ホーム > インフォメーション > コンサートマスター 依田真宣が語る チョン・ミョンフン指揮メシアン『トゥランガリーラ交響曲』

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2024年6月21日(金)


――いよいよマエストロチョン・ミョンフンとの『トゥランガリーラ交響曲』です。リハーサルの印象をお聞かせください。

「マエストロとのリハーサルはいつも穏やかな雰囲気です。初日のリハーサルでは『この作品(トゥランガリーラ交響曲)は指揮するのはそんなに難しくない、演奏者はとても大変なことをやっているけれど』と仰っていたのですけれど、実際リハーサルが始まってみると、もちろん「振る」(=指揮をする)のはそんなに難しくないのかもしれないですが、マエストロが経験されてきたことや、直接メシアン先生がお話しなさったこと、音楽の作品を通していろいろなことを伝えてくださるということを強く感じます。それはもう演奏していて本当に『全部ついていく』というか、マエストロに安心して音楽を導いていただく瞬間が多いなと思います」。



――マエストロが『トゥランガリーラ交響曲』を指揮している姿は淡々として見えます


「マエストロは『この曲はどんな指揮者でもできる』なんておっしゃるのですが、でも絶対そんなことはないとみんな思っていますよね」。



――奏者として、今回のようにロマン派や古典などの作品と違う近現代の作品を演奏する上で心がけていることはありますか


「ロマン派の作品等は特に、感情をどういうふうに移入して音を作っていくかといったところが大切な部分になると思うのですが、近現代の作品になると……今回の作品に関して演奏していて面白いと思ったのは、非常に機械的ではあって『縦のリズムをしっかり揃えて』といった注意点はあるのですが、同時に非常にパッションの強い音楽なので、エネルギーや熱、熱い気持ちをかなり音に出さないと伝わりにくい作品なのかなと思います。ただ音をきちっと“縦”を揃えて演奏するだけでは完成しない。いろいろな考え方があると思うのですが、とにかくいろいろな箇所にエネルギー、パッションがないと成立しない作品だと、弾いていて思います」。



――フランスの作品というとキラキラしたサウンドをイメージしていましたが、実際にリハーサルで聴くと非常に“太い”サウンドが届いてくると感じました。


「マエストロの身体から出てくる音楽が自然とそういう方向へ導いていくのだと思います。それぞれの場面で必要な表情、味付け、どんな音を出してほしいといった部分はもうマエストロを見ていればわかるというか」。



――楽曲に盛り込まれたテーマは“愛のテーマ”や“トリスタン伝説”といった抽象的・空想的なものが多いですが、弾いていて具体的にイメージが浮かぶような場面はあるでしょうか。


「すごく喜怒哀楽が激しいですね。作品の中でもそうですし、“愛のテーマ”も、もっとリラックスして感情移入できるようなハーモニーかなと思いきや、やはりそこはメシアンのセンスというか、独特の響きを使った常人にはなかなか理解できない響きの世界の中での愛の表現だと感じます。
 それはまた、演奏するホールによってきっと聴こえ方も違うのだろうなと思いますし、今はリハーサル会場での響きでの重なりの聞こえ方で聴いていますが、それぞれのホールで、音の響きの余韻や倍音がどこまで聴こえるかということをマエストロも非常に大切にされています。

 実は、この作品を書いた時についての文章を読んでいたら、メシアンが『トゥランガリーラ交響曲』をちょうど今の私と同じ年齢で書いていたことがわかりました。凄い偶然ですよね。。でも自分にはこんな作品を書けるわけがない、やはり天才は違うなぁ等、色々なことを考えながら作品に触れています。マエストロはリハーサルで本当に沢山のエピソードをお話ししてくださるのでそれも本当に貴重な機会です」。



――聞いたことのないような音がする作品だと思いますが、それでもこの曲に魅せられてしまう人がいるようです。どのあたりに魅力があるのでしょう。


「これだけの楽器を一気に鳴らすということもすごい聴こえ方がしますし、特徴的だと思います。たとえばティンパニがない一方で打楽器はこれだけ数があって、非常に特殊な編成の作品です。また何といっても特徴的なオンド・マルトノや、ピアノとチェレスタの重なるアンサンブル。その楽器がみんな一堂に会することはなかなかないです。
 マエストロはリハーサルで『オンド・マルトノの音をよく聞いて』といったことをおっしゃるのですが、我々もオンド・マルトノに音程を合わせたりバランスを取って演奏する機会は日常なかなかありません。私自身マルトノとの共演は初めてです」。



