ホーム > インフォメーション > コントラバス首席奏者 片岡夢児が語る チョン・ミョンフン指揮「ブラームス 交響曲の全て」

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2021年7月3日(土)


――ブラームスを演奏する上で気をつけていること。


コントラバス首席奏者 片岡夢児 Ⓒ上野隆文

「第2番には、コントラバスにも速くて難しいパッセージがたくさんありますが、それよりも全体を通していい音色でpを弾くということが特に難しいと感じます。pのところも簡単に弾こうと思えばできるのですが、突き詰めていくと速いパッセージよりもずっとずっと難しいです。
 弦楽器全体がpの時は、決して薄くはならないで、深くて豊かな音色を出しつつ、それでいてオーケストラ全体を支えて先行していけるよう気をつけています。技術的には非常に難しいのですが、そこにやりがいを感じます。また、マエストロも絶対に妥協しない方なので、マエストロから求められる『深み』を出せるよう切磋琢磨しています。

 第2番第1楽章の冒頭は特に神経を研ぎ澄まして演奏しています。コントラバスはチェロより音の立ち上がりが遅い楽器なので、萎縮して『もわー』と出てしまうと良くないですし、かといって『カツン』と出ても、その後1時間近くを台無しにしてしまいます。「レドレ」だけですと、D-dur(ニ長調)なのかD-moll(ニ短調)なのかも分からないのですが、この後の管セクションのあたたかく綺麗なサウンドを引き出すために、そこですでにD-durのやわらかいニュアンスを出せたらと思っています」。

――第1番、第2番で好きな部分について。

「第1番冒頭、ティンパニとコントラファゴット、コントラバスは同じ音C(ド)の連続です。楽譜には『ペザンテ(重々しく)』と書いてあるのですが、停滞はしないよう意識しています。この冒頭の部分は重苦しいものが延々と続いていき、最高潮に達してまた新しいものが生まれてくる、というような物語性が感じられて好きです。これが2回目に出てくる時は、コントラファゴットとコントラバスは一緒に最初と同じ音形で刻んでいますが、ティンパニはロール(連打)に変わり、さらに1回目でfひとつだったのが2回目でffと、より音量の大きい指定になり、調性も1回目から5音上になってC(ド)ではなく属調のG(ソ)と、よりテンションの高い性格の音に変わるのですが、そこでコントラバスがしゃかりきに弾いてもダメだし、軽くなってもダメだし、非常に難しい部分です。深くて重いけれど、オーケストラ全体を引っ張っていけるような音を、黒木さん先導のもと、コントラバスセクション一丸となって出していきたいです。

 それと、第1番第4楽章の冒頭も低音で始まりますが、今回マエストロとのリハーサルでここが好きになりました。久々のマエストロとのリハーサルで、ここの頭のサウンドを作るのに、非常に長い時間をかけ、自分自身の音の出し方も、オーケストラ全体の音もガラッと変わった感覚を味わって、とても痺れました。
アウフタクト(弱拍。メロディが小節の一拍目以外から始まること)というには長すぎるのですが、1拍目が書いていないので扱いとしてはアウフタクトに近いと思います。1小節目だけど1拍目はそもそも楽譜に書いていないというのも斬新だと思います」。


――マエストロ チョン・ミョンフンとのブラームス交響曲ツィクルスへの期待感。

「ブラームスに関してよく言われていることは、ベートーヴェンをこの上なく尊敬していたということですが、それは第1番を聴いていても弾いていても伝わってきます。一つの演奏会で続けて聴くと顕著に分かると思うのですが、偉大なるベートーヴェンの尊敬が強い第1番から、第2番になると曲調がすごく柔らかくて優しく、あたたかいものになり、次第にブラームスの内面の深さを感じさせるようなオリジナリティが垣間見られるようになります。それが更にいい意味で削ぎ落とされていって、室内楽的な第3番へ、最終的には神聖な感じが漂う第4番へと行き着くのだと思います。
 特に音楽の『深さ』というのは、マエストロの真骨頂でもあると演奏していて感じます。マエストロのもとで1番から4番まで通して演奏することで、ブラームスの目指した解脱の境地にまで辿り着けそうな予感がします。やはり第1番から第4番まで通して演奏できるというのはすごく楽しみですし、今回、1、2番で既にこれだけ幸せを味わっているので、それに3、4番と来ると、もう去年のコロナ禍で大変だったことも相まって、オーケストラの皆はもちろん、お客様にも感動を味わっていただけるのではないかと期待しています」。


 ©上野隆文



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7月定期演奏会

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7月1日[木]19:00開演(18:15開場)
東京オペラシティ コンサートホール
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7月2日[金]19:00開演(18:15開場)
サントリーホール
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7月4日[日]15:00開演(14:15開場)
Bunkamura オーチャードホール

指揮:チョン・ミョンフン
(東京フィル 名誉音楽監督)

― ブラームス交響曲の全て ―

ブラームス/交響曲第1番
ブラームス/交響曲第2番



9月定期演奏会

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9月16日[木]19:00開演(18:15開場)
東京オペラシティ コンサートホール
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9月17日[金]19:00開演(18:15開場)
サントリーホール
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9月19日[日]15:00開演(14:15開場)
Bunkamura オーチャードホール

指揮:チョン・ミョンフン
(東京フィル 名誉音楽監督)

― ブラームス 交響曲の全て ―

ブラームス/交響曲第3番
ブラームス/交響曲第4番





主催:公益財団法人 東京フィルハーモニー交響楽団
助成:文化庁文化芸術振興費補助金(舞台芸術創造活動活性化事業)| 独立行政法人日本芸術文化振興会
   公益財団法人 ローム ミュージック ファンデーション(7/2,9/17公演)
   公益財団法人 三菱UFJ信託芸術文化財団(7/2,9/17公演)
   公益財団法人 花王 芸術・科学財団(7/2,9/17公演)
協力:Bunkamura(7/4,9/19公演)

公演カレンダー

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