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2021年6月30日(水)
――マエストロ チョン・ミョンフンとの共演について。
オーボエ首席奏者 荒川文吉 ©中崎武志
「マエストロ チョンと一番最近共演したのは、ベルリン留学の一時帰国中に参加したアジア・フィルハーモニー管弦楽団だったと思います。東京フィルの皆が思っていると思うのですが、マエストロが振りに来るとなると襟が正されるというか、もちろん普段も気合を入れていないというわけではないのですが、特別な感じがあると思います。
私はマエストロの指揮を数多く経験しているわけではありませんが、チャイコフスキーの第4番をご一緒したことがあります。非常に緊張もしたのですが、リハーサルは色々とやりとりはあったものの、本番ではすごく奏者に任せてくださって、懐の深い方なのだなと感じたのが印象に残っています。
オーケストラ自体も、去年の2月に『カルメン』をやって1年4か月ぶり。私自身も楽しみですし、しかもブラームス。オーケストラの皆とても楽しみにしていると思います」。
――荒川さんにとってブラームスとは。
「実はオーボエにはブラームスの室内楽やソロ曲がありません。知らない人も多いと思うのですが、室内楽とソロがゼロ!それがやっぱり寂しいというか。オーボエは、オーケストラ作品ではこんなに活躍の場をもらっているのに、他のジャンルがない。だからオーボエ奏者はみんなオーケストラでブラームスに触れられるのを幸せに思っていると思います。
©上野隆文
オーボエはオーケストラの中ではソロを担うことが多いですが、ブラームスは、オーケストラの中で演奏していて音の厚みを非常に感じます。オーケストラの中でtutti(全奏)で音を出したときにとても豊かな響きがして、その中にいることがとても心地よく幸せ。そういう感覚が強いです。そして、自然の豊かさや空気の綺麗さ、大地、風、そういうものを感じます。ドイツに留学して実際に現地の空気に触れ、なるほど、こういう場所にいたらこういう曲が出てくるのかなと感じることはありました。
僕はブラームスの4曲の交響曲の中では第2番が一番好きです。初めてブラームスの交響曲に触れたのが、東京藝術大学の学生オーケストラに初めて参加した時で、その時のメインが『第2番』。それが初めてでしたので、僕にとっては第2番の明るさがブラームスのイメージでした。他の作品をやっていくうちに、そう明るいばかりの人でもないのだなと知りました(笑)。第1番は非常に時間をかけて書かれていますが、第2番はその後『生みの苦しみ』から解放されて、とても短期間で書かれていますし、ブラームスは『重い』イメージがあってそこが好き、という方も多いと思うのですが、その中でシンフォニーの第2番は『ブラームスってこんなに明るい面もあったのか』と知ることができるような作品だと思います。
また、僕にとっては、ブラームスの第1番の1番オーボエを日本で吹くのは今回が初めてです。カラヤン・アカデミー留学中にはベルリン・フィルハーモニーの室内楽ホールで若い人たちのオーケストラで吹きました。オーボエ奏者にとって、ブラームスの第1番はとても大切なレパートリーなので、日本で初めての機会をマエストロチョンとご一緒できるのが楽しみです。
1番と2番、今回のようにツィクルス (全曲演奏)でもないと同じ演奏会で演奏する機会がないです。交響曲の1番から2番、という流れを楽しんでいただけるのが魅力かなと思います」。
――全体の中で演奏する喜びをおっしゃっていますが、ソロで吹くときと異なるポイントがあるのでしょうか。
「オーケストラ全体の中で演奏するという時に、作品や作曲家によってはシビアに感じる時もあるのですが、ブラームスに関してはうまく全体に乗って中に入るという感じがある 。自分がソロで引っ張って行こうとしなくても中に入れば進んで行くという楽しさ、『みんなで行く楽しさ』というのがあると思います。
マエストロを信じてみんなが行くというのは、信頼関係がないとなかなかできないですね。ブラームスは結構ズレやすかったりもするので、そういうところをちゃんと信じてできるというのは、長年の信頼関係があるマエストロとの演奏会ならではかもしれません。
©上野隆文
ブラームスの1番と2番、奏者にとっては本当に大変な曲目だと思いますが、マエストロチョンだからこそ、楽しみにしていただきたいと思います。9月の3番、4番もまた渋いプログラムですね。3番は交響曲の中でもなかなかやる機会がないですし、一気に、しかもマエストロチョンの指揮で聴ける、というのは貴重なことだと思います。
