ホーム > インフォメーション > チェロ首席奏者 渡邉辰紀が語る 1月定期演奏会

インフォメーション

2023年1月26日(木)



――3日間のリハーサルを終えて。今回のプログラムについて教えてください。


チェロ首席奏者 渡邉辰紀 ©上野隆文


 「実は、恥ずかしながら私は30代なかばくらいまで『ブルックナーってどこがいいんだろう』とずっと思っていたんです。そんな時期にドイツで電車に乗ってぼーっと外の景色を眺めていたら、ふと『あ、これってブルックナーじゃないか!』と思ったんです。ブルックナーの交響曲はものすごい転調や不思議な和音をたくさん使っているのですが、そういうことに意識を向けるよりも景色を見るように音を浴びるみたいな聴き方をすればいいのかなと感じて、それ以来好きになりました。今回のリハーサルを経てマエストロにもっと色々なことを気づかされ、さらに偉大な作曲家だと思うようになりました」。


――どういうところに偉大さを感じますか?

 「自然が見えてくるという感じでしょうか。10年くらい前に『アース』という映画がありました。世界中の自然ばかり映している映画です。鯨がしぶきをあげるとか、フラミンゴが100万羽くらい飛び立つとか、太陽がじりじり照り付けるとか。そういう世界とリンクするような気がします。ブルックナー本人は自然を描写しているつもりがあるのかないのか、そこはちょっとわかりませんが、そういうふうに『自然が思い浮かぶ』という点では、私はブルックナーの音楽はベートーヴェンの「田園」を超えているんじゃないか、とまで思います」。



――シューベルトについてはいかがでしょう。



 「『未完成』はブルックナーと同様に『自然』を表現していると思うのですがその手法がちょっと異なります。冒頭は陽が出はじめたばかりのまだ暗い、霧が漂っている様子をチェロとコントラバスで表して、そこに風が吹いてきて木々がザワザワしだす様子はヴァイオリン、そのあとの描写がオーボエから始まり、トゥッティ(全奏)につながっていく。
ブルックナーは大パノラマで見ているようなそんなイメージ、シューベルトは自分自身が自然と一体化いるようなイメージです」。



――チェロ奏者として“おいしい”ところや、難しいというところはありますか?

 「どちらの曲も他の指揮者だったら“おいしい”のかもしれないですが、マエストロチョンの指揮ですと緊張してそれどころではありません(笑)。シューベルトとブルックナー、どちらの曲もチェロにとっては冒頭がやっぱり肝心ですね。そこで本当に曲の雰囲気を醸し出せるかというところです」。



――どちらもウィーン・ドイツの作曲家の系譜にありますが、ベートーヴェン、シューベルト、ブルックナーというドイツ音楽の流れで見たときどんな発展を感じますか?

 「シューベルト、ブルックナー、もちろん二人ともベートーヴェンをすごく勉強していたらしいので影響は強く受けているのでしょうけれども、二人とも独自のものを持っているので発展というよりは、それぞれがまた違った自分の世界を確立していると感じます」。



――ではワーグナーの影響は?

 「どうでしょう。私はあまり感じないですね。強いていえば、ブルックナーのダイナミックさには通ずるのかもしれません。ワーグナーのほうは、ブルックナーと比べてより人間的というか、『自然』ではないというとちょっと言い過ぎかもしれませんが、『自然』よりは人間の本当に素晴らしいところと醜いところを全て表現している、そんな音楽だと思います」。



――コンサートにお越しのお客様にメッセージをお願いします。

 「シューベルト『未完成』は、美しい旋律や目まぐるしい転調などを純粋に楽しんでいただきたいです。いっぽうブルックナーの交響曲第7番は、そんなことは考えずにただ音を“浴びる”ように作曲家の世界に浸っていただきたいと思います」。




 Ⓒ上野隆文




【特別記事】

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 ▷ 【楽団員インタビュー】チェロ首席奏者 渡邉辰紀
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 ▷ 【楽団員インタビュー】フルート首席奏者 神田勇哉
 ▷ 【楽団員インタビュー】オーボエ首席奏者 荒川文吉
 ▷ 【楽団員インタビュー】ファゴット首席奏者 廣幡敦子
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 ▷ 【楽団員インタビュー】トランペット首席奏者 古田俊博
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1月定期演奏会 

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1月26日[木]19:00開演
東京オペラシティ コンサートホール
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1月27日[金]19:00開演
サントリーホール
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1月29日[日]15:00開演
Bunkamura オーチャードホール

指揮:チョン・ミョンフン
(東京フィル 名誉音楽監督)

楽曲解説(PDF)


シューベルト/交響曲第7番『未完成』
ブルックナー/交響曲第7番(ノヴァーク版)


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主催:公益財団法人 東京フィルハーモニー交響楽団
助成:文化庁文化芸術振興費補助金(舞台芸術創造活動活性化事業)| 独立行政法人日本芸術文化振興会
協力:Bunkamura(1/29公演)

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