――ブラームスの交響曲について。

　「ブラームスは交響曲1番を着想から完成までに21年もの歳月をかけたと言われています。ベートーヴェンを意識するあまり、もがき苦しんで生まれた第1楽章冒頭の劇的なフレーズは、地に足をつけ前向きに進んで行く、困難を乗り越えて行くという意味を感じられずにはいられません。東京フィル弦楽器群の重厚なうねりに巻き込まれてゆく事でしょう。そして、第2楽章の優しさに包まれてからの第3楽章の冒頭は、クラリネットが明るい陽射しを灯すかのごとく旋律を与えられます。私が一番好きな部分です。クライマックスを盛り上げるホルンの天国からの鐘の音がふりそそぐかのようなフレーズも魅力的です。

２番の交響曲には、遊び心が追加されているように感じます。思わず心躍るかのような2楽章の８分の12拍子や、3楽章の3拍目にアクセントが来る４分の三拍子など。最後は、ざわついたテンポの中にも緊張感が漂っていて、やはりブラームスは聴きどころ満載です」。

――マエストロ　チョン・ミョンフンとの共演について。

　「今回マエストロが来日されたとの知らせを受け大変嬉しく思っております。団員達はもとより、お客様方も心待ちにされていたのではないでしょうか？　それだけに、この大変な時世の中の演奏会、期待も、またマエストロご自身の心の中も何か特別なものになっているのではないかと強く感じます。ブラームス交響曲２曲というプログラムも、今だからこそ！というベストタイミングなのではないでしょうか。2009年にもブラームスの交響曲全曲演奏会をやらせて頂きましたが、あの感動がまたよみがえってきて今から楽しみでしょうがありません。

　マエストロの自前の楽譜には、それぞれのパートにエンピツで細かなニュアンスが書き込まれています。見ると嬉しい気持ちになりますが、その部分には特に思い入れがあるのだろうと、少し緊張する所ではあります。普段は目を閉じて振っていることも多いのですが、ここぞという時は鋭い眼差を感じて気分も引き締まります。マエストロのお顔はお客様からは見えにくいですが、想像出来ると思いますので楽しみに聴いてください」。

――クラリネット奏者にとってのブラームス。

　「クラリネット奏者にとってブラームスはモーツァルトと並んで特に大事な作曲家です。室内楽の三重奏曲、五重奏曲、ソナタ２曲があまりにも素晴らしい曲だからです。この曲があるからこそ、まだ歴史の浅い楽器ではありますが、他の楽器と肩を並べて居られるといっても過言ではありません。機会がありましたら是非聴いて頂きたいです」。

【特集】

7月定期演奏会

7月1日［木］19:00開演（18:15開場）
東京オペラシティ コンサートホール

7月2日［金］19:00開演（18:15開場）
サントリーホール

7月4日［日］15:00開演（14:15開場）
Bunkamura オーチャードホール

指揮：チョン・ミョンフン
（東京フィル 名誉音楽監督）

― ブラームス交響曲の全て ―

ブラームス／交響曲第1番
ブラームス／交響曲第2番

9月定期演奏会

9月16日［木］19:00開演（18:15開場）
東京オペラシティ コンサートホール

9月17日［金］19:00開演（18:15開場）
サントリーホール

9月19日［日］15:00開演（14:15開場）
Bunkamura オーチャードホール

指揮：チョン・ミョンフン
（東京フィル 名誉音楽監督）

― ブラームス 交響曲の全て ―

ブラームス／交響曲第3番
ブラームス／交響曲第4番

主催：公益財団法人 東京フィルハーモニー交響楽団
助成：文化庁文化芸術振興費補助金（舞台芸術創造活動活性化事業）| 独立行政法人日本芸術文化振興会
　　　公益財団法人 ローム ミュージック ファンデーション（7/2,9/17公演）
　　　公益財団法人 三菱UFJ信託芸術文化財団（7/2,9/17公演）
　　　公益財団法人 花王 芸術・科学財団（7/2,9/17公演）
協力：Bunkamura(7/4,9/19公演)