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2021年6月30日(水)
◎高橋臣宜:2007年入団。首席奏者
◎齋藤雄介:2018年入団。首席奏者
大東周:1998年入団。
木村俊介:2018年入団。
豊田万紀:2019年入団。
※文中では交響曲を示す際には「1番」「2番」等、ホルンの担当パートは「1番ホルン」「2番ホルン」等と記載します。
チョン・ミョンフン指揮2020年2月定期『カルメン』 Ⓒ上野隆文
大東 まず、昨年2月の『カルメン』以来、コロナ禍で、予定されていたマエストロとの演奏会がいくつもできなくなりました。その中には、マーラーの交響曲第2番『復活』、同第3番、ベートーヴェンの交響曲第3番『英雄』と、ホルンにとっても重要な作品が含まれていました。
今回、いよいよ再びご一緒できるということで、本当に楽しみに思っています。マエストロとのリハーサルは基本的には緊張感があり、そういった緊張感は同時にプレッシャーにもなるのですが、それを乗り越えた時にいいものができると思います。特にブラームスは、マエストロの重心の低い感じの音作りに非常にマッチしていると思うので、とても楽しみです。
高橋 私にとってはマエストロ チョンは「音楽の父」と言ってよいほど、オーケストラプレイにおいて影響を受けた指揮者です。ベートーヴェンもブラームスももちろん他の作品も、マエストロの作る音楽は本当に素晴らしく、どれも強く記憶に残っています。
チョン・ミョンフン指揮2019年7月定期演奏会 Ⓒ上野隆文
齋藤 私は、まだマエストロチョンとの経験は浅い方になってしまうと思います。2019年の『新世界』とシベリウスのヴァイオリン協奏曲で初めて1番ホルンを担当しました。
ただ、今回は自粛期間など含めマエストロと長く共演できなかった期間を挟んでいるので、もう一度はじめから、という緊張感があります。前回『新世界』でご一緒した時も、今まで何回もやってきた曲ですがマエストロの音で作った音楽は全然違った世界を体感させていただきました。ブラームスは私自身それほど経験の多い曲ではありませんが、今回の環境で音楽作りに参加させてもらえるということが楽しみです。
木村 私は学生の時に、別府アルゲリッチ音楽祭のプログラムの一つで学生のオーケストラをマエストロが振りにきてくださったことがありました。生まれて初めて一緒に演奏させていただいた、有名な外国の指揮者ということで、そういった意味での憧れが非常に強くありました。その時の経験なのですが、当然学生たちも皆とても緊張してリハーサルしていたのですが、マエストロが「みんな緊張しているかもしれないけど、私も学生のオーケストラでもものすごく緊張しているんだよ」と学生のコンサートマスターに自分の手を握らせたところ、もう氷のように冷たい手だったそうです。学生のオーケストラでも、それだけ緊張感を持ってリハーサルされているのだなと、とても印象に残っています。
チョン・ミョンフン指揮 2019年『第九』特別演奏会 Ⓒ上野隆文
豊田 私はマエストロとご一緒させていただいたのがまだ1回だけで、その時はベートーヴェンの交響曲第9番でした。オーケストラの皆さんのとても良い意味でのピリッとした緊張感が感じられて、まずマエストロが入ってくる前にその緊張感で緊張していた記憶があります。
大東 マエストロは、応えてくれる人にはどんどん要求を高めていきます。ですから、色々言われるというのは、ある程度信頼されていることの裏返しだと思います。
――ホルン奏者にとってのブラームス演奏について。
高橋 ブラームスは指揮者によって最も演奏が変わる作曲家ではないでしょうか。他の作曲家ももちろん変わりますが、ブラームスは振り幅がとても広いですね。奏者として好きなのは、交響曲の1番でいうと、第1楽章冒頭、1番・2番ホルンによるC音(ド)とC音のオクターヴユニゾン【譜例1】です。ここでCを伸ばしているのはホルンしかいないのです。
