のデビューを果たせたのは、私にとっての幸運でした。
チョン・ミョンフン氏は、一方では私の歌唱の特徴に寄り添い、ベルカントを歌ってきた私の声楽的な精密さを最大限に活かしてくれましたし、その一方で、私自身が自分の中にあるとは思っていなかった悲劇性を見つけ出すきっかけを与えてくれました。

歌い手人生で最も素晴らしいデビューの一つでしたし、こうして全力を尽くしたことが認められて、フィレンツェと2020年のカルメン出演に結びついたのだと思います。


――ロール・デビューからほぼ3年、カルメンに対する見方や感じ方は変わりましたか?

ビエイト演出『カルメン』

昨年フィレンツェのプロダクションを再演した際には、状況が一変していました。
プロダクションのメインキャストは私でしたし、演出をすでに熟知していましたし、声楽技術の心配は全くありませんでしたし、五月音楽祭劇場の音響にも慣れていました。
そこで、稽古に入る数ヶ月前から、本人が遠慮するので名前は伏せますが、その方とドラマツルギー(作劇法)の観点から、そして純粋に見た目がどうあるべきなのか、カルメンという人物像を掘り下げる作業に専念しました。

何年も前にケルビーノを演じるにあたって、私は自分の身体から作り上げる必要があったのですが、その時と同じように、今回はカルメンという肉体を自分の中に見出していく必要がありました。
この点に関しては、ダンサーであり女優でもある友人のジェーン・タイヤーと長い時間をかけて、動きや所作について、歩き方、立ち止まり方、座り方、視線、必要ならば踊りも学びました。

今ですか?今は、原点に戻っているところです。
もう一度楽譜を取り出して、歌詞ごとに読み込んで、これまでに書き重ねてきた声楽や音楽に関するものや、演出や背景やドラマツルギーに関する指示のメモを読み返しています。
この3年間に得てきた多くの刺激をさらに結合し昇華させたものを見つけられればと思っています。



自由を追い求める劇的な”カルメン”

――女性として、カルメンはあなたの人となりや性格に近いのでしょうか、遠いのでしょうか?

まずはカルメンとは誰なのか、ということを知る必要があるでしょう。
それこそ何度も演じられ、積み重ねられてきた人物ですから。
彼女の皮肉屋なところや、率直なところ、自由への欲求は私自身と大いに重なるところがあると思います。
自分の強みや、カード占いの場面でわかるように、自らの運命を承知した上で、その強みや運命を身の内に取り込んでしまう力、最後のデュエットでの決然とした様など、ドラマチックな彼女の側面にも今や馴染んできました。



――今後はこの役をどこで歌う予定ですか?

2020年2月に東京で歌う予定です。東京フィルハーモニー交響楽団がシリーズで開催するコンサート形式の公演に、指揮のチョン・ミョンフン氏が私を指名してくださって出演することになりました。
3月と4月にはカリスト・ビエイトの素晴らしい演出のプロダクションに再度出演します。

   

END


(翻訳者プロフィール)
本谷麻子(ほんや・あさこ)/ 東京外国語大学大学院博士課程前期修了。イタリア政府奨学生としてヴェネツィア大学に留学。言語学修士。2000年よりフリーランスのイタリア語通訳・翻訳業。オペラ・演劇・映画関係の通訳多数。オペラの舞台字幕も多く手がける。

【2月定期演奏会】

オペラ演奏会形式
ビゼー/歌劇『カルメン』


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2月19日[水]19:00開演
東京オペラシティ コンサートホール


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2月21日[金]19:00開演
サントリーホール


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2月23日[日・祝]15:00開演
Bunkamura オーチャードホール


指揮:チョン・ミョンフン
カルメン(メゾ・ソプラノ):マリーナ・コンパラート
ドン・ホセ(テノール):キム・アルフレード
エスカミーリョ(バリトン):チェ・ビョンヒョク
ミカエラ(ソプラノ):アンドレア・キャロル
スニガ(バス):伊藤貴之
モラレス(バリトン):青山貴
ダンカイロ(バリトン):上江隼人
レメンダード(テノール):清水徹太郎
フラスキータ(ソプラノ):伊藤晴
メルセデス(メゾ・ソプラノ):山下牧子
合唱:新国立劇場合唱団
児童合唱:杉並児童合唱団
管弦楽:東京フィルハーモニー交響楽団



助成:文化庁文化芸術振興費補助金(舞台芸術創造活動活性化事業)、独立行政法人 日本芸術文化振興会
   公益財団法人 花王芸術・科学財団、公益財団法人 三菱UFJ信託芸術文化財団、公益財団法人 ローム ミュージック ファンデーション(2/21)
後援:駐日韓国大使館 韓国文化院、在日フランス大使館/アンスティチュ・フランセ日本
協力:Bunkamura(2/23)

主催:公益財団法人 東京フィルハーモニー交響楽団

公演カレンダー

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