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2024年6月22日(土)
リハーサル2日目を終えた、ヴィオラ首席奏者・須田祥子がマエストロとのリハーサル、“特等席”での演奏について語りました。
――マエストロチョン・ミョンフンとのリハーサルについてお聞かせください。
東京フィル名誉音楽監督チョン・ミョンフン
©上野隆文
「この公演に先立って1公演、プロコフィエフ『ロメオとジュリエット』とサン=サーンス『オルガン付き』の公演があり(6/16、福井県立音楽堂 ハーモニーホールふくいでのパイプオルガン20周年記念公演)濃密なリハーサルがとても印象に残っています。すっばらしかった。久しぶりにマエストロとプロコフィエフの『ロメオとジュリエット』を演奏して、この曲はマエストロの遺伝子が自分に組み込まれているという実感があります。
マエストロチョンとトゥランガリーラ交響曲をご一緒するのは今回が2回目。前回の東京フィル公演(2007年1月定期演奏会)でもご一緒しました。マエストロとしかこの作品を演奏したことはありません。前回17年前というとマエストロはまだ50代。当時と比べるとマエストロ自身の作品との向き合い方が違ってきているという印象はあります。マエストロがリハ―サル初日に仰っていましたが『この曲はオーケストラのみんなに申し訳ないくらい指揮を振るのは簡単。若い指揮者にもできる』と。こちらは「いやそんなことないだろう」と(笑)
メシアンの監修のもと録音された
『トゥランガリーラ交響曲』
(ピアノ:イヴォンヌ・ロリオ、
オンド・マルトノ:ジャンヌ・ロリオ、
パリ・バスティーユ管(1990年10月録音))
マエストロと一緒にこの曲を演奏するとなるとCD業界もちょっと盛り上がりを見せているようで、メシアン先生と一緒に若いマエストロが写っているジャケット写真のCDが話題になったりしていますよね。どこの記事だったか『作曲家の立ち合いのもとで録音される』スタイルでの録音が最初に行われたのが、このマエストロ チョンとパリオペラ座バスティーユ管との『トゥランガリーラ交響曲』だったという記事を読みました。それまでは作曲家の立ち合いや監修なしに録音されるのが普通だったようです。既に没している作曲家の録音が主流だったということもあるかもしれませんが、それほど画期的な作品で、それほど歴史的な作品なのだと理解しています」。
――ヴィオラはオンド・マルトノのすぐ横で演奏しています
「今回、私が一番面白く感じているのは、真横にオンド・マルトノがあること。すぐ横から音が聞こえてきますし、楽器がすぐ隣にあるのでマジマジと眺めて、原田節さんにあれこれ質問したりしています。オンド・マルトノを弾いている姿が全部見えるので、鍵盤を使っている時と、鍵盤を使わずにリングとリボンを動かしている時とがあるから、『それはなんの違いがあるんですか?』なんて。銅鑼や弦が張ってあったりするのは、電気的なものを使いつつ、アコースティックな響きをつくりたいという。
色々お話を伺っているうちに、『この楽器は人を癒すことをめざして作られた楽器なのだよ』ということを伺いました。楽器の組み立ても収納も本当に面白くて、フランス人の合理的な国民性が現れているといったようなお話も伺いました。
真横にいないと知ることのできないオンド・マルトノの知識がこの数日でものすごく増えていまして、前回の演奏時にも同じ場所に座っていた筈なのですが、当時は若かったのであまり根掘り葉掘り尋ねることはできなかったのかもしれませんが
」。
――ヴィオラはオンド・マルトノとのユニゾンが多いそうですね。
「じつはオーケストラ側にはあまり聴こえてこないのですが、第2楽章の終盤、十六分音符の跳躍が続くところでまったく同じ音を演奏しています。『愛のテーマ』の部分も、弦楽器とオンド・マルトノとのアンサンブルになるのですが、マエストロからは『オンド・マルトノの音色に寄せて、ヴィブラートも同じように』という指示が出ています。オンド・マルトノはヴィオラと音域が似ているかもしれません。
メシアンがこの作品にピアノとオンド・マルトノをなぜ使ったのか、ということについて考えていまして、このオンド・マルトノという楽器が“癒しの音”を出すということから考察すると、全体としては破壊的な音響が書かれている中でそこに究極の“癒し”を盛り込んだらどうなるのか、という実験的な考えもあったのかな、と。
『破壊の中に、常に寄り添う癒しがここにある』という。それがどこまで効果的であるのかをメシアンは試していたのかもしれないと。
リハーサル中、私は常にオンド・マルトノの音に癒されていて。特等席でアルファ波を浴びています。究極の癒しと激しさとの共存がこの作品の特徴なのかなと思います。“愛のテーマ”等も、究極の愛、無償の愛という感じです。メシアン先生は蚊も殺さないような人だったと17年前にマエストロは仰っていました」。
――今回は「1000回」の大台に乗る定期となりました。特別な節目の公演に『トゥランガリーラ交響曲』を取り上げることについて
「マエストロが東京フィルにとって特別な存在で、マエストロにとっても特別な作品を取り上げるということですよね。東京フィルの歴史が積み重なった1000回。他の人が振るよりもマエストロの指揮で取り上げることに価値があるわけですよね。
『トゥランガリーラ交響曲』でのオンド・マルトノの効果は大きくて、オーケストラの破壊的な音の後にマルトノの音が入ると“連れていかれる”ような感じがします。ピアノの務川慧悟さんもすばらしいですね。チェレスタの岡本さんもパリで学ばれていたので、あの、舞台前方に金属的な音の楽器が並ぶのが良いですね。あの楽器編成は他の人には思いつかなかったでしょうし、メシアンならではの特別な面白さがあるのだと思います。
今回並んで弾く首席奏者の髙平さんはこの定期で退団されます。首席としてお互いに非常にリスペクトしてきた演奏者ですので、ひとつの時代が終わるのかなと感じています。そして上の世代の奏者が置いて行った遺伝子をどうやって後から来る人に伝えていくのかは、オーケストラにとって大切な要素ですよね」。
6月定期演奏会
6月23日[日]15:00開演
Bunkamura オーチャードホール
6月24日[月]19:00開演
サントリーホール
6月26日[水]19:00開演
東京オペラシティ コンサートホール
指揮:チョン・ミョンフン
(東京フィル 名誉音楽監督)
ピアノ:務川慧悟
オンド・マルトノ:原田 節
メシアン/トゥランガリーラ交響曲
公演時間:約80分(休憩なし)
本公演「メシアン:トゥランガリーラ交響曲」は休憩がございません。
また、全10楽章(約80分)を続けて演奏いたしますので、開演後にご到着されたお客様、一度ご退席されたお客様は客席内にお入りいただくことができないため、ホワイエのモニターでのご鑑賞となります。
お時間に余裕を持ってご来場くださいますようお願い申し上げます。
1回券料金
SS席 | S席 | A席 | B席 | C席 | |
---|---|---|---|---|---|
チケット料金 | ¥15,000 |
¥10,000 |
¥8,500 |
¥7,000 |
¥5,500 |
※( )…東京フィルフレンズ、WEB優先発売価格(SS席は対象外)
主催:公益財団法人 東京フィルハーモニー交響楽団
助成:文化庁文化芸術振興費補助金(舞台芸術等総合支援事業(公演創造活動))| 独立行政法人日本芸術文化振興会
協力:Bunkamura(6/23公演)
後援:在日フランス大使館/アンスティチュ・フランセ