ホーム > インフォメーション > 【特別記事】チョン・ミン指揮、神尾真由子のチャイコフスキー「ヴァイオリン協奏曲」『悲愴』に期待

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2025年6月2日(月)

 チョン・ミンの事前にプログラミングされて「初の」東京フィル登場、しかも曲がチャイコフスキーのヴァイオリン協奏曲と、指揮者としての力量が確実に判断できる『悲愴』なのでとても楽しみだ。
 「初の」としたのには理由がある。チョン・ミンは2019年に尾高忠明の、2020年にはチョン・ミョンフン(実父でもある)のそれぞれ代役として既に東京フィルの指揮台に立っている。演奏を聴かれた方もいるだろう。今回はそうした形ではない正規にプログラムされての登場なのでそう表した。

 私は以前から、指揮者の力量が確実に判断できる定番コンサート曲は『英雄』『田園』『悲愴』であると指摘してきた。前の2曲は2024年2月と今年2月、チョン・ミョンフン指揮で聴くことができた。彼は2年後にはミラノ・スカラ座音楽監督に就任する。そして『悲愴』は今回、息子のチョン・ミンに託された。単なる偶然に違いないにしても、この符号は興味深い。
 チョン家はまぎれもない音楽一家で、ミンから見て2人の「おば」は著名ヴァイオリニストのチョン・キョンファと、チェリストのチョン・ミョンファ。才能は「遺伝する」「遺伝しない」の議論をここで蒸し返すつもりはなく「2019年と2020年に聴いている」人は、その時点での結果を知っているのかもしれない。しかし私は「遺伝する」のほうに賭けてみることにした。



神尾真由子 ©Makoto Kamiya


 コンチェルトを演奏する神尾真由子は、彼女がまだ幼い少女だった頃からそのステージ演奏に接してきたので、面識はあまりないが個人的には身近に感じている。当時の少し向こう見ずな、元気いっぱいの演奏から近年は大変貌。活動拠点も、サンクトぺテルブルク←→東京の行き来から東京中心に変え、演奏に風格を漂わせるようになっている。そして言葉の最も良い意味で「ロシア・ぺテルブルク派のスタイルを伝える人」になった。その神尾が演奏するチャイコフスキーのコンチェルト。この曲は演奏者によって楽譜上でも明確に違う弾き方をする個所が複数あり、それは当日のステージまでわからない。「どこが、何がロシアなのか」も演奏者、聴き手それぞれに考えがある。それもまた、聴くまで分からない。7月17、18、20日の3日間に何が起こるだろう。




渡辺和彦(わたなべ・かずひこ)/1954年北海道生まれ。立教大学ドイツ文学科卒。数多くの音楽放送番組の企画構成、案内を長期間続ける。『音楽の友』誌の演奏会批評のほか全国紙や地方紙で月評やエッセイ、書評を連載中。著書『ヴァイオリニスト33』(河出書房新社)、『ヴァイオリン、チェロ名曲・名演奏』『名曲の歩き方』(音楽之友社)、『クラシック辛口ノート』(洋泉社)など多数。



7月定期演奏会

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指揮:チョン・ミン
(東京フィル アソシエイト・コンダクター)
ヴァイオリン:神尾真由子*


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チャイコフスキー/ヴァイオリン協奏曲*
チャイコフスキー/交響曲第6番『悲愴』


【聴きどころ】アソシエイト・コンダクターチョン・ミンは、韓国・江陵市交響楽団音楽監督を務めるなど、近年活躍の幅を大きく広げている。東京フィルの定期は3回目。過去の2回(2019年6月、2020年10月)は、「急遽の交代」によるため、今回が満を持しての登場となる。曲目は、チャイコフスキーの名曲2曲が並ぶ。ヴァイオリン協奏曲のソリストは、2007年第13回チャイコフスキー国際コンクール優勝の神尾真由子。音楽家としてのキャリアを着実に重ね、ますます好調の神尾が「一番の得意曲」とする協奏曲。哀愁を帯びた旋律を心に語りかけるように歌い、超絶技巧を輝かせながらオーケストラと火花を散らす演奏になろう。交響曲第6番『悲愴』は、東京フィルの実力が存分に発揮されるはずである。
文:柴辻純子(音楽評論家)


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