2020年2月のオペラ演奏会形式『カルメン』以後、急速に拡大した新型コロナウイルス感染症流行の影響で来日がかなわずにいた東京フィル名誉音楽監督、マエストロ チョン・ミョンフン。この7月定期演奏会は、マエストロと東京フィルの実に1年4か月ぶりの再会となります。

昨年2月『カルメン』公演の際、マエストロは「『カルメン』のスコアを読むと、深い情熱が込められたオペラであることが分かります。ビゼーのイマジネーションには驚嘆させられます」と語り、その言葉どおり、その深い情熱を客席に届けてくれました。 しかし……その時すでに国内でも新型コロナウイルス感染症拡大のニュースが日ごとに大きく報じられていました。公演直後の2月下旬から、日本中で数多くの演奏会が中止・延期となり、オーケストラが数か月にわたり沈黙を余儀なくされたことは、ご承知のとおりです。

その後もマエストロ チョン・ミョンフンの来日公演は予定されていましたが、感染拡大防止のための渡航制限により来日が叶わず、東京フィルは予定されていた演奏会の内容を変更または公演中止の選択を迫られ続けました。それぞれに演奏活動は再開しながらも渡航制限が続き、公演開催を断念した今年2月。マエストロは、自身が「日本の家族」と呼ぶ東京フィルとお客様に向け、メッセージを送ってくれました。

離れ離れの日々を経て遂に実現した今回の来日。演目は、オーケストラ音楽の金字塔、ドイツ・ロマン派を代表する作曲家ブラームスの交響曲です。オーケストラを愛する人ならば誰もが一度は……否、何度聴いたかわからないほど繰り返し聴くこの4つの交響曲。何度聴いても、また何度も聴くほどに、新たな感動が湧きおこり、心を深く動かす稀有な作品群。オーケストラにとっても、荘厳にして強靭、時にしなやかに時に神々しく輝き、どこまでも深い表現と揺るぎない技術を求められるこの作品群は、決してひとすじ縄ではない作品と誰もが知っています。

東京フィルは7月と9月の2か月をかけ、3つの定期演奏会場すべてで、マエストロ チョン・ミョンフンとともに「交響曲第1番、第2番」そして「第3番、第4番」を続けてお届けします。マエストロと東京フィルが最後にブラームスの交響曲を演奏したのは2009年。それから12年、オーケストラメンバーも新たな世代を迎え、次世代のサウンドを築きつつあります。短くはない共同作業の年月を経て、マエストロと東京フィルがふたたびお届けする至高のブラームス。どうぞお楽しみください。