――(オンド・マルトノとのアンサンブルは)難しいのでしょうか。サウンドに捉えどころがないというか。


「音程感や響きも独特ですし、それを聴きながら自分に聴こえるところで、うまく調整しながら音を作っていくという作業はとても珍しい機会です。研ぎ澄まされていくというか、非常に耳を使います。面白いです」。



――そのような作品で、マエストロ チョン・ミョンフンとの「第1000回」という節目を含むコンサートとなります。


「私自身が1回目(の定期演奏会)から参加していたわけではないですけれど、でも数字として1000回というのは本当にすごい数字だと思うので、そういう回数を重ねてきた記念碑的な演奏会になると思いますし、何よりもそれをマエストロチョン・ミョンフンと、貴重な作品を通して、お客様の前で演奏できるということは本当に演奏する側もとても嬉しいです。お客様とそういう時間、1,000回目の時間を共有できるのをとても楽しみにしています」。



――リハーサルの最終日と本番の初日はBunkamuraオーチャードホールで行われます。


「先ほど会場によって響きが全然違ってくるとお話しましたが、オーチャードホールはもちろん、東京オペラシティコンサートホールは舞台の横幅が少し狭かったり、ホールによって条件が違ってきます。その中で、耳の……音の聴き方が、メシアンは特にそうなのかもしれないですが、私たちもちょっとこれまでと違うという感じがします。
 『トゥランガリーラ交響曲』は大きな編成で音が“グワーっ”と重なり合うのですが、その中でも何が大事か、どういうところを聴いてほしいかといったことをマエストロはパッと全部おっしゃってくださいます。そうすると私たちもこの中でこれを聴く、聴こえるんだとわかる瞬間がある。スコア上はもちろん分かっているのですけれど、でも、その音が実際に重なった中でどういう風に聴こえてくるか、それを聴かせるためにどうしたらいいか、そういうことをマエストロは全部分かってらっしゃるので、リハーサルではそれをどう創り上げて聴かせるかということが行われています」。



――聴き慣れているはずの楽器が、こんな風に重ねるとこんな音がする、といった驚きがあります。


「楽器の使い方が、本当にメシアン独特の使い方、響かせかたですよね。ハマる人は、ハマるんだろうと思います。
 楽団メンバーのなかにも何人かメシアン・マニアがいらっしゃいます。お客様も、今回の定期を聴いて、またそういう人が増えたり、もともとのマニアの方がさらなる追究に走る、というのはいいんじゃないかなと思います。オンド・マルトノのような楽器を生で見て聴ける機会ですし、それも楽しんでいただけたらいいですね。そして、その全体としてメシアンが残した“愛の讃歌”を含む『10の楽章』からなるそれぞれの音楽絵巻を堪能しながら、80分を一気に聴いてもらえたらと思います」。



――ありがとうございました




2007年1月の東京フィル定期『トゥランガリーラ交響曲』より


6月定期演奏会 

チケットを購入
6月23日[日]15:00開演
Bunkamura オーチャードホール
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6月24日[月]19:00開演
サントリーホール
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6月26日[水]19:00開演
東京オペラシティ コンサートホール

指揮:チョン・ミョンフン
(東京フィル 名誉音楽監督)
ピアノ:務川慧悟
オンド・マルトノ:原田 節


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メシアン/トゥランガリーラ交響曲
公演時間:約80分(休憩なし)


本公演「メシアン:トゥランガリーラ交響曲」は休憩がございません。
また、全10楽章(約80分)を続けて演奏いたしますので、開演後にご到着されたお客様、一度ご退席されたお客様は客席内にお入りいただくことができないため、ホワイエのモニターでのご鑑賞となります。
お時間に余裕を持ってご来場くださいますようお願い申し上げます。


1回券料金

  SS席 S席 A席 B席 C席
チケット料金

¥15,000

¥10,000
(\9,000)

¥8,500
(\7,650)

¥7,000
(\6,300)

¥5,500
(\4,950)

※( )…東京フィルフレンズ、WEB優先発売価格(SS席は対象外)


主催:公益財団法人 東京フィルハーモニー交響楽団
助成:文化庁文化芸術振興費補助金(舞台芸術等総合支援事業(公演創造活動))| 独立行政法人日本芸術文化振興会
協力:Bunkamura(6/23公演)
後援:在日フランス大使館アンスティチュ・フランセ

公演カレンダー

東京フィルWEBチケットサービス

お電話でのチケットお申し込みは「03-5353-9522」営業時間:10:00~18:00 定休日:土・日・祝