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2025年6月25日(水)
7月定期演奏会にはアソシエイト・コンダクター チョン・ミンが東京フィル定期に3回目の登場でオール・チャイコフスキー・プログラムを取り上げます。チャイコフスキーを親しい友人のようだと語るマエストロに聞きました。
――東京フィル定期に3回目の登場です。東京フィルについて、これまでの共演から受ける印象を教えてください。
5月7日にオンラインで行われました
東京フィルの皆さんはいつもとても熱心で親切だと感じています。音楽的にも、プロフェッショナルとしても、それ以外の面でも感謝しています。あらゆる重要な側面において居心地が良く、仕事をし、音楽を作るのにとても良い場所だと感じています。毎回とても幸せで、今回もとても楽しみにしています。
――前の2回の登場の時(2019年、2020年。いずれも急遽代役としての登場)と、今回の登場ではご自身の感覚は異なっているでしょうか?

2019年6月午後のコンサートより ©上野隆文
以前の共演のときから感覚はもちろん変わっていますが、でも、それは主に時間の経過から生じる違いだと思います。私たちは常に、偉大な先人たちの作品に取り組んでいて、時を経て同じ作品に戻ってきても、音楽は同じまま。同じ音符、同じ楽譜。でも私たちが変化するから違って見えるのです。オーケストラとの関係でも同じです。今回は定期演奏会のプログラムに招待していただき、光栄です。確かに特別な責任を感じていますが、それは副次的なものです。主な負担と責任は、純粋に良い音楽を創ることだけです。
特に私が若く指揮を始めた頃は、みんな父(指揮者チョン・ミョンフン)のことを尋ねてきました。「父のせいでプレッシャーを感じますか?」と。それはごく自然な質問ですが、実際に指揮を始めた時、私自身は指揮者として父のことでそれほどプレッシャーを感じていないことに気づきました。それは音楽そのものから大きなプレッシャーを感じているからだろうと思います。
――マエストロ自身もヴァイオリンを学ばれたそうですね。ヴァイオリンを弾く人にとってチャイコフスキーの協奏曲はどのような存在でしょうか?
私が初めてこの作品を聴いたときのことをお話します。本当に圧倒的な経験でしたし、それが私がヴァイオリンを始めた理由の一つです。ハイフェッツの独奏、フリッツ・ライナー指揮の録音でした。ブラームスとチャイコフスキーの協奏曲が収録されていて、どちらの曲も私に信じられないほどの影響を与えました。当時はまだ幼かったのですが、特にチャイコフスキーの協奏曲の第1楽章で、独奏ヴァイオリンが初めて登場した時は本当に圧倒される瞬間でした。
のソリスト、神尾真由子 ©Makoto Kamiya
――ソリストの神尾真由子さんとの共演について
次回が初共演ですが、経歴を拝見しても、東京フィルのソリストとして登場するという点でも素晴らしいヴァイオリニストに違いないと確信しています。彼女の作品の解釈に触れ、コラボレーションできることをとても楽しみにしています。
――チャイコフスキー「交響曲第6番『悲愴』」について、個人的な思い出は?
この作品を私は、私自身にとって準備ができてから演奏しようと考えていました。この作品のキャラクターや内容を私は愛していて、だからこそ安易に取り組むことを避けたかった。そして、そうしてよかったと思っています。皆さんの期待を高くしすぎたくはないのですが、機が熟したように感じていますし、取り組めることを嬉しく思います。
――この作品を書いた直後にチャイコフスキーが亡くなったことから、作曲家が自身の死を予感していた、という人がいます。

