――ブラームスのチェロの役割について。

「ブラームスというと弦楽器の集団としてのサウンド、豊潤な響きを出さないといけないと思っています。いくら管楽器が上手くても、弦楽器の分厚い響きがないとブラームスらしくないと感じます。ですので、弦楽器奏者の一人として、その豊かな響きを作るためにどういう演奏をしたらいいのかに一番気を配り、“いい音”を出そうとつとめています。
ブラームスの楽曲においては、チェロは様々な役割を担わせてもらっているので、そこが弾いていて面白いです。コントラバスと一緒に支えることもあれば、ヴィオラと一緒に内声の色彩感を作ることもありますし、第１ヴァイオリンと共にメロディを弾くこともあります。
例えば、第２番第１楽章の冒頭はコントラバスと一緒に木管楽器を支えていて、第２番の第2楽章はチェロだけがメロディを奏でています。あとは、第３楽章は第１番も第２番も木管にソロがあり、まるで道案内かのようにピツィカートでソロを導くときもありますね」。

――ブラームスを演奏する上で注意していることについて。

　「建築物は下の土台がしっかりしている方がいいですよね。それは音楽でも同じだと思っています。ですので、チェロより音域が低いコントラバスと一緒に演奏するときは、コントラバスよりも目立ったりせずに、コントラバスと一緒にひとつの響きを作るようにしています。反対にチェロより音域の高いヴィオラと一緒のときはチェロの音に乗せてあげる気持ちで音を作っていますね。

　メロディを担うときはとにかく音色に細心の注意を払っています。マエストロは特に音色に厳しい方なので、どういう音を選んで弾くかという選択と、必要とされている音色を出すための自身の技術を磨くことが大事だと思っています。頭ではマエストロの求めている音が分かってはいるけれども、技術が追い付かないというときがあります。マエストロの妥協のない高い要求にこたえられるように日々精進しています」。

――マエストロ チョンとのブラームス演奏について。

　「マエストロはものすごい勉強量によって得た絶対の自信があって、それが圧倒的です。そして自分の音楽までオーケストラを導く統率力も圧倒的。リハーサルでのマエストロのエネルギーは凄まじくて、第２番第２楽章の冒頭は痺れました。
　重くて暗く、まるで象が歩いているかのようなブラームスが昔は多かったですけれど、マエストロは全然違う響きを求められています。もっと人間的であたたかくて、やわらかくて美しくて、でもその裏には秘められた情熱があるというような。ブラームスのはちきれんばかりの情熱を美しくて柔らかい音で弾くというのは非常に難しいのですが、マエストロの求めるそのようなブラームスの音色を表現できたらと思います。客席のお客様にその音色を感じていただけたなら、こんなに嬉しいことはありません」。

【特集】

7月定期演奏会

7月1日［木］19:00開演（18:15開場）
東京オペラシティ コンサートホール

7月2日［金］19:00開演（18:15開場）
サントリーホール

7月4日［日］15:00開演（14:15開場）
Bunkamura オーチャードホール

指揮：チョン・ミョンフン
（東京フィル 名誉音楽監督）

― ブラームス交響曲の全て ―

ブラームス／交響曲第1番
ブラームス／交響曲第2番

9月定期演奏会

9月16日［木］19:00開演（18:15開場）
東京オペラシティ コンサートホール

9月17日［金］19:00開演（18:15開場）
サントリーホール

9月19日［日］15:00開演（14:15開場）
Bunkamura オーチャードホール

指揮：チョン・ミョンフン
（東京フィル 名誉音楽監督）

― ブラームス 交響曲の全て ―

ブラームス／交響曲第3番
ブラームス／交響曲第4番

主催：公益財団法人 東京フィルハーモニー交響楽団
助成：文化庁文化芸術振興費補助金（舞台芸術創造活動活性化事業）| 独立行政法人日本芸術文化振興会
　　　公益財団法人 ローム ミュージック ファンデーション（7/2,9/17公演）
　　　公益財団法人 三菱UFJ信託芸術文化財団（7/2,9/17公演）
　　　公益財団法人 花王 芸術・科学財団（7/2,9/17公演）
協力：Bunkamura(7/4,9/19公演)