ホーム > インフォメーション > フルート首席奏者 神田勇哉が語る 1月定期演奏会

インフォメーション

2023年1月25日(水)



――マエストロとのリハーサルの感想


フルート首席奏者 神田勇哉 ©上野隆文


 「ブルックナーはもともとオルガン奏者で、マエストロも同じく鍵盤奏者ですので、ブルックナーが作る音楽をマエストロは鍵盤上で認識している気がします。また、ブルックナーは目先のところで歌うのではなく、一つ一つが積み重なっていく音楽なので、マエストロは全体を見ながら音作りをしていると感じます。一見したところ無作為に積み上げたようなものをマエストロが整理して、個々が歯車となって従い、物語を組み立てています。
 一般にオーケストラでの私はオーケストラはソリスティックな人間の集まりでありたいと思っていますが、今回は違います。ソロと言っても他のパートから渡されたバトンをそのまま別のパートに渡すだけという感じです。ソロは大きく〈ラテン〉と〈ノルディック〉と2種類分けられます。〈ラテン〉はイタリア、フランス、スペインあたりの音楽で、伴奏があって、ソロは自由に演奏するというようなもの。対して〈ノルディック〉は主にロシアやドイツの音楽で、全てがスコアに書き込まれている。ブルックナーのように、『方眼紙に縦横びっしりと設計図が書き込まれていて、全員がその通りに演奏すれば自動的に美しいかたちになる』ようなソロです。ソロの扱い方を見ても、ブルックナーはドイツ音楽の系譜にいると思います」。


――ブルックナーの音楽の魅力

 「私はブルックナーの音楽が大好きなのですが、彼の曲からは、『他人にどう思われようが自分のやりたいことをやる』というような確固たる意思を感じます。オタク気質とも呼べるような、自身の愛する音楽を孤独にもひたすら磨く姿勢に共感できるのです。
 ブルックナー作品においては物語性は希薄で、脈絡もなく旋律が出続ける、曖昧な音楽だと思います。ブルックナーの信仰心に繋がるのかもしれませんが、我々は運命というものに動かされている動物で、いきなり雷が落ちて死ぬとか、恋人が殺されてとか、キャッチーでドラマティックなものが大事なのではなくて、ただ生きて死ぬまでが人生だというような音楽。ですから分かりやすいストーリーのようなものはブルックナーの音楽にはないですよね。転調の素晴らしさなど分析すれば色々あるとは思いますが、自分の聴きたいものを作り、やりたいことをやるということに生涯かけて向き合った作曲家だと思います」。



――フルートパートとして気を付けていること



 「現代ではフルートは改良されて円筒型なのですが、シューベルトの時代もブルックナーの時代も木管フルートは円錐型でした。主に出てくる音の柔らかさが大きく異なり、現代の楽器だと『カチッ』と鳴ってしまうところが、昔の円錐型だと『ふぉー』と柔らかいという違いがあります。私たちフルーティストは現代の楽器でも柔らかい音が出るように訓練はするのですけれども、楽器の構造が違うので非常に難しいです」。
 ブルックナーは楽器のことをよく理解していたので、フルートは高い音ばかり。高い音になると特に現代の楽器と古い楽器との差が出て、『パーン』と鋭く鳴ってしまうので、そこをいかに抑えるのかに気を配っています。シューベルトもブルックナーも昔のフルートの柔らかい音を想定して書いていることは間違いないので、そういう音を作っていけたらと思っています」。



――1月定期演奏会への期待感

 「今回の演奏会は企画が発表されたときからみな心待ちにしつつも、緊張していたのを感じていました。それは1月定期演奏会のリハーサルが近づくにつれて、リハーサル前に始める音出しの仕方などで、みながマエストロとの演奏に向けて意識を高めていると肌感覚で分かりました。私も事前にブルックナーについて調べ直したり、マエストロがどう指示されても対応できるように、ソロを大きくも吹いてみたり、ゆっくりしてみたり、音のキャラクターを何種類か用意しておいたり、そういう準備をしていました。マエストロがやりたいことをリハーサル初日から全力で伝えていける状態に東京フィルがなっていることは嬉しいです。
 今回のプログラムは『”7番”で統一した』とマエストロはおっしゃっていましたが、2曲とも永遠と夢が続いているような音楽世界です。この2曲がどのように組み合わさってお客様の印象に残るか、その反応が楽しみです」。



Ⓒ上野隆文




【特別記事】

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1月定期演奏会 

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1月26日[木]19:00開演
東京オペラシティ コンサートホール
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1月27日[金]19:00開演
サントリーホール
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1月29日[日]15:00開演
Bunkamura オーチャードホール

指揮:チョン・ミョンフン
(東京フィル 名誉音楽監督)

楽曲解説(PDF)


シューベルト/交響曲第7番『未完成』
ブルックナー/交響曲第7番(ノヴァーク版)


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主催:公益財団法人 東京フィルハーモニー交響楽団
助成:文化庁文化芸術振興費補助金(舞台芸術創造活動活性化事業)| 独立行政法人日本芸術文化振興会
協力:Bunkamura(1/29公演)

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