1893年、ケンブリッジ大学で
名誉博士号を授与された際の
チャイコフスキー(1840-1893)
チャイコフスキーが自分の死を予見していたかどうかはわかりません。ご存知の通り私はチャイコフスキーと彼の音楽が大好きです。多くの人が好きですよね?とても親密で個人的で正直で、親しい友人のように感じています。彼の音楽で表現されるものは非常にパーソナルで、一緒にいて心地よく感じる人と人生について語り合うような内容です。彼の音楽を聴き、研究し、その心の奥底にある感情を分かち合うことは、とても親しい友人と話しているような感覚があります。
実際のところチャイコフスキーが亡くなる前にこの作品を書けたことを、私は心から嬉しく思うのです。もしこれが未完成だったら、とても悲しいことだったでしょう。皆さんご存知の通り、チャイコフスキーは困難で苦しい人生を送りました。想像することしかできませんが、だからこそ、彼が亡くなる前にこの作品を書き、その内面を表現できたことを心から嬉しく思います。彼が人生のすべてをこれに告白したかどうかは、わかりませんが。この種の類推には限界があると思いますし。
――この曲は極めて感情的な部分が多いと感じられます。オーケストラを鼓舞するうえでマエストロ自身が心がけていることがあれば教えてください。
常に楽譜と音楽についてです。オーケストラにインスピレーションを与え、推進するために、ただ作品がどのような音になるべきか、そしてどのように聞こえるべきかというビジョンをオーケストラと共有し、共に作り上げていく。常にそれが目標です。
――マエストロが監督を務めている韓国の江陵市交響楽団について少しお聞かせください。

日の出の名所として知られる江陵の人気ビーチ「正東津」
江陵市は東海岸、ソウルからは約1時間半の距離です。ここにいられてとても幸せです。春夏秋冬、アウトドアを楽しめる場所です。ぜひ遊びに来てみてください。暖かい季節には、韓国で最高のハイキングと最高の山が、夏には最高のビーチが、秋は紅葉、冬は平昌でスキー。素晴らしい場所です。オーケストラとも素晴らしい関係を築いています。ここに来て4年が過ぎましたが、4年も経ったなんて信じられません。住むにも働くにも完璧な場所。私はこの地域の人々がとても好きです。
6月の初めに、韓国のバレエ団、韓国の伝統舞踊のグループと共同でストラヴィンスキーの『春の祭典』を上演しました。とても興味深いプロジェクトだと思います。
――東京フィルのお客様へメッセージを。
東京フィルと日本の観客の皆様にお会いできることを楽しみにしています。チャイコフスキーへの共通の、普遍的な愛を通じて心の交流ができると願っています。チャイコフスキーと彼の音楽への愛、そしてもう一つ伝えたいのは、私は日本と日本の皆さまが大好きだということです。インタビューでは誰もが必ずこう言いますが、本当にそう思っているから言うんです(笑)。
――ありがとうございました。

前回の東京フィル定期登場は2020年10月、
ベートーヴェン「ヴァイオリン協奏曲」と交響曲第5番『運命』の組み合わせでした ©上野隆文
7月定期演奏会
7月17日[木]19:00開演
サントリーホール
7月18日[金]19:00開演
東京オペラシティ コンサートホール
7月20日[日]15:00開演
Bunkamura オーチャードホール
指揮:チョン・ミン
(東京フィル アソシエイト・コンダクター)
ヴァイオリン:神尾真由子*
チャイコフスキー/ヴァイオリン協奏曲*
チャイコフスキー/交響曲第6番『悲愴』
【聴きどころ】アソシエイト・コンダクターのチョン・ミンは、韓国・江陵市交響楽団音楽監督を務めるなど、近年活躍の幅を大きく広げている。東京フィルの定期は3回目。過去の2回(2019年6月、2020年10月)は、「急遽の交代」によるため、今回が満を持しての登場となる。曲目は、チャイコフスキーの名曲2曲が並ぶ。ヴァイオリン協奏曲のソリストは、2007年第13回チャイコフスキー国際コンクール優勝の神尾真由子。音楽家としてのキャリアを着実に重ね、ますます好調の神尾が「一番の得意曲」とする協奏曲。哀愁を帯びた旋律を心に語りかけるように歌い、超絶技巧を輝かせながらオーケストラと火花を散らす演奏になろう。交響曲第6番『悲愴』は、東京フィルの実力が存分に発揮されるはずである。
文:柴辻純子(音楽評論家)




















