ホーム > インフォメーション > コンサートマスター 依田真宣が語る チョン・ミョンフン指揮「ブラームス 交響曲の全て」

インフォメーション

2021年9月17日(金)


――初日リハーサルを終えた感想を教えてください。


コンサートマスター 依田真宣 Ⓒ上野隆文

 「マエストロのたったひとことでオーケストラの音が変わって、素晴らしいと思いました。第3番にしても第4番にしても、マエストロの中での目指すビジョンがしっかりと構築されているので、それぞれの楽章でどういう音、響きを出して欲しいかというオーケストラに対しての要求が明確にあるのが印象的でした。
 第4番に関しては、各楽章を春夏秋冬になぞらえてそれぞれの季節感のなかでの風景や、どの音がどういう繋がりをもって表情変化をしていくか、そういった指示が多かったです」。



――依田さんのマエストロ チョン・ミョンフンとの共演は久しぶりですよね。その時とは印象が変わったというところはありますか?

 「マエストロとの演奏は久しぶりですが、コロナ禍を経て、よりマエストロの音楽への愛が深くなった感じを受けました。オーケストラに対して、『もっとこうしたい』という要求が今まで以上に強く出ていると思います。久しぶりにマエストロのもとで演奏して、オーケストラから生み出される音がより深くなった気がします」。



――交響曲第3番について教えてください。

 「昔は第2番が好きだったのですが、いまは第3番が一番好きです。他の交響曲は最後派手に幕を閉じますが、第3番は静かに終わりますよね。演奏していて最後穏やかになれるところも特徴があって、惹かれます。
 第3番にはシューマンに対してのブラームスの思いが色々込められていると思います。現代の私たちは資料を読むことで、ブラームスとシューマンの関係を表面上は理解していますが、深い部分までは分かりません。心のうちではどのような繋がりがあって、どういった葛藤、友情があったのか、そのような二人の本当の関係性というものがすごく込められているような気がします。
 スコアを読んで紐解いていくと、第3番のなかにはいろいろな箇所で、シューマンの室内楽やシンフォニー、歌曲に共通する書き方やハーモニーが含まれているように感じます。 
 例えば、第3楽章【A】の繋ぎはシューマンの室内楽に似ていると思います【譜例】。割り切れない音価や拍子もそうですし、タイで繋がって頭拍がない音に対し、第1ヴァイオリンは頭拍で来ているなど、シューマンの室内楽曲によく見られると思います。ブラームスの心の中にある、割り切れない、完璧では無いものへの美学、そういったものをこの第3番は全楽章を通して訴えかけているのではないでしょうか」。

【譜例】





――交響曲第4番について教えてください。

  「第4番は〈ブラームスの全て〉がつまった集大成のようなシンフォニーです。今までブラームス自身が経験してきたこと、音楽や人との出会いもそうですし、自分の作曲技法、民族音楽、あらゆる経験のすべてを込めて書かれている気がしますね。
 第3番がシューマンだとすると、第4番はモーツァルト、バッハのイメージを多く含んだ交響曲だと思います。モーツァルトやバッハのコラールやレクイエムから借用しているなどの研究も多くあり、ベートーヴェンを意識しながらも、たくさんの作曲家を意識しています。第3番と大きく違うのは、和声の書き方です。第3番では和声変化は常に自然を意識して、流れの中で様々な変化をしていきましたが、第4番での和声変化は運命を絶ち切るかのように、しっかりと変わります。この変化や強い意志をもった音楽こそ、ブラームスの全てが表れている交響曲だと思います」。



――「ここはぜひ意識して聴いてほしい」という部分はありますか?

