ホーム > インフォメーション > ヴィオラ首席奏者 髙平 純が語る チョン・ミョンフン指揮「ブラームス 交響曲の全て」

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2021年6月30日(水)


――ブラームスの魅力とはなんでしょうか。


ヴィオラ首席奏者 髙平純 ©上野隆文

 「交響曲に限らず、ブラームスの魅力とは何かということに非常に興味があります。私の現在の回答は、ブラームスはロマンティシズムの塊のような作曲家です。
ロマンティシズムやロマンティック、ロマンという言葉を聞いたときに何を連想するかというと、例えば、『クリスマスイブを最高にロマンティックな瞬間に』というようなキャッチフレーズは、違和感を覚えます。
『ロマンティック』とは本来は、真理を探究するということで、この世の摂理、宇宙の理を追求していくというようなものだと私は考えています。したがって、『宇宙旅行は人類のロマン』という使い方はしっくりきます。本来は哲学的な意味合いを持つ『ロマンティシズム』というものに、ブラームスは満ち溢れていると思うのです。

 ブルックナーもそういうロマンティシズムに溢れた作曲家だと思いますけれど、ブルックナーの場合は人間を超越したものの存在に視点を置いて、そこを通してこの世を理解したいという気持ちに溢れている人に思えます。けれど、ブラームスは生身の人間のこころから発した『喜怒哀楽』、『強さ/弱さ』、『悩み/苦しみ』を通して、この世界を理解したいという気持ちに溢れているように思うのです。そういったロマンティシズムがブラームスの曲全般において魅力的に感じます」。

――ブラームスを演奏する上での難しさはありますか?


©上野隆文

 「ブラームスの魅力的な部分にも繋がってくるのですが、飾りというか誤魔化しのようなもの、後からつけた装飾めいたものがブラームスの楽譜には一切ないということが非常に難しいです。常に大真面目にロマンティシズムを自分自身のこととして取り組まないと、ブラームスの音楽に近づいていけません。
例えば、ブラームスの音楽の大概の曲の始まりは、『えっそれが始まりなの?』という感じで始まります。音の世界が充満してそれがふっとはじめの一音になったというような始まり方。あたかも人間が生まれ落ちたときのような始まりです。ひとりの人が生まれる前から世界は続いていて、生まれたときにこの世界に参加してしまう、その感覚に似ていると思います。そのような意味深い始まりがあって、意味深いけれど唐突にその世界に入っていって、それから発展していき最後の方にいろいろなものが見えてひとつの到達点があるという、そういう風に聞こえるように弾くのは技術的にも精神的にも難しいものがあります。

 また、意識しないとブラームスの楽曲の魅力のひとつであるふくよかさが生れません。メロディの表面的な部分だけ活かして、あとは気を抜いて弾くなんていうことはできないのです。演奏中は常に音楽とともに瞬間瞬間を生きていないと、毎回新しいものを構築し直すつもりで当たらないとブラームスの音楽は生きた音楽になりません。
 ブラームスはヴィオラに対しても意味深い書き方をしています。ヴィオラの楽譜に伴奏音型というものが1音もないのです。いわゆる伴奏のための伴奏音型がない。どちらが主でも従でもない、しかしながらお互いが支え合うという流れのなかで、 やりがいが全般的にちりばめられています」。


――マエストロチョンとのブラームスツィクルスへの期待感。


2019年『第九』リハーサル風景より ©上野隆文

 「私はマエストロチョンをとても尊敬しています。かつての巨匠時代、例えばワルターとかフルトヴェングラー、トスカニーニなどの巨匠時代の名残をいまに継承している指揮者の一人だと思うからです。過去の巨匠時代と現在とでなにが違うかというと、ひとりひとりがその音楽の世界観を持っていたということです。自分の世界観でひとつひとつの曲と相対していた、そんな風に思えます。ひとりひとりが始まりであり終わりであるという、そういう時代を知っている人の香りがマエストロの表現の中にはあります。なので、マエストロチョンは〈指揮者〉というよりかは〈芸術家〉だと私は言いたいです。

ツィクルスとして演奏するということは、一人の芸術家がブラームスの生涯を掛けた全ての交響曲を演奏するということですから、世界観の統一を見ることができるということです。ブラームスが若い頃から年を取って、それに移行して音楽も変わっていく、マエストロチョンという芸術家を通してその変遷を見ていきたいです」。

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7月定期演奏会

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7月1日[木]19:00開演(18:15開場)
東京オペラシティ コンサートホール
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7月2日[金]19:00開演(18:15開場)
サントリーホール
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7月4日[日]15:00開演(14:15開場)
Bunkamura オーチャードホール

指揮:チョン・ミョンフン
(東京フィル 名誉音楽監督)

― ブラームス交響曲の全て ―

ブラームス/交響曲第1番
ブラームス/交響曲第2番



9月定期演奏会

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9月16日[木]19:00開演(18:15開場)
東京オペラシティ コンサートホール
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9月17日[金]19:00開演(18:15開場)
サントリーホール
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9月19日[日]15:00開演(14:15開場)
Bunkamura オーチャードホール

指揮:チョン・ミョンフン
(東京フィル 名誉音楽監督)

― ブラームス 交響曲の全て ―

ブラームス/交響曲第3番
ブラームス/交響曲第4番





主催:公益財団法人 東京フィルハーモニー交響楽団
助成:文化庁文化芸術振興費補助金(舞台芸術創造活動活性化事業)| 独立行政法人日本芸術文化振興会
   公益財団法人 ローム ミュージック ファンデーション(7/2,9/17公演)
   公益財団法人 三菱UFJ信託芸術文化財団(7/2,9/17公演)
   公益財団法人 花王 芸術・科学財団(7/2,9/17公演)
協力:Bunkamura(7/4,9/19公演)

公演カレンダー

       

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