――楽曲の魅力について教えてください

　「私はシューベルトがまず大好きなのですが、『未完成』はオーボエ奏者にとって非常に大切な、特別な作品です。オーボエ奏者として腕が試され、『どういう奏者がこのオーケストラにいるのか』ということを見てもらうような曲です。オーボエ奏者は皆そう思っていると思います。
　『未完成』は、冒頭のクラリネットと一緒に演奏するメロディや、第2楽章で他の木管楽器との掛け合いのシーンも重要なところですね。ブルックナーもシューベルトも、オーボエが単独で演奏するというよりは、他の楽器とユニゾンで同じメロディを演奏することが多いです。それも、オクターヴ違うとかではなく、同じ音で重なり合って『二つ合わさって／三つ合わさって一つの楽器になる』というのがシューベルトとブルックナーの共通の特徴だという感じがします。

　東京フィルの木管チームのアンサンブルは、とりわけ何かをしようとしなくてもピタっと合う、そんなチームです。みんなお互いにそう思っていると思います。そしてそれは、マエストロから引き出されている部分も大きくあると思います。マエストロの指揮が、『どんな音色』といったことを示してくださるので皆でそこに寄り添える、“集まれる”という感じです。大きく指揮をしているわけではないけれど、皆がそこに吸い寄せられる。そういった求心力がある指揮だと、いつも思います」。

――今回のプログラム、演奏してどのような印象をお持ちですか

　「シューベルトは、室内楽的に音をひとつひとつ大事に作るイメージなのですが、ブルックナーはもう少し宇宙に開いている、人間を超えている感じがします。‥‥でも、シューベルトもそうですね。今回の2曲に共通して、あまり現実感がない、人間とか地球とかそういったものを超えて、神とか宇宙とか、そういうものと繋がるような感じがします。また、ブルックナーは特に、マエストロもリハーサルでおっしゃっていたのですが、求道的な、探し求めているといったフレーズ感を感じるので、それが特徴という感じがします。
　私は東京フィルでブルックナーを演奏するのは今回が初めてですが、ベルリン・フィルのアカデミーに留学していた間、ドイツではブルックナーの演奏会を聴く機会は多く、留学して最初のコンサートも（私は出演しなかったのですが）ブルックナーの「第4番」でした。
　でも今回演奏してみて、演奏する方が楽しいと知りました。オーケストラの響きの中に入って一緒に宇宙を感じられる。それは音楽家ならではの喜びかもしれません。オーボエはオーケストラの真ん中なので、ちょうどいいですね。すごく贅沢に感じながら、リハーサルに励んでいます。私はシューベルトが大好きなので、それもぜひ皆様にお伝えしたいです！」

【特別記事】

1月定期演奏会　

1月26日［木］19:00開演
東京オペラシティ コンサートホール

1月27日［金］19:00開演
サントリーホール

1月29日［日］15:00開演
Bunkamura オーチャードホール

指揮：チョン・ミョンフン
(東京フィル 名誉音楽監督)

楽曲解説（PDF）

シューベルト／交響曲第7番『未完成』
ブルックナー／交響曲第7番（ノヴァーク版）

主催：公益財団法人 東京フィルハーモニー交響楽団
助成：文化庁文化芸術振興費補助金（舞台芸術創造活動活性化事業）| 独立行政法人日本芸術文化振興会
協力：Bunkamura（1/29公演）