 「第3番と第4番は違うカラーを持っていますが、ここはまさにブラームスだなと思うような作曲法やキャッチーなメロディがたくさんある点は共通しています。ブラームスの曲は印象に残る素敵なメロディの宝庫ですね。もちろんそのブラームスらしい美しいメロディは私も好きですが、そのメロディに入る直前の小節をぜひ聴いていただきたいです。それは何小節もかかる場合もありますし、1小節の場合もありますが、メロディに切り替わる瞬間が本当に美しいのです。
 そこのハーモニーを形作るのは、チェロだったりコントラバスだったりファゴットだったり色々なのですが、何の楽器を使うと次のこのメロディに上手く繋げられるかを本当によく分かって書かれています。ここはブラームスの神業的な瞬間です。 どうしてもメロディを聴いてしまうのですけど、ブラームスの真の凄さはその直前の和声感と響きの作り方に現れていると思うので、第3番第4番共通して、私はそこを是非、聴いていただきたいです。
 この響きや繋がりを眼で見たり、肌で感じることができるのが生の演奏会の特別な瞬間ですよね。その瞬間を出来るだけ沢山感じてもらえたら嬉しいです」。



――コンサートマスターとしてサイド席で演奏する際に、意識していることはありますか?


9月定期コンサートマスターは近藤薫、
サイドに依田真宣が座ります。
 Ⓒ上野隆文

 「コンサートマスターには指揮者のビジョンをきちっとオーケストラに見せて伝えていくという役目があり、そういう音楽の出し方、表現の仕方が必要だと思っています。サイドに座るときは、マエストロとコンサートマスターとの音楽のやりとりを自分が橋渡しをどれだけできるか、オーケストラの方にどれだけ増幅させることが出来るかに気を付けながら弾いています。
 それはただコンサートマスターに合わせて弾くということではなく、コンサートマスターが二人座るということで、音楽の表現や幅がより膨らんでいくと思います。
 ブラームスの場合は、マエストロは深い音を要求されることが多いので、深さが全体でどのくらいの幅を持った深さなのか、どれほどの響きが必要なのかということをすごく気を付けないといけません。ただエネルギーを持ってガッと弾くのではなくて、いまどれくらい音を掘っているのか、コンサートマスターがどういう風に響きを作っていこうとしているのかにも注意を払って演奏しています。
 『深さ』だけではなく『幅』も重要で、どれほどの幅がこの響きを作るために必要なのかを意識することが大事です。小節単位で響きや和声を作るとき、ピンポイントで突然その響きを作るときなど、場所によってさまざまです」。



――「深さ」だけでなく、「幅」もあるのですね。

 「音の幅というものは、楽器の響きを聴いていただけると感じられると思います。幅の広く深い響きを必要とする箇所では、金管ではトロンボーンを使ったり、弦だとコントラバスを使ったりしています。弦楽器が作った響きに管楽器が入り、より響きを増やす様々な楽器が入ってくることによって深さが更に広さに繋がります。ブラームスは考え抜いて書いています。ティンパニも、場面によってロールにするか、16分音符の連続にするか、一発のみにするかなど全てが計算されていますよね。
 ブラームスに関してはとにかく和声が難しいので、和音がすべてきっちり聞こえていくことを意識しています。それぞれの楽器のハーモニーの変化が聞こえないと、音楽が繋がっていきません。ひとつひとつの音が大事な作曲家なので、そこを疎かにしてしまうと、突然そのメロディが出てきたみたいになってしまいます。すべての音に意味のある作曲家です」。

