ホーム > インフォメーション > 【特別記事】コンサートマスター三浦章宏が語る 4月定期演奏会の聴きどころ

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2025年4月23日(水)

――今回の4月定期演奏会はマエストロならではの選曲と感じます。





リハーサルの様子

 「私自身、23歳で最初N響に入り、その時からマエストロ尾高とご一緒する機会はありました。その後私が東京フィルに来てからも、何度もご一緒しています。お若いころからすばらしくて的確な指揮は変わらないけれど、月日が経って、とくに近年は、色々な日本のオーケストラを育ててこられ、英国のオーケストラでも活躍され、そのなかで身に着けてこられた非常に深い造詣を感じさせ、今や日本を代表する巨匠となられた。ご一緒するたびに充実感と感動をおぼえながらご一緒しています。

 今回は、1曲目はお兄さん(尾高惇忠氏)の曲『音の旅』です。リハーサルでもお兄さんとの子供の頃の話からいろいろとされていて、尾高マエストロの一個人、人間としての思い、家族の愛情、そういうものを非常に感じます。『音の旅』はシンプルだけれど美しい曲。私たち自身も演奏していて、心に染みる演奏になるのではないかと感じています。
 メインのエルガー『交響曲第3番』というのは、あまり取り上げられない曲ですし、私自身ももちろん初めて取り組みます。もともと未完の曲で、アンソニー・ペインさんという方が完成されたという作品。マエストロは英国で勲章を授与されているくらい高く評価されています。そのような実績を積み上げてこられたマエストロは、英国での経験もリハーサルでよくお話しされます。アンソニー・ペインさんが補筆して完成させ、『尾高さんに演奏してほしい』とおっしゃった、そんな話も伺いました。もともと未完の作品だったこともあってか、実は私自身、リハーサルが始まる前に録音などを聴いてみてもあまりピンとこなかったところがあるのです。ところが、マエストロとのリハーサルに臨んでみて、率直に『すごくいい曲、すばらしい曲だな』と感じました。尾高マエストロがエルガーとペインさんのことを深く知って取り組まれている、そのことが音楽に現れています。演奏していても充実感がありますし、とても意義のある演奏になるのではないかなと思います。マエストロがリハーサルの時に皆の前でおっしゃっていたのですが、『東京フィルとエルガーの第3番をやりたかった』と。すごくありがたいというか、我々としても光栄だなという気持ちで取り組んでいます」。



――舘野泉さんとの共演について




リハーサルの様子

 「ラヴェル『左手のためのピアノ協奏曲』は舘野泉さんとご一緒します。尾高マエストロよりもさらに年を重ねられた大先輩、日本のクラシック音楽界で演奏を続けてこられた、そのことが音にも非常に表れています。舘野さんの人生や歴史が現れていて、貴重な瞬間を共にしていると感じます。……私自身、23歳でオーケストラに入ってこれまで41年間演奏してきたわけですが、こうしてすばらしい先輩方、尾高マエストロと舘野さんとご一緒できるのはありがたいこと。力を貰えるというか、音楽家の人生を感じるものがあり、個人的にも感慨深いです。

 マエストロとのリハーサルはいろいろなエピソードを半分照れながらおっしゃるのだけれど、本当にご自分の経験から出てくる言葉なので、重みがあります。本当にいい機会だなと思いながら取り組んでいます。クラシック音楽というのは、もちろん時代時代で変わることもあるけれど、一番大事な部分は伝承していく文化だと思うので。尾高マエストロも絶対にそう思っておられるでしょうし、伝えたいという気持ちもとてもよくわかります。ありがたいです。私自身も若い人たちに伝えていかないといけないな、という思いもあります。
 今回のプログラムは、楽曲だけ見ると、それぞれがある種、マイナーな作品なのですが、マエストロ尾高がプログラムすることで伝わってくるものがあると思います。人生とか歴史が集約されています。オーケストラメンバーにも必ずや伝わっていると思いますし、お客様にもこれが伝わると嬉しいなと思います」。



2023年6月定期演奏会より
2023年6月定期演奏会では尾高惇忠『イマージュ』を
ラフマニノフ作品とともに取り上げたマエストロ ⓒ上野隆文



4月定期演奏会

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4月24日[木]19:00開演
サントリーホール
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4月25日[金]19:00開演
東京オペラシティ コンサートホール
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4月27日[日]15:00開演
Bunkamura オーチャードホール

指揮:尾高忠明
(東京フィル 桂冠指揮者)
ピアノ:舘野 泉*


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尾高惇忠/『音の旅』(オーケストラ版)より
 第1曲「小さなコラール」
 第5曲「シチリアのお姫さま」
 第15曲「フィナーレ~青い鳥の住む国へ~」
ラヴェル/左手のためのピアノ協奏曲*〈ラヴェル生誕150年〉
エルガー/交響曲第3番(A. ペイン補筆完成版)


【聴きどころ】桂冠指揮者尾高忠明が定期に登場 。ソリストは、2025年に演奏生活65周年を迎えるピアノの舘野泉。1984年の東京フィル初のヨーロッパ演奏旅行をともにするなど、日本のクラシック音楽界を牽引してきた2人による共演である。ラヴェル「左手のためのピアノ協奏曲」は、作曲家の生誕150年を祝して。エルガー交響曲第3番は、「誰も手をつけてはならぬ」と言葉を残して作曲家が世を去ったあと、1997年にA.ペインの補筆で完成。英国で活躍したマエストロにとって、日本初演を指揮するなど思い入れが深い作品で、名演が期待される。尾高惇忠『音の旅』(抜粋)は、ピアノ連弾曲からの編曲。オーケストラの響きによって、その心優しい音楽がさらに深まる。
文:柴辻純子(音楽評論家)

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