インフォメーション
2024年9月13日(金)

【登場人物】
◎岡部亮登:2018年入団。首席奏者
中村勇輝:2023年入団。
船迫優子:2007年入団。
――舞台稽古が進んでおりますが、いかがでしょうか。
船迫優子
岡部亮登
船迫 打楽器セクションに限らずですが、マエストロからとても細かく指示があります。大太鼓とシンバルに関してはヴェルディは譜面に「ここは大太鼓だけ」とか「ここは大太鼓とシンバル一緒に」と書いているのですが、マエストロはそれに準拠していません。「ここはシンバルも一緒に」とか「ここは大太鼓はなしで」と、マエストロ自身が稽古を進めながら場面場面で細かく決めています。あと他のパートもそうですが、ダイナミクスや音色表現もとても細かくつけていますよね。
岡部 そうですね。音のキャラクターを相当極端にたてる感じで。
船迫 そうすることによって音楽的に『マクベス』の真実に近づいていっているように感じられて、打楽器が叩いていない場面でもマエストロのお話を聞いていると「素晴らしいな」と思います。ね
岡部・中村 はい。
――2022年10月定期演奏会『ファルスタッフ』、2023年7月定期演奏会『オテロ』とシェイクスピアの戯曲をもとにヴェルディが作曲したオペラ作品をマエストロと取り上げてきて、今回の『マクベス』で全3作品の上演が完結します。『マクベス』はヴェルディ初期の作品となりますが、マエストロはこの作品を「ダイヤモンドの原石」だと評していました。打楽器セクションとしては、この作品に「ヴェルディらしさ」を感じることはありますか?
2022年10月定期演奏会『ファルスタッフ』 Ⓒ上野隆文
2023年7月定期演奏会『オテロ』 Ⓒ上野隆文
船迫 私は『ファルスタッフ』『オテロ』今回の『マクベス』と、3公演とも参加しました。『マクベス』は、マエストロがおっしゃっていた「このオペラは権力への憧れという麻薬がどれほど人間に深く根付いているかを教えてくれる。」というこの言葉につきると思いました。やっぱりシェイクスピアの原作だというところが非常に大きいと思うのですが、内容として『マクベス』は人間の心理に基づいた物語なので、ヴェルディの初期の作品ではありますが、音楽的には中期後期の作品同様に深いものがあると感じます。
岡部 『マクベス』には合唱とティンパニだけの長いくだりが2場面あります。ティンパニとバスドラムの音にヴェルディは何かしら暗い意味を持たせようとしていたと思うのですよね。ヴェルディは『マクベス』で自身の作曲技法を色々と試していたと思います。
船迫 試みていた感じはすごくありますよね。時代も音楽性も違うのですが、同じくイタリアオペラ界の巨匠のプッチーニの打楽器の使い方とは違ってヴェルディはとてもシンプルで、でもそれがただ単にシンプルなだけじゃなくて、ひとつひとつの音に意味を持たせて書いているという印象があります。
岡部 ヴェルディの音楽は打楽器が入るところに意味を感じることが多いですね。
船迫 ティンパニもそうですよね。
岡部 ティンパニの強打音も物質的、直接的なインパクトというよりかは、心の内面へのインパクトを表しているように思えるのです。
船迫 マエストロも打楽器の音色については「アクセントをつけすぎないで」「深い音で」ということをよくおっしゃっていて、打楽器を効果音としてではなく、人間の心の内面に迫る重要な音として扱っていると思います。
――今回中村さんは舞台袖のバンダも担当されます。
中村勇輝
中村 バンダの打楽器は岡部さんや船迫さんがおっしゃっていたこととは別の役割があって、効果音としての側面が強いです。舞台上で演奏するときとは違って、音楽の流れのなかにはまろうとはせず、舞台装置のひとつという感覚で演奏しています。扉をノックする効果音ひとつにしても、マエストロのこだわりはすごく強くて。
船迫 場面を効果的に見せるにはどうすればいいかをマエストロはチェックしていますよね。
中村 バンダに関しても、実際に音を鳴らしていろいろ試して、マエストロに聞いてもらいながら演奏する位置や音色、音量を決めていっています。
船迫 マエストロは音量について「5%小さく」とか「10%大きく」とよく指摘されます。5%くらいでは変わらないと思ってしまうかもしれませんが、その5%があるのとないのとでは音楽が全然ちがって。私たちもそれが分かっているので、じゃあ5%くらいだったらこれくらいかな、10%くらいだったらこのくらいかなと繊細に調節しています。それで本当にがらっと音楽全体が様変わりするんです。
――今回もマエストロの演出アイディアがたくさん落とし込まれていますね。
船迫 マエストロは音楽についてはもちろん、歌手や合唱の動きや芝居、照明など、とても細かい指示を出されます。そして、それらのアイディアがポンポン浮かんでくるのです。私たちはそれに瞬発力を持って対応し、表現し、楽しんでいます。マエストロもとても楽しんでいるように見受けられます。今日のリハーサルでは、「もう指揮者じゃなくて演出家になろうかな」と言って笑いを誘っていました。
――ありがとうございました。
9月定期演奏会

9月15日[日]15:00開演
Bunkamura オーチャードホール
9月17日[火]19:00開演
サントリーホール
9月19日[木]19:00開演
東京オペラシティ コンサートホール
指揮:チョン・ミョンフン(名誉音楽監督)
マクベス:セバスティアン・カターナ
マクベス夫人:ヴィットリア・イェオ
バンクォー:アルベルト・ペーゼンドルファー(※)
マクダフ:ステファノ・セッコ
マルコム:小原啓楼
侍女:但馬由香
医者:伊藤貴之
マクベスの従者、刺客、伝令:市川宥一郎
第一の幻影:山本竜介
第二の幻影:北原瑠美
第三の幻影:吉田桃子
合唱:新国立劇場合唱団(合唱指揮:冨平恭平)
※当初の予定から変更となりました。
ヴェルディ/歌劇『マクベス』
全4幕・日本語字幕付き原語(イタリア語)上演
原作:ウィリアム・シェイクスピア『マクベス』
台本:フランチェスコ・ピアーヴェ
公演時間:約2時間45分(休憩含む)
1回券料金
SS席 | S席 | A席 | B席 | C席 | |
---|---|---|---|---|---|
チケット料金 | ¥15,000 |
¥10,000 |
¥8,500 |
¥7,000 |
¥5,500 |
※( )…東京フィルフレンズ、WEB優先発売価格(SS席は対象外)
主催:公益財団法人 東京フィルハーモニー交響楽団
助成:文化庁文化芸術振興費補助金(舞台芸術等総合支援事業(公演創造活動))| 独立行政法人日本芸術文化振興会
公益財団法人 三菱UFJ信託芸術文化財団(9/17公演)
後援:NPO法人日本ヴェルディ協会、日本シェイクスピア協会
協力:Bunkamura(9/15公演)