ホーム > インフォメーション > 【特別記事】4月定期演奏会によせて 桂冠指揮者 尾高忠明にきく

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2025年4月4日(金)

4月の定期演奏会は、東京フィル桂冠指揮者 尾高忠明が深い思い入れとともに選んだ3曲――兄でもある尾高惇忠の『音の旅』オーケストラ版、ピアニスト舘野泉とのラヴェル「左手のためのピアノ協奏曲」、エルガー「交響曲第3番」のプログラムです。マエストロにききました。




――兄・尾高惇忠の『音の旅』について。もとはピアノ連弾のための作品で、その出版楽譜の巻頭言には「弟との連弾の思い出」が綴られていました。



尾高惇忠(1944-2021)

 「兄(尾高惇忠氏)はピアニストを目指すほどピアノが達者でした。ショパンのバラード第3番など素晴らしく、今でも耳に残っています。ヴァイオリンを学んでいた僕に連弾しようとよく声をかけてくれ、ベートーヴェンの交響曲など、とても懐かしいです。
 その兄の、とても素敵で可愛らしい連弾曲がこの『音の旅』です。兄がいろいろな方から『管弦楽にして』と言われ、書かれたのが今回の作品です。
 全15曲から3曲選びましたが、他の曲もいずれ演奏したいと、思っています」



――舘野泉氏との共演について。東京フィルの初めてのヨーロッパ演奏旅行でもご一緒いただきました。



舘野泉 ©満田 聡

 「僕を海外のオーケストラに初めて呼んでくださったのが、舘野さんです。ヘルシンキ・フィルとの共演は素晴らしい出来事でした。また、日本フィルとの旅では夜遅くまでおつきあい下さった。
 東京フィルとのヨーロッパ演奏旅行では、堤剛さんと共に若い僕たちを牽引して下さり東京フィルの最初の欧州公演を導いて下さった。ラヴェルの『左手』は、学生の頃にサンソン・フランソワ*さんのレコードを擦り切れるほど聴きました。舘野さんと共演できるなんて夢のようです」
*サンソン・フランソワ:Samson François(1924-1970)。20世紀フランスを代表するピアニスト。



――エルガー「交響曲第3番」(アンソニー・ペイン氏による補筆完成版)について。この作品は未完のまま作曲家が亡くなり、英国の作曲家アンソニー・ペイン氏が補筆完成を手掛けた作品です。ペイン氏との交流はありましたか?



エルガー「交響曲第3番」の補筆完成を行った
作曲家アンソニー・ペイン(1936-2021)。
音楽批評でも活躍した

 「アンソニー・ペインさんは『私が編纂した第3番を尾高さんにぜひ演奏してほしい』と言ってくれました。BBCウェールズ管弦楽団のニューポートの演奏会に来てくれて、抱きついて喜んでくれたのをよく覚えています。
 第3番はその後、日本でも何回か演奏しました。N響で演奏したときのコンサートマスターはウィーン・フィルのコンサートマスターだったライナー・キュッヒルさんでしたが、「とても良い曲ですね♪」と喜んでいました。
 でも、ペインさんは残念ながらもうこの世にいない。きっと今回の演奏を天国で聞いて喜んでくれると思います」




――東京フィルのお客様へのメッセージをお願いします。


 「50年以上、一緒に演奏してきていつも感じるのは、常に最上の心を持って演奏してくれることです。技術的にも一流の日本の誇るメジャーオーケストラです。これからも日本の音楽界をリードしていってくれることでしょう」


2023年6月定期演奏会より
2023年6月定期演奏会では尾高惇忠「イマージュ」を
ラフマニノフ作品とともに取り上げたマエストロ ⓒ上野隆文



4月定期演奏会

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4月24日[木]19:00開演
サントリーホール
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4月25日[金]19:00開演
東京オペラシティ コンサートホール
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4月27日[日]15:00開演
Bunkamura オーチャードホール

指揮:尾高忠明
(東京フィル 桂冠指揮者)
ピアノ:舘野 泉*


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尾高惇忠/『音の旅』(オーケストラ版)より
 第1曲「小さなコラール」
 第5曲「シチリアのお姫さま」
 第15曲「フィナーレ~青い鳥の住む国へ~」
ラヴェル/左手のためのピアノ協奏曲*〈ラヴェル生誕150年〉
エルガー/交響曲第3番(A. ペイン補筆完成版)


【聴きどころ】桂冠指揮者尾高忠明が定期に登場 。ソリストは、2025年に演奏生活65周年を迎えるピアノの舘野泉。1984年の東京フィル初のヨーロッパ演奏旅行をともにするなど、日本のクラシック音楽界を牽引してきた2人による共演である。ラヴェル「左手のためのピアノ協奏曲」は、作曲家の生誕150年を祝して。エルガー交響曲第3番は、「誰も手をつけてはならぬ」と言葉を残して作曲家が世を去ったあと、1997年にA.ペインの補筆で完成。英国で活躍したマエストロにとって、日本初演を指揮するなど思い入れが深い作品で、名演が期待される。尾高惇忠『音の旅』(抜粋)は、ピアノ連弾曲からの編曲。オーケストラの響きによって、その心優しい音楽がさらに深まる。
文:柴辻純子(音楽評論家)

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