大東 ここで一気に、景色ができますね。
【譜例1】
齋藤 交響曲1番4楽章のホルンの有名なメロディ【譜例2】は、もともと歌詞があったそうですね。ブラームスが思いを寄せていたと言われるクララ・シューマンの誕生日を祝福するメッセージにこのメロディが添えられていた。それを何年か越しにシンフォニーを書き上げた時に4楽章に引用されたということで、ブラームスの何か特別な思い、愛情が乗っているのかなと思います。奏者としては、あたたかいブラームスの思いのようなものを音色に乗せられればと思っています。
【譜例2】
――オーケストラでは、1番&2番ホルン、3番&4番ホルンといったペアで動いて和声を作っていくことが多いですね。2番・4番ホルンは和声の下の声部を受け持つことから「下吹き」と言ったりしますが、下吹きならではのこだわり、と言ったものはあるのでしょうか。
大東 下吹きの仕事については「アンテナ」が重要と感じています。ソリスティックに吹かなければならないところと、支えるところと、瞬間的に判断していますし、1番・3番ホルンといった「上吹き」の奏者が次にどんなタイミングで、どういう吹き方で来るかというのを予測する。「考えながら」というよりは自然に合わせるということが、下吹きの奏者にはより大切だと思います。
豊田 4番ホルンは最低音を受け持つことが多いので「支えを担っている」という思いは常にあります。ホルンは、金管楽器と木管楽器の間にいながら時にはホルンだけでハーモニーを作ることもありますので。一方ブラームスは、例えば交響曲1番の4楽章など、1番ホルンと2番ホルンが対等なメロディを持っているときは「下吹き」というスイッチは捨てなければいけない時もあります。
高橋 ブラームスでは他の作曲家と比べても、3番・4番ホルンが活躍する場面が多くあります。1番・2番ホルンは、どちらかというとティンパニと金管楽器の延長でハーモニーを作り、一方3番・4番ホルンは木管楽器寄りになります。セクションとして独立するというよりは、オーケストラの中の様々なパーツと溶け合って仕事をするのです。
木村 ブラームスの3番・4番ホルンは技術的なことで言うと難しい局面も本当に多いのですが、その分、やりがいという意味ではどの曲にも増してあります。本当にいい機会です。
高橋 1番ホルン奏者として大変だと感じるのは交響曲2番です。長いソロもありますし、冒頭から緊張感がありますね。冒頭、低弦の四分音符がどこからともなく聞こえてくる……そこで、「スッ」とあの有名なメロディで入っていくのです。
ブラームスではさらに、そこに「音色」が加わります。
前回、ブラームスの1番を演奏したときにマエストロがおっしゃったことで、非常に記憶に残っていることがあります。「自分がどういう音を出したいか、ではなくて、ブラームスがどういう音色でこの曲を書いたか、どういうイメージでこの曲を書いたかをまず構築しなければならない」と。私もその通りだと思います。昨年はマエストロが来日できない期間が続きましたが、久しぶりにご一緒できるということで、お客様に楽しんでいただけるよう、しっかりと臨みたいと思います。
【特集】
・名誉音楽監督 チョン・ミョンフンが語る「ブラームス 交響曲の全て」・名誉音楽監督 チョン・ミョンフンとの「ブラームスの歩み」
・コンサートマスター 三浦章宏が語る チョン・ミョンフン指揮「ブラームス 交響曲の全て」
・コンサートマスター 近藤 薫が語る チョン・ミョンフン指揮「ブラームス 交響曲の全て」
・コンサートマスター 依田真宣が語る チョン・ミョンフン指揮「ブラームス 交響曲の全て」