【特集】

名誉音楽監督 チョン・ミョンフンが語る「ブラームス 交響曲の全て」
名誉音楽監督 チョン・ミョンフンとの「ブラームスの歩み」
コンサートマスター 三浦章宏が語る チョン・ミョンフン指揮「ブラームス 交響曲の全て」
コンサートマスター 近藤 薫が語る チョン・ミョンフン指揮「ブラームス 交響曲の全て」
第2ヴァイオリン首席奏者 戸上眞里が語る チョン・ミョンフン指揮「ブラームス 交響曲の全て」
第2ヴァイオリン首席奏者 藤村政芳が語る チョン・ミョンフン指揮「ブラームス 交響曲の全て」
第2ヴァイオリン首席奏者 水鳥 路が語る チョン・ミョンフン指揮「ブラームス 交響曲の全て」
ヴィオラ首席奏者 須田祥子が語る チョン・ミョンフン指揮「ブラームス 交響曲の全て」
ヴィオラ首席奏者 須藤三千代が語る チョン・ミョンフン指揮「ブラームス 交響曲の全て」
ヴィオラ首席奏者 髙平 純が語る チョン・ミョンフン指揮「ブラームス 交響曲の全て」
チェロ首席奏者 金木博幸が語る チョン・ミョンフン指揮「ブラームス 交響曲の全て」
チェロ首席奏者 服部 誠が語る チョン・ミョンフン指揮「ブラームス 交響曲の全て」
チェロ首席奏者 渡邉辰紀が語る チョン・ミョンフン指揮「ブラームス 交響曲の全て」
コントラバス首席奏者 片岡夢児が語る チョン・ミョンフン指揮「ブラームス 交響曲の全て」
コントラバス首席奏者 黒木岩寿が語る チョン・ミョンフン指揮「ブラームス 交響曲の全て」
フルート首席奏者 神田勇哉が語る チョン・ミョンフン指揮「ブラームス 交響曲の全て」
フルート首席奏者 斉藤和志が語る チョン・ミョンフン指揮「ブラームス 交響曲の全て」
オーボエ首席奏者 荒川文吉が語る チョン・ミョンフン指揮「ブラームス 交響曲の全て」
オーボエ首席奏者 佐竹正史が語る チョン・ミョンフン指揮「ブラームス 交響曲の全て」
クラリネット首席奏者 アレッサンドロ・ベヴェラリが語る チョン・ミョンフン指揮「ブラームス 交響曲の全て」
クラリネット首席奏者 万行千秋が語る チョン・ミョンフン指揮「ブラームス 交響曲の全て」
ファゴット奏者 井村裕美が語る チョン・ミョンフン指揮「ブラームス 交響曲の全て」
マエストロチョン・ミョンフンとの「ブラームス 交響曲の全て」ホルン・セクションに話を聞きました。
トランペット首席奏者 川田修一が語る チョン・ミョンフン指揮「ブラームス 交響曲の全て」
トロンボーン首席奏者 五箇正明が語る チョン・ミョンフン指揮「ブラームス 交響曲の全て」
トロンボーン首席奏者 中西和泉が語る チョン・ミョンフン指揮「ブラームス 交響曲の全て」
ティンパニ奏者 岡部亮登が語る チョン・ミョンフン指揮「ブラームス 交響曲の全て」
ティンパニ奏者 塩田拓郎が語る チョン・ミョンフン指揮「ブラームス 交響曲の全て」

7月定期演奏会

チケットを購入
7月1日[木]19:00開演(18:15開場)
東京オペラシティ コンサートホール
チケットを購入
7月2日[金]19:00開演(18:15開場)
サントリーホール
チケットを購入
7月4日[日]15:00開演(14:15開場)
Bunkamura オーチャードホール

指揮:チョン・ミョンフン
(東京フィル 名誉音楽監督)

― ブラームス交響曲の全て ―

ブラームス/交響曲第1番
ブラームス/交響曲第2番



9月定期演奏会

チケットを購入
9月16日[木]19:00開演(18:15開場)
東京オペラシティ コンサートホール
チケットを購入
9月17日[金]19:00開演(18:15開場)
サントリーホール
チケットを購入
9月19日[日]15:00開演(14:15開場)
Bunkamura オーチャードホール

指揮:チョン・ミョンフン
(東京フィル 名誉音楽監督)

― ブラームス 交響曲の全て ―

ブラームス/交響曲第3番
ブラームス/交響曲第4番





主催:公益財団法人 東京フィルハーモニー交響楽団
助成:文化庁文化芸術振興費補助金(舞台芸術創造活動活性化事業)| 独立行政法人日本芸術文化振興会
   公益財団法人 ローム ミュージック ファンデーション(7/2,9/17公演)
   公益財団法人 三菱UFJ信託芸術文化財団(7/2,9/17公演)
   公益財団法人 花王 芸術・科学財団(7/2,9/17公演)
協力:Bunkamura(7/4,9/19公演)

公演カレンダー

東京フィルWEBチケットサービス

お電話でのチケットお申し込みは「03-5353-9522」営業時間:10:00~18:00 定休日:土・日・祝