ホーム > インフォメーション > コンサートマスター 近藤 薫が語る チョン・ミョンフン指揮「ブラームス 交響曲の全て」(1)

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2021年9月4日(土)


――マエストロ チョン・ミョンフンとの演奏について


コンサートマスター 近藤 薫 Ⓒ上野隆文

 「周りの人たちも同じことを言っていますが、今の東京フィルの音を作ったのはマエストロ チョンなんです。
 音を作るというのは『こういう弾き方をしなさい』『こういうバランスで弾きなさい』『こういう発音で吹きなさい』ということでもあるのですが、それは技術的な方法論でしかなくて、それ以上に、ハーモニーを作っていくときの感覚を作るということだと思います。
 私たちがオーケストラでハーモニーを作るときに何を拠り所にしているかというと、『気持ち良いか、気持ち良くないか』なんです。つまり、生物が生存本能として最初に獲得した快・不快という原初的な感情で、非常にシンプルです。自分の感覚にフィットしていれば気持ちいいし、そうでなければストレスになる。音を作るというのは、その気持ちいいかどうか、ハモっている、周波数が合っている、ということだけではなく『どんなサウンドを好むか、欲しているか』ということになるのです。
 これは、生き方とか、ものの考え方とか、そういうところが同じ、ということです。その根本のところでマエストロから受けた影響がとても強い。東京フィルはいろいろな指揮者とご一緒するけれど、基本的に、その根本というのはマエストロ チョンと共にある。なので、マエストロ チョンと演奏するときは、他の指揮者が来たときの丁々発止とかいうこととは少し違います。
 7月定期のブラームスの1番の時、リハーサル初日は私の印象では『だいぶ久しぶりだな』という感じでした。1年4か月ぶりで。でも、リハーサルをたくさんやっていただくことができて、結果的に演奏会はすごく良いものになった。マエストロと演奏するときは、久々に実家に帰って、厳しい父親に『たるんだ顔しとるな』、って言われたみたいな感じ。いつまでもそういう感じではいられないけれど、でも、偉大な父という感じでしょうか」。




――ブラームス 交響曲全曲演奏に思う

 「ブラームスの作品はどのジャンルもそれぞれ魅力があります。クラシック音楽の歴史自体が、過去を乗り越える、前の人のまねをしない、というところに一つの芸術性の発露があると思うのですが、7月の定期演奏会で聴いていただいた交響曲第1番は、ベートーヴェンからの強い影響を受けていて、ベートーヴェンの9曲の偉大な交響曲のあとにあの第1番が出てきた。
 ブラームスは、第1番を書いてから第4番までは比較的立て続けに書いていますが、4番にはある種の到達点がある。ブラームスの交響曲をツィクルスでやることには、ベートーヴェンが作ってきた交響曲9番までの意義とはまた違った意味があると思います。
 ブラームスほど、個人的な感情や人間の持っている矛盾、そういうところに踏み込もうとしていた人は他に例を見ないのではないかと思います。人間が抱えている矛盾は太古の昔から色々なジャンルで議論されていたことで、ベートーヴェンも音楽で形にしましたが、ブラームスはさらにそれを追求しようとしていました」。



――ブラームスの凄さ

 「ブラームスの凄さの理由はふたつあって、まず作品がすごかったということ、それから、演奏してきた人がすごい、ということもあると思います。
 過去の素晴らしい演奏家たちが取り組んできた、受け継いできたということも、この作品が偉大である理由の一つだと思います。このように人の手によって受け継がれてきたものというのは世の中に意外とありません。リアルタイムで更新され続けていて、その時代ごとに演奏の特徴があり、また時代を超える演奏というものも生まれる。一つの曲にいろいろな解釈がある。
 歴史上のことについて、我々は文字による情報で知ることが多いけれど、音楽には言葉にならない本質みたいなところが入っていて、そういうものを私たちはいま受け取ることができる。ブラームスは個人的な思いや自己矛盾などを音楽にしましたが、楽譜そのものには命がないけれど演奏者がもう一度命を与えると、まるでそこに人間らしさや温かみといった、生き物しか持っていないようなものに蘇らせられる。それがお客様に届いたときに、お客様が何かを感じたり、思ったり、演奏に対して意味づけをしてくれる」。


(Part 2 へ続く)



2021年7月定期演奏会  ©三浦興一




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ティンパニ奏者 塩田拓郎が語る チョン・ミョンフン指揮「ブラームス 交響曲の全て」

7月定期演奏会

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7月1日[木]19:00開演(18:15開場)
東京オペラシティ コンサートホール
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7月2日[金]19:00開演(18:15開場)
サントリーホール
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7月4日[日]15:00開演(14:15開場)
Bunkamura オーチャードホール

指揮:チョン・ミョンフン
(東京フィル 名誉音楽監督)

― ブラームス交響曲の全て ―

ブラームス/交響曲第1番
ブラームス/交響曲第2番



9月定期演奏会

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9月16日[木]19:00開演(18:15開場)
東京オペラシティ コンサートホール
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9月17日[金]19:00開演(18:15開場)
サントリーホール
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9月19日[日]15:00開演(14:15開場)
Bunkamura オーチャードホール

指揮:チョン・ミョンフン
(東京フィル 名誉音楽監督)

― ブラームス 交響曲の全て ―

ブラームス/交響曲第3番
ブラームス/交響曲第4番





主催:公益財団法人 東京フィルハーモニー交響楽団
助成:文化庁文化芸術振興費補助金(舞台芸術創造活動活性化事業)| 独立行政法人日本芸術文化振興会
   公益財団法人 ローム ミュージック ファンデーション(7/2,9/17公演)
   公益財団法人 三菱UFJ信託芸術文化財団(7/2,9/17公演)
   公益財団法人 花王 芸術・科学財団(7/2,9/17公演)
協力:Bunkamura(7/4,9/19公演)

公演カレンダー

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