マエストロチョンとブラームスの第1番を演奏する事が出来るのは私にとって大きな事です。すごく密度の濃い難曲ですが、どんな演奏になるのか楽しみです。2番は今のマエストロがどんな自然の世界を見せてくれるのかワクワクしています。素晴らしいものを見せてくれるに違いないと思うのでお客様もぜひ楽しみにしていて下さい」。
【特集】
・名誉音楽監督 チョン・ミョンフンが語る「ブラームス 交響曲の全て」・名誉音楽監督 チョン・ミョンフンとの「ブラームスの歩み」
・コンサートマスター 三浦章宏が語る チョン・ミョンフン指揮「ブラームス 交響曲の全て」
・コンサートマスター 近藤 薫が語る チョン・ミョンフン指揮「ブラームス 交響曲の全て」
・コンサートマスター 依田真宣が語る チョン・ミョンフン指揮「ブラームス 交響曲の全て」
・第2ヴァイオリン首席奏者 戸上眞里が語る チョン・ミョンフン指揮「ブラームス 交響曲の全て」
・第2ヴァイオリン首席奏者 藤村政芳が語る チョン・ミョンフン指揮「ブラームス 交響曲の全て」
・第2ヴァイオリン首席奏者 水鳥 路が語る チョン・ミョンフン指揮「ブラームス 交響曲の全て」
・ヴィオラ首席奏者 須田祥子が語る チョン・ミョンフン指揮「ブラームス 交響曲の全て」
・ヴィオラ首席奏者 須藤三千代が語る チョン・ミョンフン指揮「ブラームス 交響曲の全て」
・ヴィオラ首席奏者 髙平 純が語る チョン・ミョンフン指揮「ブラームス 交響曲の全て」
・チェロ首席奏者 金木博幸が語る チョン・ミョンフン指揮「ブラームス 交響曲の全て」
・チェロ首席奏者 服部 誠が語る チョン・ミョンフン指揮「ブラームス 交響曲の全て」
・チェロ首席奏者 渡邉辰紀が語る チョン・ミョンフン指揮「ブラームス 交響曲の全て」
・コントラバス首席奏者 片岡夢児が語る チョン・ミョンフン指揮「ブラームス 交響曲の全て」
・コントラバス首席奏者 黒木岩寿が語る チョン・ミョンフン指揮「ブラームス 交響曲の全て」
・フルート首席奏者 神田勇哉が語る チョン・ミョンフン指揮「ブラームス 交響曲の全て」
・フルート首席奏者 斉藤和志が語る チョン・ミョンフン指揮「ブラームス 交響曲の全て」
・クラリネット首席奏者 アレッサンドロ・ベヴェラリが語る チョン・ミョンフン指揮「ブラームス 交響曲の全て」
・クラリネット首席奏者 万行千秋が語る チョン・ミョンフン指揮「ブラームス 交響曲の全て」
・オーボエ首席奏者 佐竹正史が語る チョン・ミョンフン指揮「ブラームス 交響曲の全て」
・ファゴット奏者 井村裕美が語る チョン・ミョンフン指揮「ブラームス 交響曲の全て」
・マエストロチョン・ミョンフンとの「ブラームス 交響曲の全て」ホルン・セクションに話を聞きました。
・トランペット首席奏者 川田修一が語る チョン・ミョンフン指揮「ブラームス 交響曲の全て」
・トロンボーン首席奏者 五箇正明が語る チョン・ミョンフン指揮「ブラームス 交響曲の全て」
・ティンパニ奏者 岡部亮登が語る チョン・ミョンフン指揮「ブラームス 交響曲の全て」
・ティンパニ奏者 塩田拓郎が語る チョン・ミョンフン指揮「ブラームス 交響曲の全て」
7月定期演奏会
7月1日[木]19:00開演(18:15開場)
東京オペラシティ コンサートホール
7月2日[金]19:00開演(18:15開場)
サントリーホール
7月4日[日]15:00開演(14:15開場)
Bunkamura オーチャードホール
指揮:チョン・ミョンフン
(東京フィル 名誉音楽監督)
― ブラームス交響曲の全て ―
ブラームス/交響曲第1番ブラームス/交響曲第2番
9月定期演奏会
9月16日[木]19:00開演(18:15開場)
東京オペラシティ コンサートホール
9月17日[金]19:00開演(18:15開場)
サントリーホール
9月19日[日]15:00開演(14:15開場)
Bunkamura オーチャードホール
指揮:チョン・ミョンフン
(東京フィル 名誉音楽監督)
― ブラームス 交響曲の全て ―
ブラームス/交響曲第3番ブラームス/交響曲第4番
主催:公益財団法人 東京フィルハーモニー交響楽団
助成:文化庁文化芸術振興費補助金(舞台芸術創造活動活性化事業)| 独立行政法人日本芸術文化振興会
公益財団法人 ローム ミュージック ファンデーション(7/2,9/17公演)
公益財団法人 三菱UFJ信託芸術文化財団(7/2,9/17公演)
公益財団法人 花王 芸術・科学財団(7/2,9/17公演)
協力:Bunkamura(7/4,9/19公演)