・第2ヴァイオリン首席奏者 戸上眞里が語る チョン・ミョンフン指揮「ブラームス 交響曲の全て」
・第2ヴァイオリン首席奏者 藤村政芳が語る チョン・ミョンフン指揮「ブラームス 交響曲の全て」
・第2ヴァイオリン首席奏者 水鳥 路が語る チョン・ミョンフン指揮「ブラームス 交響曲の全て」
・ヴィオラ首席奏者 須田祥子が語る チョン・ミョンフン指揮「ブラームス 交響曲の全て」
・ヴィオラ首席奏者 須藤三千代が語る チョン・ミョンフン指揮「ブラームス 交響曲の全て」
・ヴィオラ首席奏者 髙平 純が語る チョン・ミョンフン指揮「ブラームス 交響曲の全て」
・チェロ首席奏者 金木博幸が語る チョン・ミョンフン指揮「ブラームス 交響曲の全て」
・チェロ首席奏者 服部 誠が語る チョン・ミョンフン指揮「ブラームス 交響曲の全て」
・チェロ首席奏者 渡邉辰紀が語る チョン・ミョンフン指揮「ブラームス 交響曲の全て」
・コントラバス首席奏者 片岡夢児が語る チョン・ミョンフン指揮「ブラームス 交響曲の全て」
・コントラバス首席奏者 黒木岩寿が語る チョン・ミョンフン指揮「ブラームス 交響曲の全て」
・フルート首席奏者 神田勇哉が語る チョン・ミョンフン指揮「ブラームス 交響曲の全て」
・フルート首席奏者 斉藤和志が語る チョン・ミョンフン指揮「ブラームス 交響曲の全て」
・オーボエ首席奏者 荒川文吉が語る チョン・ミョンフン指揮「ブラームス 交響曲の全て」
・オーボエ首席奏者 佐竹正史が語る チョン・ミョンフン指揮「ブラームス 交響曲の全て」
・クラリネット首席奏者 アレッサンドロ・ベヴェラリが語る チョン・ミョンフン指揮「ブラームス 交響曲の全て」
・クラリネット首席奏者 万行千秋が語る チョン・ミョンフン指揮「ブラームス 交響曲の全て」
・ファゴット奏者 井村裕美が語る チョン・ミョンフン指揮「ブラームス 交響曲の全て」
・トランペット首席奏者 川田修一が語る チョン・ミョンフン指揮「ブラームス 交響曲の全て」
・トロンボーン首席奏者 五箇正明が語る チョン・ミョンフン指揮「ブラームス 交響曲の全て」
・トロンボーン首席奏者 中西和泉が語る チョン・ミョンフン指揮「ブラームス 交響曲の全て」
・ティンパニ奏者 岡部亮登が語る チョン・ミョンフン指揮「ブラームス 交響曲の全て」
・ティンパニ奏者 塩田拓郎が語る チョン・ミョンフン指揮「ブラームス 交響曲の全て」
7月定期演奏会
7月1日[木]19:00開演(18:15開場)
東京オペラシティ コンサートホール
7月2日[金]19:00開演(18:15開場)
サントリーホール
7月4日[日]15:00開演(14:15開場)
Bunkamura オーチャードホール
指揮:チョン・ミョンフン
(東京フィル 名誉音楽監督)
― ブラームス交響曲の全て ―
ブラームス/交響曲第1番ブラームス/交響曲第2番
9月定期演奏会
9月16日[木]19:00開演(18:15開場)
東京オペラシティ コンサートホール
9月17日[金]19:00開演(18:15開場)
サントリーホール
9月19日[日]15:00開演(14:15開場)
Bunkamura オーチャードホール
指揮:チョン・ミョンフン
(東京フィル 名誉音楽監督)
― ブラームス 交響曲の全て ―
ブラームス/交響曲第3番ブラームス/交響曲第4番
主催:公益財団法人 東京フィルハーモニー交響楽団
助成:文化庁文化芸術振興費補助金(舞台芸術創造活動活性化事業)| 独立行政法人日本芸術文化振興会
公益財団法人 ローム ミュージック ファンデーション(7/2,9/17公演)
公益財団法人 三菱UFJ信託芸術文化財団(7/2,9/17公演)
公益財団法人 花王 芸術・科学財団(7/2,9/17公演)
協力:Bunkamura(7/4,9/19公演)